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インタビュー

フクハラ 社長 福原 廣 氏 
水素供給と売電両立する「スーパー水素ステーション」構想

投稿日時
2026/06/12 09:25
更新日時
2026/06/12 09:28

ロイヤリティ無料で水素普及へ弾みつける

産業用ドレントラップや空気圧機器の専門メーカーとして知られるフクハラ。同社の福原廣社長が精力的に提唱しているのが「スーパー水素ステーション」構想だ。特許を取得しながらもロイヤリティフリーという大胆な姿勢で、起業家・投資家に広く参入を呼びかけている。地球温暖化対策とエネルギー問題の解決策として、この構想はどんな可能性を秘めているのだろうか。

福原社長と愛車のFCV「MIRAI」

――水素の利活用推進をなぜ貴社が提案しているのか。

当社はもともとドレントラップ、つまり圧縮空気の配管に溜まった水を自動排出する機器を長年つくってきた会社です。空気圧の世界に深く関わってきたことで、気体・流体・エネルギーの扱いには精通しています。水素もまた「気体エネルギー」。そういう意味では、私にとってはまったく別の話ではないのです。日本のエネルギー問題を目の当たりにして、「自分たちが持っている知見で何かできないか」と考えたのがきっかけです。

──提唱されている 「スーパー水素ステーション」とは。

既存の水素ステーションは、燃料電池自動車(FCV)に水素を充塡するだけの施設です。ガソリンスタンドで言えば、給油しかしない。でも「スーパー水素ステーション」は違います。FCVへの水素供給をしながら、同じ施設内に燃料電池を置いて発電し、その電気を一般家庭や企業に売電もする。一つの施設で二つの仕事をする、いわば「二刀流」の新しいビジネスモデルです。

――なぜ「売電」が必要なのか。

現実問題として、今の水素ステーションは採算が取れていません。FCVの普及台数がまだ少ないですから、水素を売るだけでは収益が追いつかない。「FCVが増えれば水素ステーションが増える、でも水素ステーションが少ないからFCVが増えない」というニワトリが先か、卵が先かの悪循環に陥っています。これを打ち破るには、水素ステーションが水素充塡以外にも稼げる仕組みが必要です。売電がその答えです。

―― 実際にどれくらいの電力を発電・売電できるのか。

私も普段運転しているトヨタのFCVMIRAI」に搭載されている燃料電池システムをパッケージ化した製品があります。この定格出力80kWのユニットを20台設置すれば、合計1500kWの発電が可能で、これは約500世帯分の電力に相当します。一つのスーパー水素ステーションが、地域の電力インフラとしても機能すれば、採算が取りやすくなります。

――どんな場所に設置するのか。

既存のガソリンスタンドや水素ステーションの跡地、あるいは郊外の土地などが候補になります。重要なのは、単なる「充塡所」ではなく、地域のエネルギー拠点として機能させることです。災害時のバックアップ電源としての役割も担えますから、自治体との連携もしやすい。地域のエネルギー自給率を高めることにも貢献できます。

もし再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」を使えば、製造から発電まで完全にCO2ゼロの電力を地域に供給できる。これは地球温暖化対策として非常に大きな意味があります。スーパー水素ステーションが全国に5000か所できれば、日本のエネルギー構造そのものが変わります。

――欧米に比べ日本の水素価格はかなり割高だが。

おっしゃる通り、これが今一番のネックです。現在の日本の水素価格は1キロ㌘あたり約2000円前後です。これでは発電コストが高すぎて売電しても採算が合いません。一方、欧州では300~400円と日本の5分の1以下です。日本でも水素価格が大幅に下がれば、スーパー水素ステーションのビジネスモデルは一気に成立します。

■水素価格引き下げに向けて

――具体的に水素価格はどれくらいになれば普及に近づくのか。

理想は現在の20分の1、つまり100円台です。技術的に不可能な話ではありません。水素の大量製造・大量流通が実現すれば、コストは自然と下がります。ただ、最初の一歩を踏み出すには政府の後押しが不可欠です。発電した電気を採算が合う価格で売電できるよう、法整備と価格補償をセットで進めてほしいと訴えています。

政府計画では2030年に900カ所の水素ステーション整備を目標にしていますが、正直言って少なすぎます。スーパー水素ステーションとして展開すれば、民間資本だけで5000か所以上は十分に狙えます。

――「スーパー水素ステーション」構想は特許を取得されているが、なぜロイヤリティ無料にしたのか。

普通は特許でライセンス料を取りますよね。でも私の目的はお金儲けではなく、この構想を一刻も早く社会に広めることです。日本全体、いや世界全体のエネルギー問題・環境問題を解決するために、一社でも多くの起業家に参入してほしい。だからロイヤリティは無料にしました。

――どのような企業にスーパー水素ステーション事業に参入してほしいか。

不動産、インフラ、商社、地方の事業者など、幅広い方々に関心を持ってもらいたいです。地方の過疎地域でも、エネルギー自給の手段として活用できます。また、脱炭素経営を掲げる大企業が自社の電力調達先として運営に関わるケースも考えられます。ビジネスの形はいくつもある。固定観念を捨てて考えてほしいですね。

――水素の普及によってどのような未来があるとお考えですか。

まず電力が地産地消になります。大規模な発電所から長距離送電するのではなく、各地域のスーパー水素ステーションが地域の電力を賄う分散型エネルギー社会です。次にFCVが当たり前に普及して、街中から排気ガスが消える。そして日本がエネルギーを海外に依存しなくて済むようになる。脱炭素の問題も大幅に改善する。一石三鳥、四鳥の話です。大げさに聞こえるかもしれませんが、そのポテンシャルが水素にはあると信じています。

――今後の展望は。

まずは、なるべく早期にスーパー水素ステーションのモデル店を10カ所程度立ち上げて頂きたいですね。運営はすでにノウハウを持っている現在の水素ステーション会社が妥当かと思います。その運営会社が利益を上げて、一般投資家等から資金を集めてスーパー水素ステーションのさらなる増設を図る。弊社も一般投資家として1億円程度を投資します。

スーパー水素ステーションの増設が進めば、水素の消費量が多くなり価格が下がります。さらに水素の価格を大幅に下げる案件を考案中です。ご期待ください。



(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)