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ロボットSIerが食品分野に照準

様々な産業分野をターゲットとする近藤製作所の坂本工場(愛知県蒲郡市)

ハンドがカギに?

 様々な産業分野で自動化が進んでいるが、ハードルが高いとされるのが食品分野だ。個体差のある果物や揚げ物、粘性のある惣菜などを思い浮かべてもらえれば、ロボットハンドでは掴みづらいだろうことは容易に想像がつく。ところがそんな食品分野にあえて狙いを定めるロボットSIerは少なくない。自動車や電機など特定の産業分野だけを相手にしていては不況時のリスクが高く、ライバルも多いからだ。
 約1200種のハンド&チャックをもつメーカーとして知られる近藤製作所(愛知県蒲郡市)はSIerでもある。仕事の78割は自動車部品や電機メーカー向けで、「ほとんどのケースは硬いモノを掴むことが前提」と近藤茂充社長は言う。だが流れは変わってきた。「最近は少子高齢化で人手不足ということもあって食品や物流分野など今までお付き合いをしていなかった業界のお客様との商談が増えてきた」。自動化に慣れていないユーザーに対し同社は少し時間をかけて打合せをし、トライ&エラーを繰り返すことを心がけている。その際、ハンドリングができるかできないかでシステムは大きく変わると言う。「食品や物流分野では掴むよりも吸着させるほうが効率的なことがあるので、今後は吸着ユニットをもっと充実させる」考えだ。
 ヤナギハラメカックス(静岡県榛原郡)も農業・漁業分野にはハンドがカギと捉え、ここ1年ほどは新技術をもつスタートアップ企業との協業に力を注ぐ。この分野の対象物はいくらカメラで毎回見ても個体差がある寸法を正確に把握するのは難しい。そこで同社はハンドをつくるFingerVision(東京都江東区)と協業し、特殊なハンドを用いようとしている。特殊なハンドとはこうだ。透明のシリコン製の指の表層に黒いドットが無数にあり、ハンドが何かを掴むとそのドットが圧力で変形・移動する。その動きを指に内蔵したカメラで捉えることで、力がどの方向にどれくらいかかっているのかを把握する。同社の秋原俊介営業部長は「一次産業にはプレーヤーが少なく、お客様にも自動化の知見が少ない。ユーザーさんや周辺機器メーカーさんと一緒にこの分野の自動化に取り組みたい」と言う。

4面ロボットSIerが食品分野に照準P2FingerVision.jpg

(写真=FingerVisionの視触覚ロボットハンド)

2024725日号掲載)