モノづくり入門
【第4回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2024/11/12 14:01
- 更新日時
- 2024/11/13 15:40
旋盤【Part.1】
前号で「切削加工」には大きく2つ、回転する丸物(円柱形状)の被削材(ワーク)に工具を押し当てて削る方法と、固定したブロック体のワークに回転工具を切り込ませて目的の形状に切削する方法があると書きました。
今回は前者の丸物加工に使う「旋盤」について見ていきましょう。
旋盤を語る時、引き合いに出るのが古代からの「ろくろ」。陶芸では、回転するろくろ台に乗せた粘土の中心部に手を押し込み器などの内部を成形します。全周と内側を手のひらで押せば形を薄く整えられます。棒を何度かあてがえばシマ模様ができるでしょう。
旋盤も同じ原理により金属を加工します。イメージ的に、果物や大根の皮を剥く装置のような外径バイト加工が主たる役割だと思われがちですが、昨今は旋盤のなかの刃物台に多くの刃物を装着し、刃物の入れ替えによって様々な加工を効率的に行えます。
古くからの汎用(非NC)旋盤もいろんな加工が可能です。回転するワークのセンターにドリルや中ぐり工具を進入させれば穴が作れるし、チャッキングの工夫や治具の活用で角材加工、傾斜面/斜め穴加工などもできます。また既存概念を超えた旋盤使いをユーチューバー達がいろいろと試行しており、本紙運営のモノづくり総合ニュースサイト「Mono Que(モノクエで検索を!)」では黒苺さん作の異色の汎用旋盤加工など、多数の関連動画を掲載しています。今さら汎用旋盤?と思う方もいるでしょうが、最新の金属加工工場にも汎用旋盤は必ずあるもので、大量生産は不向きながら一品ものや治具づくりに欠かせません。
外・内径加工、溝加工、ねじ加工、曲面加工、面取り加工…。丸物加工全般を担う旋盤は工作機械全体の販売額の3分の1ほどを占めます。トレンドとして旋盤を使った摩擦接合、振動切削技術なども注目ポイント。また、今や主役に上りつめた回転工具を備える旋盤系複合機は、複雑な多種の加工をこなすとともに、そのマルチな能力をAIなどとつなげ進化しています。
次回は旋盤PART2。小型自動盤と大型旋盤の2つを対比的に取り上げる予定です。
旋盤はモノづくりの原点
芥川賞候補に何度か挙がった作家の小関智弘さんは、工場を転々としながら旋盤工としての腕を磨き、工場で働く人の心象風景を綴ってきた「旋盤工作家」として知られます。何度かお会いするうち、旋盤加工に「のめり込む瞬間」がいかに貴重だったかを話してくれました。「長年の旋盤工の経験から建築物でも家具でもなんでも、モノづくりの創意工夫が作り手と会話するように見えるようになりました」と言います。旋盤を原点にモノづくりの魅力を伝え続けた氏の功績に敬服です。
(日本物流新聞11月10日号掲載)