工作機械技術トレンド~EMO Hannover 2023より~

工作機械およびその関連製品の技術トレンドを、世界屈指の工作機械見本市「EMO Hannover 2023」(9月23日までの6日間、ドイツ・ハノーバーで開催)から見てみたい。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】ファナックが構築する自動車部品工場
【画像3】写真左:独igus GmbH・写真右:ブラザー工業
【画像4】中村留精密工業
【画像5】写真左:DMG森精機・写真右:独GKN ADDITIVE

いま最もニーズが高いものといえばやはり自動化・工程集約だろう。生産性の向上が進む欧州で開かれたということもあるが、日本のメジャーな展示会でも近年は機械単体での出品は珍しくなってきた。ロボットやガントリーローダー、APC、AGVなどとセットで提案されることが多く、自社ブースに5、6台を出品するメーカーなら3、4台には何らかの自動化装置が取り付けられている印象だ。

何らかの自動化装置がついたシチズンマシナリーの自動旋盤や複合加工機

デジタル化は実用性が高まってきている。インダストリー4.0が訴えられ始めた頃は必ずしも実質的な価値を伴わない派手なPR合戦が横行したように映ったが、より実用的なユーザーメリットが示されるようになった。使いやすさをいっそう高めたNCやOSをアピールするメーカーが目につく。これにより保有設備の稼働状況を見て最適化する。最適なプログラムを呼び出し誰でも間違いなく操作できるようにする。不具合をいち早く発見し故障する前に知らせる。他の加工機と連携し一連の工程を滑らかにする、といった機能が付くようになった。

オートメーション

シチズンマシナリーが出品した自動旋盤・複合加工機は11台(ミヤノ機5台、シンコム6台)中4台にロボットを搭載。中島圭一社長は「ドイツへ裸の機械を出荷することはまずない。何らかのカスタマイズを行っている」と話す。高松機械工業は出品5台中4台を自動化パッケージとし、「最近はワークが複雑化し、複合旋盤のニーズが国内外を問わず高まっている」と言う。

5軸マシニングセンタ(MC)の工程集約をいっそう進めるのは牧野フライス製作所。立形「DA300」に独自パレット(小型ながら最大積載ワーク径360×300ミリ、60キログラム)を40枚収容できるAPCを付けてパッケージとして提案。松浦機械製作所は5軸機「MAM72-42V」のAPCについて「プロジェクト単位でパレットを紐づけるようにしたことで多品種少量生産の自動運転機能を大幅に高めた」と松浦悠人営業・技術本部管掌は言う。

ファナックは自動車部品加工を想定した工場ラインをブース内に構築して提案。小型MC2台で加工したワークをロボット、AGVでつないで3次元測定機まで搬送して見せた。一方でギガキャストの広がりを受けて大型ロボットの需要が高まっており、同社は2.3トン可搬の「世界最強ロボット」で自動車大型部品を持ち上げてアピールもしていた。

ファナックが構築する自動車部品工場。レールに乗ったロボットがワークを高速移動させる。




サステナビリティ

日本では脱炭素、節電が訴えられることが多いが、欧州ではどちらかというと、省資源で循環型社会を目指す「サステナビリティ」の考え方が強いようだ。オーエスジーは製品利用時ではなく、製品製造時のCO2排出量の少なさを訴える。初披露した盛上げタップ「GREEN TAP」(M1〜M6サイズで来年発売予定)がそれで、「今まで1本の盛上げタップを製造するのに1.1kgのCO2を排出していたが、製造方法を新開発して半減した」と言う。形状(ねじれと山の形)を従来から大きく変えたことで実現したようだ。

40カ国以上に切削工具の材料を提供するフランスのErasteel Cutting Toolsは「当社の製品は品質が高いことに加え、92%にリサイクル材を使っている。お客様に様々なアドバイスができる専門家も用意する」と強みを訴える。

工作機械周りの樹脂製品メーカーのドイツigus GmbHは、それらに加え自社開発の協働ロボット(関節部のギヤ部品)にまでリサイクル樹脂を使っていることをアピールした。驚くのはこの協働ロボットの価格の安さ。5軸制御のアーム単体で3999ユーロ(約65万円)というから目を疑う。

独igus GmbHの格安5軸アームとそれを構成するリサイクル部品




電力消費の少ない30番MCは一段と機能アップしている。ブラザー工業は星真専務執行役員が「久々の横形。スピーディオシリーズでは初」と訴える横形機「H550Xd1」と、欧州でニーズが高い本格的な同時5軸機「M300Xd1-5AX」を推す。星氏は「市況はよくないが、売り負けてはいない。手応えはある。横形の市場は現在は40番が中心だが、30番で切り込んでいく」と意気込む。

ブラザー工業の本格的な同時5軸機「M300Xd1-5AX」で加工したモーターケース(材質はAC48)




中村留精密工業が初披露した2スピンドル・2タレットの複合加工機「WY-100V」は「アイドルタイムを最小化し、加減速を速めたことでサイクルタイムを30%短縮した」と中村匠吾社長は力を込める。ミーリング能力も大幅に高め「標準回転数の(毎分)6000のほか10,000回転をオプションで用意し、小型タレットながらバリが出ない」と利点を話す。

中村留精密工業の中村匠吾社長は複合加工機「WY-100V」のサイクルタイムの短さを訴える。




3Dプリンティング

普及が課題となっているAM(Additive Manufacturing=積層造形加工)は多分野でユーザーをいかに増やせるかがカギだろう。

自らユーザーとなるのは、パウダーベッド方式1台、パウダーノズル+5軸加工式2台の計3台の造形機をもつDMG森精機。前者では協働ロボットを載せた手押し台車「MATRIS Light」の部品を、後者ではドローバー(横形MC「NHX」などの主軸部品)を造形し、製品に採用し始めたという。

DMG森精機が積層造形した協働ロボットの部品




ドイツ勢は造形物として切削工具に目をつけたようだ。銅材の積層に有効なグリーンレーザーを業界で唯一扱うTRUMPFは、パウダーベッドおよびパウダーノズルの2種の3Dプリンターをもつ。予熱温度を通常の2.5倍の500℃まで高め、高温を必要とするH11(スチール)などの造形をこなす。造形した切削工具を並べ、「これはデモ用のサンプルだが、ツールメーカーによって造られ実際に使われてもいる。最適なクーラント管をもたせられるので切削工具は切れ味良く長持ちする」と説明する。

米国や中国に拠点をもつGKN ADDITIVEは、メタル・バインディング・ジェッティング方式(接着剤を含む金属を積層後に焼結させる)を利用。造形した切削工具(サンプル)はやはりクーラント管を自由に配置できるのが利点で、材質のM2 Tool Steelは熱処理後にHRC61±1の硬さになるという。

独GKN ADDITIVEが造形した切削工具(サンプル、HRC61±1)はクーラント管を自由に配置できるのが利点

(日本物流新聞 2023年10月10日号掲載)

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