【タイ】METALEX2023レポート
【画像1】タイトルイメージ
【画像2】YAMAZEN(THALAND)
【画像3】岡本工作機械製作所
【画像4】GROB・ヤマザキマザック
【画像5】ホーコス・牧野フライス製作所
変化の中のタイから見据える新ニーズ
METALEX2023は開催期間4日間で9万8686人が来場した。コロナ禍前の2019年開催時の10万475人には及ばなかったが、前年2022年の来場者、約8万6千人よりも増加した。
どのブースも機械の前は人で賑わったが、特にロボット実演に来場者の視線は集まった
会場はどのブースも賑わいがあり、商談スペースや機械の前で活発な商談や質問が飛び交っていた。「あくまで各社によるが、日本の展示会と比べて新製品や新技術の披露の節目というより、久々に会う各国のお客様と顔を合わせて友好に、和やかな話題をする場でもある」や「周辺各国からの来場者が多く、自社の作業着を着て団体で来られる来場者が多いのも特徴的」という通り、ラフスタイルでの来場者や、印象ではあるが男女問わず比較的若い年代の作業ユニフォーム姿の来場者も多くみられ、会場に活気を与えていた。一種の明るいイベント的な側面もあるという声もある一方、取材中に「たった今、受注が決まりました」と商談が交わされるなど重要なビジネスチャンスとして旺盛な動きも目の当たりにした。
どの日系出展企業からも聞くのは自動化や省人化提案で、他には根強いニーズとして生産性向上、といったものが多かった。日本より少子化が進むタイでは、現政府による最低賃金の引上げ、高齢化といった課題が目前に現れつつある。まだ比較的賃金の安いタイでは自動化ニーズに勢いがついていないが、ロボット提案やAGVやAMRの前には人が集まり、来場者の高い関心を引いていたのも印象的だった。
METALEX2023 ブース訪問
【YAMAZEN(THAILAND)】高付加価値提案で生産性向上を提案
現場対応型の測定機「MiSTAR555」と、ワーク搬送の協働ロボットでシステム提案
YAMAZEN(THAILAND)は、ミツトヨの現場対応型CNC三次元測定機「MiSTAR555」をワーク脱着協働ロボットとトータルで提案。MiSTAR555は、工場のオイルミストや塵埃の汚れに耐性がある屋外型。「タイにおける機上測定の浸透はこれからだが、生産ライン上で機上測定することで不良品の発生に早く気づけ、材料のムダを抑制できるメリットを訴求したい」(同社)
また、新製品のブラザー工業の横形マシニングセンタ(MC)「SPEEDIO H550Xd1」などもブースで披露。SPEEDIOシリーズ初となる横形MCのH550Xd1は、主軸配置を横向きにすることで、コンパクトな本体サイズを維持しながら広い加工空間を確保。一度に工具を30本配置できる新開発のマガジンは最長250mm、最大重量4kgまでの大型工具を搭載可能。需要が増加しているEV向け部品で求められる大型のアルミ部品や、さまざまな加工ニーズに対応できる。
「タイでは生産性の良さを重視するお客様が多い。切削スピードや加工時間の短縮につながる機械に需要がある」(ブラザー工業・Tamada Moolsarpプロダクトマーケティングオフィサー)と言う。
ブラザー工業の横形マシニングセンタ「SPEEDIO H550Xd1」
【岡本工作機械製作所】プログラム不要の機上測定で作業効率アップ
プログラムレスで直感的にワークにタッチするだけで計測を行えるタッチプローブ測定
岡本工作機械製作所は精密研削盤「PSG63SA1」にタッチプローブ測定を取り付けて出品。全体的な加工にかかる時間を短縮し、作業効率向上に繋げる。
「日本ではすでに販売しているがタイではこれから。自動車の部品金型が多いため機上測定の需要はあると見込んでいる。お客様の反応にも手応えを感じる」と中山敬太セールスマネージャー。
プログラム不要で手動でボタンとテーブルを動かすレバーを操作するだけで測定可能。
「厚みや大きさが異なる金型の測定だと、手動のほうが利点が多い」と中山セールスマネージャーは説明する。
他にも新製品として立軸ロータリー平面研削盤「VRG-DX series」を海外初お披露目。立軸のといし軸搭載により、高能率加工を実現、生産性を求めるニーズに応える。また、標準で回転テーブルフットスイッチを搭載。操作性を大幅に向上させた。ガラスやセラミックなどの脆性材加工にも向く。
高効率で高い生産性に貢献する立軸ロータリー平面研削盤「VRG-DX series」
【GROB】切粉からの熱流入防ぎ高精度ワークを
G350の説明をする松元康平シニアセールスマネージャー
ドイツの工作機械メーカー、GROBは横形5軸マシニングセンタ「G350」を出品。松元康平シニアセールスマネージャーは「タイでもドイツのメーカーや一部の中国系サプライヤー中心にEV化の流れが出てきており、弊社としてもタイの市場に積極的にアピールしているところ」と意欲的な姿勢を表した。
スリムな軸デザインと非常に広いA軸旋回範囲(230度)により、テーブルは幅広い範囲の角度に配置が可能で、ワークに工具を深く当てて切削できる。
もうひとつの大きな特長として「テーブルを180度ひっくり返し、その状態で加工可能です」とし「切粉が直接チップコンベアに落下し、切削液による洗浄や風で飛ばすといった切粉処理が不要になります。それだけでなく、切粉からの熱流入が起こらず、ワーク形状の変化や熱膨張を防ぎます」と松元シニアセールスマネージャーはメリットを説明。
今年、自動車関連の工業団地もあるラヨーンに同社はショールームをオープン、G350と「G550」を展示している。アジアでショールームを設置したのは中国に次いで2カ国目となる。
【ヤマザキマザック】CNC旋盤にロボット&独自ソフト
CNC旋盤に「Ez LOADER」を連携し自動化を提案
機械を4台出展したヤマザキマザックは、メインとしてCNC旋盤「QTE-200SG」に自動化ロボットシステムを取り付けて披露。今後予想される賃金上昇に伴って加速する自動化に向けて訴求した。
「誰でもカンタンにセットアップが可能な自社開発ソフトをシステムに組み込み、自動化への高いハードルを下げました。タイの労働コストが上がっていく中、適用できる部分はロボットなど自動化に置き換わります。今回の出展内容も来場者様からの好感触をいただいています」と岡本惇ゼネラルマネージャーは言う。
タイにおける今後のニーズとしては自動化や省人化、そして、高精度ニーズも高まりつつある。岡本ゼネラルマネージャ?は「複合加工機『INTEGREX i-250H S』は段取り作業の回数を減らすことで、人の介入を低減し、高精度加工を実現するコンセプト。引き合いも増えてきています」とし、「東南アジアを見ていく上で、中国系のEV関係のサプライヤーが進出してきているのでそこをどううまく取り込んでいくか。すでに高齢化社会となっているタイでは自動化に焦点を定めて取り込んでいきたい」と話す。
【ホーコス】独自加工技術で環境負荷軽減
独自技術の水溶性iMQLを披露した
タイにも工場をもち、日本で製造する工作機械の一部機種を生産しているホーコス。タイの日系企業の自動車部品や二輪、農機メーカーなどのユーザー仕様に合わせた機械をメインに展示した。
一番の目玉は立形マシニングセンタ「N series」で、新しい加工技術の「水溶性iMQL」(セミドライ切削)を訴求。希釈した切削剤を主軸のツール先端からミスト状に吐出しながら金属加工を行える。
「加工室の中にクーラントを流さずドライな状態で切削加工が可能。クーラントのためのポンプが不要で省エネで、クーラントの廃液処理もいらず、環境負荷が低く、脱炭素の要求に応えられる加工技術だ」と後藤壮一郎ディレクターは紹介した。
「主軸の中で切削液とエアーをミックスし、最適なバランスで吐出する独自技術で、従来の切削油だと切粉がべたつき、切りくずの残存が起こりやすかった。水溶性iMQLは切りくずがドライな状態で始末しやすく、また水が気化しながらワークを冷却する」とメリットを挙げた。
【牧野フライス製作所】放電加工機をユーザーフレンドリーに
形彫り放電加工機「EDAFシリーズ」の前では質問も積極的になされていた
トータルソリューションがテーマの牧野フライス製作所は、ドイツの旋盤メーカーINDEXとのタイアップをピーアール。「取り扱いのなかった旋盤のラインナップを補完し、受注につなげたい」と松尾光泰セールスマネージャーは狙いを語る。「実機は持ってこられなかったがVRゴーグルで仮想体感できるスペースを用意した」(INDEX クラウス・リッター日本担当営業部長)。
メインには形彫り放電加工機「EDAFシリーズ」とワイヤ放電加工機「Uシリーズ」の2機を据えた。「昨年は金型加工向けマシニングセンタを出品したが、今回は認知度向上のため放電加工機を出品した」と松尾セールスマネージャーは話す。
機械制御システムには「Hyper-i」を搭載。「マニュアルを見ずに内蔵されている動画でメンテナンス方法や操作方法を知れる」(同社)とし、ユーザーフレンドリーに配慮。また、「精度面でトラブルが起きた際、スクリーンで起きている状態を選び、数値を入力すると機械側で補正する。弊社独自の機能」(同社)というヘルプ機能「Eテックドクター」も特長だ。
(日本物流新聞 2023年12月10日号掲載)