モノづくり入門
【第39回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
加工素材を知ろう−−(1)
- 投稿日時
- 2026/05/25 14:58
- 更新日時
- 2026/05/25 15:02
モノづくりの金属素材について市場動向も見ながら2号連続で記してみます。今号は現場でSS材と呼ばれる鉄及び、鉄系材(構造用鋼)に絞って俯瞰します。
かつてドイツや日本で「鉄は国家なり」と言われたように、鉄が国の工業を下支えしてきたのは言うまでもありません。強くて加工性に優れ、国土インフラ形成の主役素材であり続けました。鉄に炭素を混ぜた炭素鋼や、防錆性に優れるステンレス材も構造用鋼として欠かせません。

こうした鉄系鋼材の活用場は、土木、建築、各種機械と幅広く、それぞれに合った熱処理などを通じ鋼種は100種を超え、各々は硬さや引張強度、成分や質量、またその許容値などで分類されています。一口に鉄といっても十人十色ならぬ「百鉄百色」です。現実を見ると「品質の安定性に欠くものもある」と指摘され、げんに日系の海外現地工場では、品質保持のために今も鉄系材料(主に付加価値の高い鋼種)を日本から輸入するケースが少なくありません。目では判別つかないけれど、鋼材の選定は大事です。
そうしたなか鋼種自体はさらに増える方向です。近年を振り返ると一例、自動車業界は「強く軽く燃費がよくなる」素材としてハイテン鋼(高張力鋼)の採用を、軽量な非鉄金属であるアルミとともに増やしています。クルマの使用鋼材量を見ると、ハイテン鋼は1980年頃から採用が進み、2000年には採用する鋼材の占有率で20%ほどに。さらに昨今は5割強を占めます(調査によって若干の違いあり)。加えて近年はハイテン鋼の特長を伸ばしたウルトラハイテン鋼、その上をいく超々ハイテン、またプレス成形しやすいハイテン材が開発されるなど進化中。車を巡っては「電気かハイブリッドか(等)」に関心が集中したものの、その影で構造用鋼の発展が将来を開いています。また金属3Dプリンターの普及によって構造用鋼パウダーが市場化し、その量産効果でネックだった超高価(固形金属の数十倍以上も!)に大幅な低下期待も。また他方では、炭素繊維複合材やエンジニアリングプラスチックが金属部品等の代替素材として名乗りを上げていることも見逃せません。実際「構造用鋼VS新素材」の様相も一部見られますが、このことは次号で触れましょう。
ハイス工具、見直し進む?
構造用鋼を加工する側では、昨年来、切削工程で「ハイス工具」の活用例が造船やエネルギー関係などで増えています。超硬工具材の高騰が背景。もともと安価で再研磨容易なハイス工具でコストを抑えて加工しようというわけです。ちなみにハイス工具は「高速度工具鋼」が正式名称。高速加工できるからその名がついたのですが、これは昔の話で、超硬工具に比べるとうんと遅いのが今の現実。ですが再評価方向なのは確か。ただ最近はハイス工具も品薄や高騰が目立っていて…。難しい時代ですね。
(日本物流新聞2026年5月25日号掲載)