協働ロボットは防爆仕様も、バーチャルツインでライン全体を事前検証
- 投稿日時
- 2024/08/16 18:00
- 更新日時
- 2024/08/22 12:35
ROBOT TECHNOLOGY JAPANから
Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で7月6日までの3日間開かれた産業用ロボットと自動化システムの専門展「ROBOT TECHNOLOGY JAPAN 2024」。会場の両サイドに最大ブースを構えたのはファナックと安川電機だった。
ファナックは世界初の国際規格防爆の協働ロボット「CRX-10iA/L Paint」(=写真、10?`グラム可搬、年内発売予定)やエンドミルでアルミを削り出す産業用ロボットを加工実演を交えて紹介。協働ロボットは有機溶剤系塗料を使った塗装用途を想定し、「ロボット内部を陽圧にして外気が入ってこない」と言う。防爆制御用ユニットはロボット制御装置と段積みでき省スペースとなる。
安川電機は1?d可搬のスカラロボットによる搬送工程と4台の「AMR+協働ロボット」による組立工程をAMRでつないで見せた。昨年末の国際ロボット展で見せたシステムよりコンパクトにし、「新規の大規模工場だけでなく、既存工場の1つの工程にだけでも適用できることを示したかった」と話す。AMR+協働ロボットはワークを受け取った後、自分で組み立てるのか他のロボットに引き渡すのかを自ら判断する。
新開発のアーク溶接用協働ロボット「FD-VC4L」を初披露したのはダイヘン。昨年11月に発表した「FD?VC4」の1・4倍の作業範囲をもつロングリーチで、高さのあるワークにも対応する。用意したクローラタイプの台車なら40?_の段差を乗り越えられる。ロボットなしでカメラ撮影だけで教示できる「業界初」のロボレスティーチ機能に対応し、稼働中に次工程の作業プログラムを作成できる。「産業用ロボットを導入できない、大型構造物や造船など溶接範囲が点在する現場での利用を目指す。海外における各認証も取得しており、海外市場も攻めたい」と言う。
ダイヘンのアーク溶接用協働ロボット「FD-VC4L」はロングリーチで広範囲をカバーする。
■加工機周りで搬送車
搬送系の提案も多く見られた。誕生してまだ1年半のeve autonomyはEVを用いた自動搬送サービス「eve auto」をブース内で走らせて見せた。屋外でガイドレスで走行できるのは珍しく、1週間で導入できる。時速10?`、1・5?dの積載が可能で、傾斜7度、段差±3?aに対応し、大雨でも問題ない。「バッテリーの充電に10時間を要するが、複数のバッテリーを交換して用いれば24時間稼働も可能」と言う。製造業や物流倉庫など30拠点以上で約50台が稼働している。
eve autonomyによるEVを用いた自動搬送サービス「eve auto」
ヤマザキマザックは複合加工機「INTEGREX i-200H S」と昨年10月に発表した協働ロボット「Ez LOADER 30」(30?`グラム可搬)を展示。素材やワークの情報をもつMAZATROLをロボットティーチングに利用することで9割の入力が不要に。「一言で表すと多品種少量生産に対応したロボット。独自開発の『Ez LOADER APPアプリケーション』(MAZATROLで操作する協働ロボットセル専用アプリケーション)を実装し、誰でも簡単にロボットを操作できる」とする。
モバイルロボット「iAssist」(200?`グラム積載可、20?`グラム可搬)の利用を勧める牧野フライス製作所はZOLLER Japanとコラボ展示した。加工前にZOLLER Japanによるワーク測定データを工作機械側で受けとり、加工後は機内での測定データをツールプリセッター側にフィードバックする。ZOLLER Japanは「ツールプリセッターでの工具測定は広く行われているが、その後の利用が十分に考えられていない。測定データがダイレクトに転送されるので間違いがおこらない」とした。
■低コストで画像認識
ソフトや治具を使った提案も。DXを進める豊電子工業は仏ダッソーグループと共同出展し、ロボット装置とプラットフォーム「3DEXPERIENCE」を組み合わせた。バーチャルツインで本物さながらにネジの取り外し・バリ取り・ネジ締め作業を検証する。「ロボットを動かして干渉の有無をチェックするのにとどまらず、ライン全体で品質保証に近い領域まで検証ができる」と自信を見せ、納入実績もあると言う。
シンプルで低コストの協働ロボットをもつイグスは「ローコストオートメーション(LCA)」を掲げた。同社がフリーで公開しているロボット制御ソフトウェア「iRC(イグスロボットコントロール)」に新たに加わった画像認識機能「Vision App」を披露。ピック&プレース作業の際、従来カメラで行う対象物の輪郭の識別をソフトウェア側が担う。「安価なUSBカメラでもカンタンな画像認識が行え、コスト面で自動化のハードルを下げる」と話す。
イグスは独自のロボ制御ソフトに画像認識機能を追加。パラレルリンクロボに搭載してピック&プレース作業を実演した。
MSTコーポレーションはワーククランプ治具システム「スマートグリップ」による自動交換をワークストッカー、ロボットハンドと組み合わせて提案した。スマートグリップは機械テーブルに固定した「オートヘッド」(雌側)と、あらゆる形状のワークを把持できる多種多様な「ワークホルダ」(雄側)で構成する。ヘッドとホルダの接合部はISO規格のHSKインターフェースを採用し、同規格に適合した市販のロボットハンド1種類で対応できる。「中部地区は超量産のユーザーが多いが、昨今は多品種少量にも取り組む企業も多くなり、対応する治具のニーズは高まっている。そこに本製品はマッチする」と言う。
(2024年8月10日号掲載)