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インタビュー

サンドビック 執行役員 髙宮 真一 氏 
再生で超硬工具の安定供給を堅持

投稿日時
2026/09/28 13:27
更新日時
2026/09/28 13:31

総合提案加速へ

地政学リスクの高まりや原材料高騰に伴い、日本の製造現場では切削工具の安定調達と生産性向上が最優先課題となっている。こうした激変の時代において、切削工具大手のサンドビック・コロマントは超硬リサイクルを通じた素材の自社循環網を強みに、確実な供給体制を構築。工具単体の販売にとどまらず、デジタル技術やシームレスなサービスを融合させたトータルソリューションで存在感を高めている。足元の景況感と同社の日本市場における成長戦略について、髙宮真一コロマントカンパニープレジデントに聞いた。

――最近の市況について、グローバルおよび日本国内の状況をお聞かせください。

「グローバル全体で見ると前年比で非常に良いですね。特に当社では中国、インド、東南・南アジア、日本を含むアジアリージョンが世界を強く牽引しており、欧米と比べても成長スピードと勢いが際立っています。インドでは全産業で需要が急増しており、ヨーロッパでも内燃機関の規制緩和に伴い自動車産業が回復基調にあります。国内売上も今期は前年同期比で二桁以上の伸びを示しています。ただ、実態としては各メーカー共通の値上げ効果による面も大きく、ボリューム増と金額増の乖離はあるかもしれません。原材料高騰に伴う値上げは実施しておりますが、国内メーカーの値上げ幅も大きかったため価格差が縮まっていることは追い風となっています」

――好調な業界と、今後の成長市場はいかがでしょうか。

「国内では防衛・宇宙、エネルギー、回復軌道に乗った半導体製造装置が非常に好調ですね。その他、造船やメディカル分野も好調に推移しています。今後は航空機の自然増に加え、防衛関連も国策の後押しで急速に裾野が広がるでしょう。また、AIデータセンター需要の急増に伴うガスタービンなどエネルギー関連の引き合いも非常に強いため、当社もこれら成長産業へ組織や人員を重点配置しています」

■リサイクル体制が安定供給の肝

――長年力を入れてきた「超硬リサイクル」と「安定供給」の強みは。

「当社は自社鉱山も所有するオーストリアのグループ会社WBH社等で使用済み超硬工具を回収し、タングステンなどの有価資源へ再資源化したうえで、高品質な工具へ再製品化するクローズドループ・サプライチェーンを業界に先駆けて構築しています。昨年のリサイクル率は重量ベースで85%に達し、2030年までに100%達成を目指しています。鉱山を所有するだけでは100%の原材料確保は不可能なため、このリサイクル循環の確立こそが最も確実な安定調達の防衛策です。地政学リスクや調達難が続く中、ユーザーにとって安定供給は最優先事項。現在、他社ローカルメーカーの納期遅延やソリッドドリルの価格高騰に悩むお客様からの切り替え・代替相談が急増しています」

――現場のニーズにマッチする注力製品やソリューションを教えてください。

「特に引き合いが強いのがヘッド交換式ドリル『CoroDrill DE10』ですね。ソリッドドリルは素材調達難や価格高騰、納期不全が顕著ですが、DE10はヘッド部のクランプ剛性が非常に高く、ソリッド並みの精度と高寿命、コストダウンを実現します。交換式によりコストを抑えて安定加工できると切り替え需要が高まっています。径9~17㍉までラインナップしており、納期が不安定で価格が高騰しているソリッドドリルの代替として刺さる製品です。このほか、フライスカッター『CoroMill MS20』は、刃先が均一に摩耗する独自ジオメトリにより極限まで使い切ることができ、難削材加工にも最適なため、防衛・航空機関連でまとまった受注を得ていますね。今年に入り、鋼用へ適用範囲を拡大し、一般のユーザーにも使いやすいラインナップを整えました」

「デジタル面では、リアルタイムの振動解析でビビリを防ぐセンサ内蔵の防振工具『Silent Toolsプラス』。日本でも数台納入済みで、航空・インフラなどの深穴加工の自動化に貢献するソリューションとして評価いただいています」

――トータル提案を行うための組織戦略と、今後の展望は。

「ただ増員するのではなく、営業・技術ともに“個のレベルアップ〟に注力しています。全営業向けに製品や財務・ツーリングなどの年間研修『CDP(コンピテンス・ディベロップメント・プロジェクト)』、コロマントセンターでの技術アカデミー、自社工場での実機操作研修、欧州などへのグローバル派遣研修まで、4段階の人材育成プログラムを体系化し実施しています。工具提供のみにとどまらず、CAMやシミュレーション、検証、自動化を含めたトータル提案でお客様の投資対効果(ROI)を高める組織になることが大切です。その一環として、今年11月10・11日に名古屋のサンドビック・コロマント・センターにて『Tech Days』を日本初開催します。グループの技術・デジタル・加工ソリューションを一堂に集結させ、前後プロセスを含めた生産性向上策をご提案しますので、ぜひご期待ください」 

サンドビック_DE10.jpg

ヘッド交換式ドリル『CoroDrill DE10』は特許取得済の高剛性のクランプ機構で、ソリッドドリルにひけをとらない工具寿命と穴精度をもつ




今秋、提案強化にアクセル


11月に日本初開催となる「Tech Days」をはじめ、販売店向けオンライン配信「経営戦略インテリジェンス」の発信など、今秋は加工プロセスや市場動向、最新技術を多角的に発信する場を拡充する。リアルとオンラインの双方で「欲しい情報」をダイレクトに届ける構えだ。「優先順位が高まる安定供給と、お客様の生産性をいかに上げていく存在になれるか」――髙宮コロマントカンパニープレジデントはそう力を込め、さらなる売上拡大とニーズ深耕に一層ドライブをかける。




執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。





(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)