品川区、止水板助成を拡充し補助額最大150万円へ
- 投稿日時
- 2026/06/10 10:00
- 更新日時
- 2026/06/10 10:06
25年9月の豪雨被害受け対策強化
昭和から平成にかけて治水対策に力を注いできた日本。全国的な浸水面積は減少傾向にある。しかし近年、気候変動による豪雨の激甚化や線状降水帯の発生頻度が高まり、短時間強雨の発生件数は40年前に比べ約1・5倍。さらに、都市化による地面の保水力低下も重なり、被害額や水害密度は増加の一途をたどっている。昨年9月にも東京・神奈川を中心に記録的な豪雨が発生。世田谷区や川崎市の広範囲で浸水被害が相次いだ。東京都品川区も同様の被害を受け、治水対策のさらなる促進に加え、止水板設置の助成制度拡充をはじめとした自助・共助を促す取り組みも急ぐ。品川区防災まちづくり部の羽鳥匡彦防災課長、星英孝災害対策担当課長、関根喜雄河川下水道課長に取り組みを聞いた。(以下、敬称略)
――昨年9月の豪雨被害を受けて、止水板助成を拡充するなど水害対策の見直しを進めています。改めて昨年の被害状況からお聞かせください。
羽鳥 品川区内では床上や床下などの浸水被害が合計1180件発生しました。区全域にわたる浸水被害としては平成11年(1999年)以来の規模で、主に立会川流域(暗渠部含む)と戸越銀座周辺で降雨量が下水道の排水能力を上回り、内水氾濫が発生しました。
――平成11年の被害を受けて、対策を重ねてきましたよね。
関根 はい。東京都と連携しながら浸水対策を進めてきました。目黒川流域では、東京都により荏原調節池が平成14年度に完成しています。貯留量は20万立方㍍で、今回も目黒川の氾濫は確認されていません。一方、被害のあった立会川流域でも現在、東京都が対策を進めています。また、戸越銀座周辺では、東京都からの受託により品川区が対策工事を実施しています。
――着実に対策を進めてきているなか、一部制度の見直しを行った背景は。
関根 インフラ整備の効果はありますが、大規模な工事が必要で時間がかかるため、その間の浸水被害を少しでも減らしたいと考えています。また、今回の豪雨の時間雨量は120㍉を超え、東京都が定める下水道や河川の整備目標を大きく上回る水準であり、対策をしている地域でも被害が起こる可能性があります。気候変動などにより、こうした想定以上の豪雨は増えていますので、住民・事業者の皆さん自身に備えていただくソフト面の取り組みを強化しています。
――見直しのポイントを教えてください。
関根 三点あります。まず対象建築物の拡大です。これまでは標高の高いエリアにある半地下の建物などは対象外としていましたが、今回から区内すべての建築物を対象にしています。次に助成率の引き上げで、個人は75→80%へ、法人は50→60%へ引き上げました。上限額も区内の法人には100→150万円に見直しています。三点目は対象製品の追加です。従来は工事が必要な脱着式止水板を対象としていましたが、今回から工事不要とされている簡易型止水板も加えました。手軽に備えたいという方のニーズに応えた形です。
――反響はいかがですか。
関根 昨年度1年間の申請件数は45件で、近年の平均と比べると10倍以上に増えました。ほとんどが昨年9月11日以降の申請です。今年度も既に例年を上回るペースで申請や相談をいただいています。ただ豪雨直後は業者の対応が立て込む時期もありましたので、梅雨や台風シーズンを前に早めにご相談いただくのが得策です。
――早め早めの行動ですね。
星 はい。まずはハザードマップで浸水想定区域を確認していただきたいです。昨年9月の被害はハザードマップが示すエリアと高い精度で一致していました。リスクがあると思われる方はぜひ止水板の設置をご検討ください。また、区では各地域で防災訓練やイベントを定期的に開催しています。4月にも止水板の実機展示や簡易土のうなどを体験できるイベントを開催しました。最新の水害対策グッズに触れたり、防災対策のトレンドを知る機会としても活用いただけると思います。ぜひ、年に一度でも足を運んでいただき、防災への意識を高め自助・共助の一歩を踏み出していただきたいと思います。

品川区ハザードマップの一部抜粋。浸水想定区域(色の濃淡)と実際の被害箇所(実線の囲み)が重なるのがわかる
(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)