徹底視察で生まれた万人に優しい工具
世の中の動力工具に目を向けてみる。と、その多くが男性を意識したデザインであることに気がつく。いわゆる「カッコよさ」を重視する傾向があるわけだが、ロブテックスはそこへ一石を投じる工具を9月に発売した。女性目線の“優しさ”と道具としての使いやすさをかけ合わせた次世代エアリベッター「R2A1」だ。
やや異色の工具が生まれた背景には現場の実情がある。商品企画担当者が全国のユーザーを視察するなかで、目にしたのは女性ユーザーの割合の高さだった。「女性が最も気にされるのは重量で、トリガーを人差し指ではなく中指で操作するような、我々の想定と異なる使い方も目にしました。そうすると本体の重さを手全体に預けられて疲れにくいようです。想定と違う使い方には必ず理由がある。その隠れたニーズを突き詰めて改善すべく、女性デザイナーの協力も得て開発がスタートしました」(商品企画担当者)
重視したのは従来の開発手法に囚われないこと。動力工具の開発は『機能の足し算』で数値に表せるスペックを追い求める傾向が強いが、同社はそこから脱却し現場のニーズを元に必要な要素をイチから積み上げる道を選んだ。例えば従来のグリップは力を入れて握り込む必要があるが、R2A1は持つだけで自然と重さが手全体にかかる形状に。「力を入れず『手を添える』ようなイメージ」(商品企画担当者)で、エラストマー樹脂の二重成形グリップと相まって自分の手のように振り回しても疲れにくいという。
他にも重心をヘッドから中心寄りにしたことで下に向けても疲れづらい、角を全体的に排したことで手に食い込まない、フレームヘッドを工具なしで外せるなど使いやすさに資する要素は多い。「必要な機能とデザインの両立に苦戦した」と言うが、世界最速(自社調べ)の従来機と同等以上の締結スピードも備えている。
開発の苦労をたずねると、商品企画担当者は「とにかく大変でした」と笑った。「ですが、そのぶん良い工具に仕上がったと思います。不満足にまでは至らない潜在的な声をすくい上げて形にできた。目に見えない部分の作り込みをぜひ感じてほしいですね」
同社は今年6月、コードレスリベッターの新機種「R2B2」も発売している。リベット締結サイクルタイムは1・3秒と同社最速のエアリベッターにも遜色なく、コードレスのためホースの煩わしさがない。一日の作業量を十分カバーできるバッテリ容量を持ち、大型ワークの角を締結するなど動きながらの作業にはピッタリだ。
「ブラシレスモータの採用でパワーが向上し、シビアなタクトタイムを要求する工場にも対応できるスピードになりました」と商品企画担当者は話す。軽さを求める現場にはエアリベッターR2A1が、機動力が必要な現場にはコードレスリベッターR2B2が向く。リベッターで国内トップクラスのシェアを持つ同社。2つの新機種でリベット締結現場を支援する構えだ。
(2023年12月10日号掲載)