【レビュー】国際物流総合展2021〈1〉

アジア最大級の物流専門展示会「国際物流総合展2021」が3月9日~12日の4日間、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催されました。愛知県では初開催となった今回展では245社・団体が集結し、775ブースを出展。来場者こそ1万2549人(速報)にとどまったものの、EC需要拡大で首都圏を中心に物流施設の需要が高止まりしているだけに、関連するマテハン機器の引き合いには底堅いものがあります。ここでは、新型コロナ禍で気を吐くAGVメーカーの提案を中心に、新たな動きを探りました。

止まらぬマテハン需要、加速する無人化提案

【画像1】群知能を備えるAGILOX ONEは、外部の制御システムなしで運用できる
【画像2】停止精度の高いスタンダード・ロボットのAMR
【画像3】壁際にバックでカゴ車を搬送できるのはオカムラのORVならでは
【画像4】スタートアップの匠は昨年発売開始した新製品を披露
【画像5】少ない人数で高効率のピッキングが行える寺岡精工の自律走行式ピッキングカート

時流に乗るAGV、海外メーカーが攻勢

「ここ数年、前年比2~3割増しで右肩上がりの受注状況が続いている」「コロナ禍でより引き合いが増え、忙しくなった」「ECの拡大に伴う物流施設の伸びが大きく、感染症の影響はまったくない」。会場内を回ると、そんな景気の良い話が方々から聞こえてきます。とあるメーカーは「感染症が収束しても人々がECの便利さに気付いた以上、一度増えた宅配量は減らないだろう」と話します。どうやらマテハン機器の需要増は、一過性のものにとどまりそうはありません。

とはいえ展示内容は感染症の影響を多少とも受けたようで、自動倉庫など大型設備の展示は今回展ではほとんど見られない印象でした。しかし、その穴を埋めるかのように数を増やしたのが、国内外のメーカーによるAGV・AGF(自動走行フォークリフト)の展示ブース。なかでも、自律走行可能なAMR(autonomous mobile robot)は出展数も多く、インテリジェントな搬送ロボが来場者の大きな関心を集めていました。

日本では見慣れない黄緑色のAGFを披露したのがマイティーカーサービスです。同社が出品したのは、代理店契約を結ぶオーストリア・AGILOX社のAGF「AGILOX ONE」。特長は各AGFがそれぞれAI(群知能)を備えることで、「これによって搬送経路を自ら計画しながら自律走行でき、外部の制御システムなしで運用が可能。複数台を導入した場合でも各AGFが相互通信しながら最適な経路で動き、目的地や動作の変更も容易なため柔軟性が高い」といいます。運用開始に必要なのはWi-Fi環境と充電ステーション用の電源のみと、スピーディな立ち上げが可能な点も長所。マイティーカーサービスの吉岡和人社長は「昨年末に専門チームも立ち上げた。展示会を皮切りに本格的な販売をスタートしたい」と意気込みます。

会場では、中国に本社を置くメーカーの出展も目立ちました。Hikrobotは専用棚の下に潜り込むタイプのAGVや、リフト高さ5200mmのカートン搬送ロボ「F0-50DCH」を出展。日本での販売をはじめたのは2、3年前ですが、代理店を務めるPhoxterの担当者は「実績は順調に伸びており、引き合いの数もコロナ禍『だからこそ』逆に増えている。F0-50DCHのような背の高い機種は自動倉庫に代わるソリューション。日本ではまだ導入が少ないが海外では普及しており、日本でも今後普及していくのでは」と話します。

一方、自律走行可能なレーザーSLAM誘導方式のAMR群を披露したのが、中国・深圳に本社を置くスタンダード・ロボットです。日本での代理店を務めるテクトレの担当者が特長としてアピールするのは高い停止精度。「設計精度で±0mm、繰り返し動作でも±5mm以内に収められる」といい「停止精度の高さゆえに受け手側の装置に優しい。協働ロボットを上部に取り付けるといった用途にも向く」と話しました。

■AGV、日本メーカーの提案は?

海外勢の出展が増えたとはいえ、国内メーカーのAGV提案も決して負けてはいません。オカムラは「カゴ車に特化」したというSLAM誘導方式のAMR「ORV」を出品。カゴ車を直接クランプして掴むという特徴的な搬送方式を活かし、潜り込み式や牽引式のAGVが苦手とする、壁際ギリギリへのバック走行での荷下ろしデモを披露しました。

ORVの特長として担当者が挙げるのが、搭載された画像認識カメラです。カゴ車の位置や向きを認識することで「カゴ車位置がある程度ラフでも自動搬送できる」そう。「カゴ車を使うユーザーは多く、工場や物流センターだけでなく将来的には小売店などでの品出しにも活用いただけると考えている。未発売だが問い合わせも多く、夏ごろに正式リリースできるよう最後の詰めを行っている」(担当者)。そのほか、マスターレスで多彩な形状の商品をピッキングできるロボットピースピッキングシステム「Right Pick」にも注目が集まりました。

一方、スタートアップ企業の匠は、GRID方式(2次元コード制御)を用いた棚搬送AGV「TiTra G」と、SLAM方式の積載型AMR「TiTRA S」を披露。TiTra Gは増車が簡単で急なアイテム数の増加にも柔軟に対応でき、TiTRA Sは壁などの固定物を目印に床面ガイドなしで走行できます。いずれも昨年発売開始した新製品ですが、特に生産物流からの問い合わせが多く寄せられているそう。「打合せからアフターサービスまでワンストップで国内で完結できることが我々の強み。出展したTiTra Gは積載重量500kgだが、重量物を運びたいという声に応え1t可搬のリリースも予定している」(担当者)

と、ここまで様々なAGVに触れてきましたが、それらと少し毛色の違った機種を出品したのが寺岡精工です。同社がアピールしたのは、「4~5月の発売を目指している」という新製品「自律走行式ピッキングカート」。その名の通りSLAM方式の自律走行機能を搭載した秤付きのピッキングカートで、ピッキング指示を受信したカートが最短ルートを自動走行し、商品棚の前に移動。作業者はその場でピッキング作業を行うことができ、搭載した4つの計量器でミスピッキングも防げるといいます。

「ピッキング作業の省力化を謳う設備としては他に潜り込み式の棚搬送AGVがあるが、既存建屋の場合すでにある固定棚を取り払う必要があるため導入ハードルが高い」と寺岡精工の担当者。「その点、自律走行式ピッキングカートならレイアウトを変えずに無理なく導入できる。これまで人力のピッキングカートを使っていたユーザーにぜひおすすめしたい」と力を込めました。

寺岡精巧はほかに、ピッキングカートに8個の秤を搭載したことで最大8オーダーの同時ピッキング・重量検品を可能にした新製品「8マルチ AIピッキングカート」も出品。こちらは自律走行機能を備えていませんが、「ピッキング関連の引き合いは着実に増えている」といい、これら2つの新製品にも注目が集まりそうです。

〜【レビュー】国際物流総合展2021〈2〉につづく

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