インタビュー
ダイヘン 執行役員 西村 大氏
WAAMや異材接合分野を強化
- 投稿日時
- 2026/06/10 14:03
- 更新日時
- 2026/06/10 14:06
変化の潮流にある市場環境で堅調に推移しているダイヘン。2025年度は国内外で設備投資の二極化が進んだものの、成長分野を確実に捉えて増収増益を確保した。今春に新しく事業部長に就任した西村大氏に、足元の市況感と新領域への挑戦、2026年度の事業戦略について聞いた。

ダイヘン 執行役員 溶接・接合事業部長 西村 大 氏
厚板・自動化需要捉え25年度は増収増益に
――2025年度の市況を振り返り、業界の動向をどう見ていますか。
「25年度は地域や業種によって明暗が分かれる厳しい環境でした。国内の鉄鋼需要の低迷や米国関税リスク、欧州経済の停滞などの影響があった一方で、好調だったのは、国内の造船業界と中国の炭鉱機械設備向けです。特に中国では厚板分野の大口受注が業績を大きく下支えし、溶接事業として増収増益を達成することができました」
――好調な造船や、課題を抱える他の産業へのアプローチは。
「造船業界の堅調な設備投資は26年度も続くと見ています。深刻化する人手不足という課題に対しては、協働ロボットをはじめとした自動化提案で応えていきます。一方で、鉄骨・橋梁業界は労働力不足と賃金上昇のあおりを受け、設備投資は先延ばしする傾向ですが現在打ち出している『モノづくり応援キャンペーン2026』でお客様の投資を後押ししたい。自動車業界もEVシフトが一服し、メーカー各社がプロジェクトの入れ替えや見直しを進めており、量産化に向けた投資はもう少し先だと見ています。ただ、新たなプロジェクトに参入する好機でもありますので、常にアンテナを高くして案件を発掘していきます」
■次世代接合・金属3D積層造形への布石
――25年度の売上をけん引した製品は。
「一昨年と今年の年初に上市した『Welbee The Short Arc(ウェルビー ザ・ショートアーク)』(溶接電流350A/500A)シリーズです。当社のハイエンドモデル『Welbee』の高度な機能を備えつつ、コストを最適化した戦略機種ですが、想定以上のヒットが続いています。一時は在庫が逼迫するほどで、特に500A機は産業機械関連のメーカーに多く出ました。造船分野でも現在導入が進んでおり、さらなる上積みを期待しています」
――自動車のEV化や軽量化に対して、どのような技術提案を。
「変化する自動車の溶接工程に向け、従来の延長線上ではない『新しい接合技術』で勝負します。異材接合技術「CSJ(Cold Spot Joining:固相抵抗スポット接合)」では、ボディ軽量化のための鉄・アルミ異材接合のニーズに対応し、今年度中の製品化を予定しています。さらに接合の枠を超えた新領域として『WAAM(ワイヤーアーク積層造形)』にも注力します(※QR先に関連記事)。アーク溶接技術を応用した金属3D積層造形ですが、造形スピードが速く大型構造物の短納期・低コストの製造に適しています。材料としては今後、アルミや銅といった新材料への適応も進めており、製造業のモノづくりを大きく変えるポテンシャルを秘めています」
――海外市場の戦略と、製造体制の強化についてお聞かせください。
「26年度の海外市況は徐々に回復に向かうと予想しています。欧州では代理店網を拡充、米国では活況な市場の中で自動化ニーズを取り込みます。高成長が続くインド市場は、価格勝負ではなく、『シンクロフィード』など当社の強みであるロボット溶接システムによる高品質・高効率を求める高級機市場をターゲットに攻め込んでいきます」
「これらグローバル展開を支えるため、マザー工場である中国やタイの拠点では最適生産を推進中です。すでに各工程の自動化は完了し、現在は工程間を結ぶ『完全自動化工場』へのステップアップを図っています」
――最後に、新事業部長としての抱負を。
「これまでFAロボットから溶接・接合、海外拠点と現場の最前線を歩んできました。先人が築いた盤石な基盤を引き継ぎつつ、現場のご要望に即応できる仕組みをさらに強化していく。最終的な目標はグローバル市場でトップシェアを狙える企業へと成長させること。培ってきた幅広い経験を活かしながら次世代技術も取り入れ、持続可能な未来社会に貢献する技術革新をグローバルに牽引していきます」

需要が高まる厚板向けの溶接電流500A「Welbee The Short Arc500」が売上を牽引
(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)