進化するパワーツール

「電気」「油圧」「エアー」を駆動源とするパワーツールの新製品や売れ筋製品それぞれの特徴を取り上げる。バッテリの大容量化により、コードレスでも長時間の稼動が可能になった電動工具のほか、持ち運びと作業がしやすい軽量・コンパクトなものなど、高性能・高機能な製品が増えている。近年では「省人化」や「生産性向上」といった面でも注目を集めているようだ。

【画像1】ロブテックスのコードレスリベッター「R2B1」
【画像2】(左から)TONEのトルシア形高力ボルト用1次締め専用レンチ「コードレス建方1番」、マックスのツインタイアウォーカーモデル「RB-400T-E」、ポップリベット・ファスナーのPOPコードレスナットツール 「NB08PT-18」
【画像3】(左から)ベッセルの電ドラボール・ハイスピード「220USB-S1」、西田製作所充電式油圧工具「NC-AVA250」シリーズ、室本鉄工の「ナイル エアカッター」

大容量バッテリ搭載コードレス

電源確保不要で作業効率向上

TONEが「コードレスは当社しか持っていない」と言うのは、今年発売したトルシア形高力ボルト用1次締め専用レンチ「コードレス建方1番」だ。「シャーレンチは切るだけだが、1次締め用レンチはトルク管理が必要。そのため、トルクレンチやナットランナーなどのトルク管理機器のノウハウのある当社だから開発できた」と自信を見せる。

「これからさらに高層ビルや橋梁の建設需要が高まっていくが、高い場所では電源の確保が難しく所定の長さ以上の延長コードを使用すると電圧降下を引き起こす。電圧が低い状態で使用すると工具本来の性能が発揮できなかったり、本体に負荷がかかり、故障の原因になったりする。同時期に発売したトルシア形高力ボルト用『コードレスシヤーレンチ』とセットで使用すれば、1次締めから本締め作業までをコードレス化できる」

トルク調整ノブにより、締付けボルトサイズに合わせてトルクを設定可能。締付け条件の変化などによりトルク調整が必要な場合は、強弱を選択できる。作業途中の不意の設定ズレを防止するためのロック機構もついている。

締付け時にボルト軸を固定してナットを優先的に回転させる機構を採用しており、1次締め時のボルト軸回りを防止できる。「手作業だとボルトとナットが両方回ってしまうことがあるが、軸回りが発生すると正確な軸力が得られないなど、締付け不良の原因になる」。

コードレス建方1番(CKS500)は、トルシア形高力ボルト(S10T)橋梁予備締M22の場合、1充電あたり約1000本の締付けが可能だ。

日東工器も鉄骨建設や橋梁・造船向けにコードレス化提案を行っており、コードレスタイプの「アトラエース CLO︱2725」を推す。

36Vの強力バッテリを搭載しており、簡単に持ち運べるだけでなく、従来のAC100V機種と同等以上のパワーがあるという。「従来のコードレスタイプと比べ、穴あけ加工数は約20%増加、穴あけ加工時間は約40%短縮した」(同社)。シリーズで初めてLEDライトを採用。橋梁工事などの狭所や暗所での穴あけ作業にも対応する。

製品開発を進めていく上でこだわったのは「150㍉の全高だ」と言う。「この全高なら200㍉H形鋼のフランジ内部に設置しての穴あけも可能。縦型のアトラが入らない場所でも使用できると好評。パワーがあるため、ストレスなく作業していただける」。

作業姿勢を見直し、負担軽減

鉄筋コンクリートの建物を建てる際に必ず発生するのは、鉄筋と鉄筋の交差した部分をワイヤで固定する鉄筋の結束作業だ。「作業工具『ハッカー』を使って手でしばることも多いが、熟練した技術が必要とされ、習得までに1年、熟練までに3年ほどはかかると言われている」と、話すのは1993年に世界で初めて充電式鉄筋結束機を発売したマックスの機工品首都圏関越Gの上原伸行部長。

「鉄骨は機械でないと切れないが、鉄筋結束作業は手でできるため、発売当初は機械化する必要がないと判断される現場が多かった。しかし最近は、人手不足や熟練作業者の減少により、鉄筋結束機の需要が高まっている」

同社が昨年10月に発売したのは、立ち姿勢で歩きながら結束作業ができるツインタイアウォーカーモデル「RB︱400T︱E」だ。床面での作業は下を向いてしゃがみこんだ姿勢を長時間強いられ、腰への負担が大きい。同製品はハンドルを両手で持って立ったまま作業ができるため、腰への負担を軽減できるという。

「立ったまま、歩きながら作業できるので、ハッカーによる手結束と比較し、腰痛リスクに関わる腰部椎間板圧縮力を約40%減らせるという検証結果がある。筋肉活動量による消費エネルギーも約85%低減でき、作業の快適性の向上と省力化につながる」

これらの検証結果が評価され、同製品は厚生労働省の「高年齢労働者安全衛生対策実証等事業」に選定された。同事業は、高年齢労働者安全衛生対策に寄与する製品を選定し、高齢者の労働災害を減少させることを目的に、製品の効果を確かめ、公表している。しかし同社は、「負担軽減、作業環境改善は高齢者だけの問題ではない。若いうちから腰への負担を減らすことは腰痛リスクの軽減につながると考える。今後も鉄筋作業の効率化、作業者の負担を目指した商品開発に邁進していく」と話す。

■工場内で進むエアレス化

「世界的に工場内のエアレス化が浸透しつつある。欧州では環境への配慮からコードレスツールの普及が進んでいる。それに加え、工場の配置換えや、野外などでも柔軟に使用できる取り回しのよさが評価され、電動リベッターの需要が高まっている」と話すのはロブテックスだ。

同社が「エアーリベッター並みの超高速リベッティングができる」と自信を見せるのが、コードレスリベッター「R2B1」だ。コードレスながら、リベット締結サイクルタイム(トリガを引いてから打ち終わるまでの時間)は同社最速のエアーリベッター「R1A1」と同等の0.8秒に。コードレスリベッターの従来機種「R1B1」と比較しても、作業性が2倍に向上するという。

それだけの性能ながら、重量はR1B1から200g減の1.7kgと軽量化。リベット保持機能付きノーズピースを標準装備したことで下向きでもリベットが落ちず、片手作業が可能になった。

ポップリベット・ファスナーは4月に、POPコードレスナットツール 「NB08PT-18」を発売した。「現在、国内の工場で使用されているブラインドナット締結用工具は、空油圧式か電動式が一般的。しかし工具を使用する際、エアーホース、またはコンセントケーブルが必要なため、取り回しが悪く、コードレス化を望む声が多かった」(同社)と言う。

大容量リチウムイオンバッテリー搭載で、空油圧式と遜色のない締結速度を実現。1回の充電でスチール製M6ローレットナットを約800本締結できる容量があり、作業効率を向上できる。ストロークはタッチスクリーンで設定可能なほか、ポップナットをマンドレルに押し付け自動装着できる。1度のトリガで締結から離脱まで簡単に操作できるのも特長だ。

「特に自動車業界での採用が増加している。軽量化のための異種素材接合にポップリベットやポップナットが多く使用されている」

ターゲットを狙った提案

工場から電気工事、建築まで

業界・業種を問わず使われるパワーツールだが、反面、特定の現場・ターゲットへ「深く刺さる」工具も根強い支持を得ている。

「大手自動車部品メーカーで300本使われている」。スーパーツールの担当者がそう話すのが、「マイクロエアーグラインダー」だ。

鉛筆のように持って使用し、奥まった箇所のバリ取りや磨きなど、小さな動きを必要とする工程で活躍する工具だ。

他社との差異化要素に挙げたのは高速回転。チャッキング径2.35mm、3mmに対応する機種は最高5万7千回転に達する。「この数値は業界トップクラス。回転数が上がればそれだけ仕事量をこなせるうえ、押さえつけずとも軽い力で切削できる。懸念される耐久性についても、ストレートタイプとすることで解決した」と自信を覗かせる。

最も多い用途は金型の仕上げだが、溶接の際にビードを取る作業にも向く。「『エアーグラインダーもあるんや』と言われることもあるが、試しに使ってから気に入り、指名買いされるお客様も少なくない」。

2021年6月15日まで同社では超硬バーの同一機種を5本購入すると同じ機種を1本進呈する「プラスワンキャンペーン」を行っている。同社の超硬バーは、独自開発の刃先形状により、高速回転時にバーがワークに食い込みすぎるのを防止でき、滑らかな加工が行えるのが特長という。

日東造機の超小型アングル加工機「FM-30」は、工場内設備としてだけでなく、本体と油圧ユニットが別々のセパレートタイプで、現場にも持ち運びしやすい。「加工時に火花が出ないのも特徴。解体現場でも安全に使用できる」(同社)。

標準セットだけで、ステンレスアングル75×板厚6mmの加工ができる。Vノッチ・コーナーカット金型とベンダー金型が組み込まれているためレバーの切り換えだけで、金型の交換なしでアングルカット、アングルベンダーが可能。クランプベースを調整することにより、位置合わせが簡単に行える。操作性に優れ、作業の効率化に寄与する。

■電気工事向け提案

「電気工事や配電盤組立作業向けに開発した」というのはベッセルの電ドラボール・ハイスピード「220USB︱S1」だ。

「電気工事や大工工事では電動インパクトがねじ締め工具の主流として広く普及している。しかし電気工事や配電盤組立作業においては、力が強すぎて端子台を壊してしまうことがある。ペン型インパクトは手ごろなサイズだが、配電盤には不向きだ」(同社)。そこで、手回しのドライバーでスピーディにねじ締め作業ができる電ドラボールのハイスピードを開発した。

「大量に結線するのでスピードが欲しい」「反動が手首にくるので、反動が小さいものが欲しい」という要望を受け、「従来機種の約4倍のスピードと、指だけで支えられる反動が少ない仕様にこだわった」という。

パワーやスピードという性能に加え、軽量で腰サックに入る手軽さや周辺ツールの充実も現場で受け入れられている要因のようだ。

「電ドラボールは発売以来50万個を出荷している。木ねじの下穴開け用のドリルビット、配電盤工事のショート防止ビット、腰サックなどの収納ツールも揃えている。今後も周辺ツールを拡充し、使いやすさを追及していく」

油圧工具メーカーの西田製作所は、「電設業界はコロナ禍でも状況は悪くない。その中でも、配電盤関連は忙しいようで、充電式油圧工具の端子圧着セットの売れ行きが好調」と話す。

同社の充電式油圧工具「NC-AVA250」シリーズは、36Vブラシレスモータを搭載したマルチパワーツールだ。最大の特長は250平方㍉メートル端子の圧着を7秒台(戻し前の計測平均値)で完了できる圧着性能。このスピードは「世界最速」だという。

本体重量は4.3kgと軽量化。別売りのAC100V変換アダプタを用いれば、充電電動兼用機として連続稼働にも対応する。同社が「驚異的」と表現する圧着回数も特長のひとつで、4.0Ahバッテリの場合、14平方mm端子で1017回、250平方mm端子で229回の圧着が可能(新品バッテリ・フル充電時)。フリーパンチヘッドやアングルノッチャヘッド、アングルベンダヘッドなど、「業界最多」という各種マルチヘッド(いずれも別売り)にも対応する。

■替刃のみ交換でコストダウン

室本鉄工は「『メリー作業工具カッター』のように使えるエアカッターが欲しい」というユーザーの声を受け、「ナイル エアカッター」を開発した。従来品のエアニッパ本体「MR30A」に、5月に発売する刃付替先「F9PX」を取り付けることでカッターとして使用できる。「エアニッパをご使用いただいているお客様なら、刃付替先と専用受刃だけ購入いただければ済む」(同社)。刃側、受板側ともに作動するため、切断力があるという。

受板側は動かず、刃側のみが作動する刃付替先「F900X」(本体は「CP30」を使用)も用意。安定した位置決めが可能だ。F9PX、F900X共に先端刃開きは約15㍉メートル。

「電線やホース・チューブ類、ゴム板などを切断できる。刃が薄く抵抗が低いため、切り口がきれいに仕上がるのが特長。テープ付きのスポンジなどを切断する場合は、粘着剤が付きにくい特注刃も用意できる。三角や半丸などの抜刃も特注対応可能だ」。本体はレバースイッチなしの自動機取り付け仕様もラインナップする。

パナソニック ライフソリューションズ社は昨年11月、ドリルドライバーに装着して天井などに穴あけができる「ユニバーサルホルソー50-110」(EZ3582)を発売した。

幅φ153mmと、従来品と比較しコンパクトな設計(従来品差139mm)。天井のキワから27mmの所まで穴あけできる。「LED化に伴うダウンライトの小型化や近年のトレンドである壁や梁のキワにダウンライトを設置するような現場でも使用可能だ」(同社)。

超硬刃を標準採用。玄関の軒先や厨房などの水回り天井材として使われるケイカル板の穴あけにも対応する。「超硬チップを採用しているため刃寿命も飛躍的に向上。当社従来品比で約5倍長持ちする」。汚れやすい集塵カバー、集塵カバーキャップは取外し・水洗いが可能で、メンテナンス性にも優れる。

■1本の電源コードで複数台対応

電源コードが脱着できる。シンプルな発想ながら、複数台の本体を1本の電源コードで使える利点は多そうだ。京セラインダストリアルツールズが提案する脱着式ディスクグラインダー「RG112」(砥石径100mm)は、作業の効率化だけでなく、5Sによる現場環境の改善につなげる。

脱着式コードのディスクグラインダーは「業界初」という。握り径は同クラスで最も細い52mm。長時間作業でも手の負担を軽くする。グリップ表面には、上下左右に複数のラインを施すことで、作業時に滑りにくくした。

握り径56mmの「RG1264」(砥石径125mm/ハイパワー仕様)も製品化。作業内容に合わせて、最大出力980~1260Wまでモデルをラインナップしているのも売り。

金属の研磨・仕上げから薄物切断、ビード削り、面取り、開先加工まで、作業負荷に最適なモデルが選べる。

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