ゴイク電池、瞬時にEVバッテリーの残存価値評価
- 投稿日時
- 2024/04/11 09:37
- 更新日時
- 2024/08/19 13:17
中古市場の活性化目指す
電気自動車(EV)の更なる発展のためには、リセールバリュ(残価率)の明確化による中古市場の確立が重要だ。「EVには乗ってみたいが、売るとき二束三文だからなー」と二の足を踏む向きは多い。
EVの価値の3分の1を電池が占めるが現在、電池の残存価値を素早く正確に判定できていない。そこで電池の価値をゼロ円にして査定している場合が多く、格安での売却や、電池の劣化状況があいまいなままの中古販売が行われている。
EVバッテリーなどあらゆる蓄電池の残存価値を瞬時に診断する独自のDIR(Dynamic Internal Resistance:動的内部抵抗)法を用いた「EV診断装置」を開発したのがゴイク電池だ。田畑章CEOは「現在の充放電法では一旦、満充電にして、放電し、放電電流積分により容量を測定するが、EV一台で丸一日かかる。当社の技術は、CHAdeMOの充電口に差し込むと30秒ほどで残存価値を判断する。中古車市場が活性化すれば新車もより売れやすくなっていく」と話す。
同社のシステムは瞬間的に充電した際の電圧変動からDIRを測定し、電極の反応面積を求め容量を算出する方法を取る。開発者の高岡浩実テクニカルフェローは「『電池が電気エネルギーをどのように蓄えるのか』のメカニズムの研究は19世紀後半から飛躍的に進展し、電気化学という学問ジャンルが定着しつつある。その履歴をたどり、高度に進化した現在のデジタル計測技術を適応し、(セル ・ モジュール診断では)わずか1秒内で電池性能の全様を透けて視える如くに性能定量化を可能に導いた」と説明する。
元々は効率のいい充電方法の研究がベースにある。田畑CEOがわかりやすくビールに例えた。「ビールを一気に注ぐと泡が立って溢れてしまう。なので、ドッと注いで一瞬止めて泡が収まったら再びドッと注いでを繰り返すと溢れることなく満タンに出来る。同様に、瞬間的に充電し止めた際の『泡』に当たる変動を測定し電池の残存価値を瞬時に判定している」という。
■量産で価格を抑える
大手リサイクルメーカーとの共同開発(共同特許出願)、バッテリー関係のコンソーシアムでのEV診断の実証実験、大手自動車メーカーと廃電池によるV2Hの実証実験などを進めている。
現在は試作機を自社生産しており、価格は1000万円ほど。引き合いは多く、海外の大手電池メーカーとのコラボも決まった。
今後は、量産化、小型化、充電器との機能統合、データ分析のクラウド化を経て最終的には一台数十万円?数百万円にしたい考え。また電池の容量や大きさなどの細密なデータをベースにして診断するため、診断できる車種が限られる。対応車種の拡大も急がねばならない。
量産が叶えば、中古車販売店、ディーラー、中古車買取センター、リース会社などに納入が見込まれる。また電動バイク、電動自転車、電動キックボードなどにも応用が可能だ。
車載バッテリーは、2030年頃から大量に廃棄される見込みだ。その廃バッテリーの処置はいま以上に大きな社会課題になってくる。再利用を可能にするためにも、同社のバッテリーの性能や容量、劣化の判定に一役買いそうだ。
【写真左】高岡浩実テクニカルフェロー、【写真右】田畑章CEO
(2024年4月10日号原稿)