モノづくり入門
いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 第3回
- 投稿日時
- 2024/10/28 11:10
- 更新日時
- 2024/10/28 11:21
切削加工とは
3回目の今回は「切削加工」の基礎です。もっとも、ネットを引けば「切削加工」のABCなど山と出てくるでしょうから、そのあたりは駆け足で記し、少しラフな切り口で、ビジネスの現場視点も若干交え、切削加工についてお伝えしましょう。
金属などの材料を削ったり穴をあけたりする切削加工は、工作機械と、これに取り付ける切削工具が車の両輪となって実現します。もっとも、工具を把持するホルダ、熱を防ぎ切削効果を高めるクーラント液、加工をしやすくする治具、加工ワーク等の精度を測る測定機器なども欠かせません。いや、それ以前に設計情報(CAD)がまずあって、設計に沿って切削プロセスを決めるCAM、そしてCAMからのデータで機械を制御するNC装置も必要と、つまり現在は(例外はありますが)多くのハード・ソフトを揃えてはじめて、職業としての切削加工が成り立ちます。誤解を恐れずに言えば、切削加工も「設備産業化」し、加工業者のほとんどは設備計画に熱心といえます。
余談ながら数年前、大手新聞に「危機に瀕する町工場」といった記事があり、象徴的だと記者が思ったのでしょう、記事には鉄さびの浮いた手動式穴あけ機(ボール盤)の写真が添えてありました。これに対し別の町工場の経営者達が「町工場を、いまだにこんなイメージで表現するなんて腹立たしい」と口を揃えていたのが印象的で、筆者も大同感です。町工場の技術武装は進み、武装が進むだけでなく時にアカデミックな世界とも関わって進化していることが「職業としての切削加工の今の標準」でしょう。
さて、切削加工は回転するワークに刃物(バイト)を押し当てて加工する方法(旋削加工)と、ワークは固定しておき、これに回転工具を切り込ませて目的の形状にする方法(フライス・ミーリング加工)に大きく2分されます(近年は双方の機能+αを持つ機械が多いけれど)。
想像してお分かりのように、ワークが丸物(円柱形状)の場合は基本、ワーク自体を回転させる方法を取り、ブロック体のワークは工具を回転させて切削します。次号では丸物に使う加工機「旋盤」について取り上げます。
切削加工の「後発優位性」
固定電話の無かった国にいきなりスマホが普及するように、機械技術に遅れた国にも最新マシンが普及し、加工の基礎を十分知らずとも「切削加工」をこなせる時代に入っています。このことを踏まえ「後発優位性」が言われます。つまり新しい機械(等)ほど効率的で優れた切削加工ができ、かつ操作もおよそ簡単なので、後出しジャンケン的な最新機の設備によって先進者へのキャッチアップやオーバーテイキングが比較的容易ということ。その一方でノウハウ・気づき・改善管理といった人の能力も欠かせませんが。
かねてからのモノづくり先進国・日本として、切削等の加工でどう差別化するかは、ますます課題になります。
(日本物流新聞2024年10月25日号掲載)