鶴見製紙、アイコムのAI搭載インカムアプリで小さな声も届く現場へ
- 投稿日時
- 2026/07/27 11:09
- 更新日時
- 2026/07/27 15:16
関東で使われるトイレットペーパーの約4分の1を供給する鶴見製紙(埼玉県川口市)が、製造現場の意思疎通の方法を刷新した。導入したのはアイコムのAI搭載インカムアプリ「ICOM CONNECT」。アプリとワイヤレス骨伝導ヘッドセットの組み合わせで、両手がふさがる作業中でも、機械音の絶えない現場でもハンズフリー、ストレスフリーな会話を実現する。同アプリがもたらした現場の変化を探った。
「これになってから、コミュニケーションがぐっと楽になりました」
24時間動き続ける製紙工場で、こめかみの小さな骨伝導ヘッドセットに触れながら、ベテラン従業員は穏やかに笑う。機械音の絶えない現場で、声を張り上げなくても同僚に声がはっきりと届く。100年余りの歴史を持つ鶴見製紙の現場では、こうした光景が当たり前になりつつある。

製造本部 抄造部長兼原料課長の井村信一郎氏と溶かした原料を貯蔵する熟成タワー。翌日生産分の原料がここに貯められる
1922年に静岡県富士市で創業した同社は、戦後すぐに横浜市鶴見区に場所を移し、黒ちり紙の生産を始めた。57年に設置した鳩ヶ谷工場(現本社工場、埼玉県川口市)を中核に、1日約100万ロールものトイレットペーパーを生産する。2000年には都内に近いという立地を生かし、機密書類の溶解処理(機密抹消)事業に参入。独自のサプライチェーンを強みに、首都圏の暮らしを足元から支えてきた。
ペーパーレスが叫ばれながらも増える需要に、近年、力を入れてきたのがDXの取り組みだ。日々持ち込まれる大量の古紙や機密書類を、休みなく再生紙へと生まれ変わらせるため、本社工場は24時間三交代制で稼働し続ける。そのため、以前は突発的な機器トラブルにより深夜対応が求められることもあった。
いわゆる3K職場を変えるため、10年ほど前から生産設備にPLCを取り付け稼働データを取得するなどIoT化を進めてきた。20年には稼働データから機器の状態や生産状況を可視化できるツールを開発。原紙製造に乾燥機を使う抄紙工程の遠隔監視化を実現し、作業環境の改善と安定生産を両立させた。

原料からジャンボロールを作る抄紙機。本社工場には3台設備する
「新しい技術や製品の取り込みに積極的なので、業界初の取り組みも多いんですよ」(専務取締役の里和矩行氏)
■無線アプリ導入で意思疎通をスムーズに
新たに導入したのが、アイコムのAI搭載インカムアプリ「ICOM CONNECT」だ。スマートフォンにインストールするだけで、複数人への一斉連絡も、会話の文字起こしも、合成音声による同時翻訳も1システムでこなす。昨年7月に提供が始まったばかりで、製造業や物流業での導入は同社が初だ。
「これまでの連絡手段は、電話かトランシーバーでした。電話は片手がふさがりますし、トランシーバーは本体から伸びるイヤホンケーブルがひっかかるなど、安全面で懸念がありました。ICOM CONNECTは、併せて導入したワイヤレス骨伝導ヘッドセットと組み合わせると、ハンズフリーで作業ができますし、骨伝導のため機械音の大きい現場でも声が届きます」(製造本部 抄造部長兼原料課長の井村信一郎氏)
たとえその場で聞き漏らしても、文字起こし機能により内容を後から確認することもできる。情報共有や確認の手間、伝達漏れが格段に減り、作業効率が大きく改善された。もっとも、現場が口をそろえるのは別の変化だ。
「『機械のわずかな異変』『他部署への確認』『手が空いたという合図』など、これまではわざわざ電話するほどでもないと飲み込んでいたちょっとしたことも、気軽に伝えられるようになりました。コミュニケーション量が格段に増え、現場の円滑な運営に役立っています」(井村氏)

建屋をまたぐ別部署との連絡だけでなく、沼津工場とのやり取りもしやすくなった
この変化は本社内だけに留まらない。これまで情報断絶が起こりやすかった沼津工場にもICOM CONNECTは導入されており、同じように声が届く。以前は、聞きたいことがあっても、そもそも相手のシフトがわからず、連絡を躊躇することもあった。そうした心理的な隔たりも、ICOM CONNECTで「○○さんいます?」と問えば埋められる。2つの工場の距離が、ぐっと縮まった。
現在、本社と沼津工場の2拠点で約60アカウントを運用する。まだ中堅や管理者での活用が中心だが、いずれは全従業員へ広げる考えだ。里和氏は「当社では外国籍のスタッフが数多く働いています。ICOM CONNECTには同時翻訳機能も付いています。今後は、日本語が得意ではない方との連携を深めるためにも活用していきたいです」と展望する。

本社工場では1日に約100万ロールのトイレットペーパーが生産される
(日本物流新聞2026年7月25日号掲載)