EMO Hannover 2023レポート

工作機械を中心とした世界屈指の生産技術展「EMO Hannover 2023」が9月23日までの6日間、ドイツ北部のハノーバーで開かれた。EMOは2年ごとにハノーバー~ハノーバー~伊ミラノで開催され、今回のドイツ開催は4年ぶり。45カ国・1816社の出展に130カ国から9万2千人が来場した。来場者の54%はドイツ外という国際色豊かなトレードショーだ。
(主催のVDW〈ドイツ工作機械工業会〉が9月23日発表の速報)

130カ国から9万2千人、ロボット・APC活用が随所に
会場賑わうも出展は縮小傾向

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】牧野フライス製作所の5軸立形MC「DA300」自動化パッケージ
【画像3】北京精雕科技集団が5軸MCで直彫りした30cm大の曲面ワーク
【画像4TRUMPFが積層造形した切削工具
【画像5GROB2時間で積層造形したアルミ材

出展した1816社のうちドイツ企業(621社)が最も多く、次いで中国(252社)、イタリア(197社)と続いた。日本(71社)は全体の約4%、中国の3割にとどまった。全体の54%を占める国外来場者のトップ5はトルコ、中国、オランダ、イタリア、ポーランド。アジアからの来場者は全体の3分の1を占めた。

欧州は近代工作機械産業発祥の地であり、その高度なユーザーが集積すると言われる。20万㎡近い展示スペースに最新鋭の製品・技術がゆったりした雰囲気のなか提案された。

インダストリー4.0が訴えられ始めた頃は必ずしも実質的な価値を伴わない派手なPR合戦が横行したように映ったが、より実用的なユーザーメリットが示されるようになった印象だ。ただ、ドイツは日本メーカーにとっては厳しい市場と言える。工作機械が地場産業として存在するほか、シーメンスやハイデンハインなどの自国のNCを使いたいと考えるユーザーが多いからだ。そのため使いやすさをいっそう高めたNCをアピールするメーカー(ファナック、ヤマザキマザック、オークマ、キタムラ機械など)が目についた。

自動化・工程集約

あちらこちらで目についたのはやはり自動化・工程集約だ。DMG森精機はロボットやAGV、ローダーなどを組み合わせた自動化ソリューションを21も提案した。同社専務執行役員グローバルエンジニアリング・アプリケーション担当のラルフ・リーデマン氏は欧州で自動化の需要が高い理由をこう話す。

「オペレーターがいなくても稼働するのが当たり前の時代。人を介在させないことで高品質を確保でき、オペレーターをチャレンジング・タスクに集中させてそのスキルを向上させられる。10年ほど前から中国やインドでもオートメーションの需要は高まっている」

5軸マシニングセンタ(MC)の工程集約をいっそう進めるのは牧野フライス製作所。立形「DA300」に独自パレット(小型ながら最大積載ワーク径360×300mm、60kg)を40枚収容できるAPCを付けてパッケージとして提案。松浦機械は「MAM72-42V」のAPCについて「プロジェクト単位でパレットを紐づけるようにしたことで多品種少量生産の自動運転機能を大幅に高めた」と言う。

牧野フライス製作所の5軸立形MC「DA300」自動化パッケージ。機械左のこのスペースで独自パレット40枚を収容する。




旋盤・複合加工機ではシチズンマシナリーが出品した11台(ミヤノ機5台、シンコム6台)中4台にロボットを搭載。「ドイツへ裸の機械を出荷することはまずない。何らかのカスタマイズを行っている」と言う。高松機械工業は出品5台中4台を自動化パッケージとした。

中国メーカーに対する認識を新たにしなければならないようだ。7回目のEMO出展を果たしたという、中国大手の北京精雕科技集団(Beijing Jingdiao Technology)は機械の基本性能を追求し、超精密加工を極めようとする。5軸MC「GRU300H」を使って日進工具製工具で直彫りした30cm大の曲面ワーク(M333、50HRC)が磨きレスで表面粗さ10μm以下に仕上がったと胸を張る。2021年秋のJIMTOFで兼松KGKブースに出展した同社は欧州での代理店探しが出展目的の1つのようだ。日本メーカーに比肩する高い精度をもつと水を向けると「日本にはヤスダ、マキノといった国際的に有名なブランドは数多くある。いずれも高い精度をもち、当社がそれらに勝っているとは思わない」(マーケティング部)と謙虚に答えた。

北京精雕科技集団が5軸MCで直彫りした30cm大の曲面ワーク(M333、50HRC)




積層造形

AM(Additive Manufacturing=積層造形加工)は注目技術の1つに挙がっていたが、ヤマザキマザック、松浦機械、オークマからは実機の3Dプリンターの出品はなかった。日本同様、欧州でもそれほど多くのニーズがあるわけではないようだ。

それならとDMG森精機は自らユーザーとなり、技術アピールする。同社はパウダーベッド方式1台、パウダーノズル+5軸加工式2台の計3台の造形機をもつ。前者では協働ロボットを載せた手押し台車「MATRIS Light」の部品を、後者ではドローバー(横形MC「NHX」などの主軸部品)を造形し、製品に採用し始めたという。

ドイツ勢はどうか。銅材の積層に有効なグリーンレーザーを業界で唯一扱うTRUMPFは、パウダーベッドおよびパウダーノズルの2種の3Dプリンターをもつ。予熱温度を通常の2.5倍の500度まで高め、高温を必要とするH11(スチール)などの造形をこなす。造形した切削工具を並べ、「これはデモ用のサンプルだが、ツールメーカーによって造られ実際に使われてもいる。最適なクーラント管をもたせられるので切削工具は切れ味良く長持ちする」と説明する。

TRUMPFが積層造形した切削工具




米国や中国に拠点をもつGKN ADDITIVEは、メタル・バインディング・ジェッティング方式(接着剤を含む金属を造形後に焼結させる)を利用。造形した切削工具(サンプル)はやはりクーラント管を自由に配置できるのが利点で、材質のM2 Tool Steelは熱処理後にHRC61±1の硬さになるという。

見慣れない方式の造形機もあった。5軸MCやロボットセル、AGVを揃えシステム提案を得意とするGROBは、2022年に発売した「GMP300」を出品。アルミのワイヤ材をポットに溶かして積層する。パウダーベッド方式の火災の危険、材料高、積層後のパウダーの取扱い難といった欠点をカバーし、「これくらいのサイズ(約20cm角×高さ5cm)なら2時間、高精細モードでも5時間40分で完成する。インクジェットプリンターで紙に印刷するように、量産させることを想定している」と話した。

GROBが2時間で積層造形したアルミ材





多くの新提案が見られ、あちこちの商談スペースは賑わっていた。メーカー各社がいっそう力を注いだのは、「前回2021年のEMOミラノはコロナ禍にあり、渡航制限もあって完全燃焼できなかった」(日系の大手総合機械メーカー)という背景もあるのだろう。

ただ、16万6500人が訪れたハノーバー展のピーク時(2007年)とは隔世の感がある。前回2019年と比べても来場者・出展社数はともに約2割縮小。サンドビックやワルター、セコツール、ケナメタルといった欧州の大手切削工具の姿は今回なかった。

展示会のあり方が変わってきているのではないか——。会期2日目の会見でそう問われた日本工作機械工業会の稲葉善治会長は「コロナというパンデミックもあり、前回のIMTS、今回のEMOと出展を見あわせた大手企業もある。プライベートショーでお客様にフォーカスできると判断する企業があるのも事実」としたうえで、「ただし、新規客を獲得しようと思えばやはりパブリックショーが有効。どちらがいいのかまだ答えが出ない。5年、10年かけて見ていく必要がある」としていた。

(日本物流新聞 2023年9月30日号)

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