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インタビュー

大東精機 代表取締役社長 杉本 直也 氏 
自動化強化へ、造船・製罐もターゲット

投稿日時
2026/05/14 09:25
更新日時
2026/05/14 09:32

新たなビジョンは「製造業を、あそび場に。」
『Full FA』で製造現場を創造現場に変える

「骨太な会社にしたい」4月に就任した大東精機の杉本直也社長はそう力を込める。重視するのは企業としての"総合力"だ。働きやすい環境を整え、製品の発想やデザインに遊び心を加え、仕事をクリエイティブに楽しむ。そのうえで自動化の提案をより強化し、鉄骨一次加工のみならず造船や製罐などあらゆる現場のFull FA(全自動化)を目指す。作業を機械に置き換えることで、製品を導入した現場が「創造的に働けるようになれば」との思いからだ。国内の鉄骨需要が落ち込む中、海外市場の深耕にも力を注ぐ。海外展開において重要なサービス力の向上まで、多角的な方針を聞いた。

すぎもと・なおや りそな銀行で融資・法人営業を担当後、大東精機に入社。財務・人事業務を担当する中で、会社や製造業全体の魅力を高める活動に力を注いできた。趣味は体を動かすこと

――最初に貴社を訪れたのは3年前、福利厚生の一環で整備された社内ジム「DAITO GYM-CLUB」の取材でした。以降もオフィス改装に新ビジョン発表と大胆な変化が続きます。一貫して自社や製造業の魅力を高めようとされていますね。

「それはありますね。私が人事・財務からキャリアを始めたことも大きい。元々は銀行に勤めていて、大東精機に入社して初めての仕事が社内ジムでした。入社早々、前社長から『ジムを作れ』と(笑)」

「当時は社内が大胆に変わっていく手前で、『そこまでする?』という戸惑いもあったはずです。ただ、結果的に良いきっかけでした。『ここまでしていいんだ』と社内の認識が変わった。その後も人事として働く中で採用・定着の難しさを痛感しました。採用は総合力です。“採用力”だけ磨いても中身が伴わねば人材は去ってしまう。ならば総合力をどう上げるか。そのテーマに至るのに時間はかかりませんでした」

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福利厚生の一環で設置した本格的な社内ジム「DAITO GYM-CLUB」。平日はもちろん休日や従業員の家族・友達も無料で利用できる

――「製造業を、あそび場に。」という企業ビジョンを制定されました。

「社内の横断プロジェクトを発足させ、自社の歴史と理想を12人で60時間かけて真剣に話し合った末、生まれた言葉です。国の根幹を支える製造業を、発展させなければならない。そこでお客様の工場の完全自動化を指す『Full FA』を合言葉に掲げています」

「バンドソーやドリルマシンを組み合わせた鉄骨一次加工の全自動化ライン『DASP』の開発は2004年。振り返れば大東精機は一貫して自動化で発展してきた会社です。今後はその領域をより広げます。全自動梁溶接システムも一例ですが、工場にはまだ自動化できる箇所が山ほどある。規模の大小を問わずそれを拾い上げ、危険で単調な仕事は機械に任せ、生まれた余裕で創造的に『こんなことしてみよう』と思ってほしい。機械を弄りながら『これもできるんちゃうか』と閃くような、単に生産性を高めるだけでなく創造性を触発するソリューションを提供し続けたい。それが我々のミッション『製造現場を、創造現場に変えていく。』の体現です」

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■造船の自動化にも商機

――自動化を強化されるとのことですが、鉄骨加工以外の領域にも踏み込みますか。

「はい。製造業というフィールドの中でできることをやりたい。もちろん鉄骨一次加工が中心ですが、そこから先の“枝葉”はどこに伸びても良い。例えば製罐や造船。造船は高市政権が掲げる戦略分野の1つでもあります。昨年投入したコーピングマシン『Obi(オビィ)500』は、我々の従来のターゲットより小型のワークを素早く綺麗に加工できるのがウリ。既に造船分野で納入が決まっています。造船のような労働集約度合いが比較的高い産業の自動化は、まさに我々が成し遂げたいこと。ワクワクしますよね。現場も燃えていますよ」

「一方で鉄骨加工も重要です。足元ではデータセンターが著しく成長しています。大量の鉄骨が使われるわけで、こうした成長分野の需要は確実に取り込みたい。(造船・建築ともに)自動化前提の工程に置きなおす必要があります。急がねばなりません。人口減少のペースを鑑みれば、現場任せは早晩限界を迎えます」

――直近の国内鉄骨需要は軟調です。昨年は350万トンを割り込みました。このような中で海外市場への姿勢は。

「海外売上は円安の影響から直近で2~3割に増えましたが、さらなる強化は明確な方針です。現地子会社を持つアメリカに加え、韓国・台湾で着実にシェアを築いています。欧州にもつい先日ドリルコーピングマシンを納入しました。好調なのはオーストラリアで、好況で建築需要が活発に推移しています。資源国のため景気が後退しても底堅いのも魅力です。海外は欧州メーカーと競合しますが、国際競争に身を投じてこそ切磋琢磨されます」

――競争により新たな製品が生まれるかもしれない。

「開発は最終完成品メーカーとしてのキモです。その姿勢を忘れて商社的になるのは良くない。『メーカーであれ』と常々思っています。開発と同じくらい重要なのがメンテナンスで、とりわけ海外でのメンテナンスを強化するために『DAITO ACADEMY』を立ち上げました。当社は営業がサービスマンを兼ねます。昨今はロボットを使う設備も増え、ソフト的な知識も必要になりました。人材育成が現場任せでは、メーカーの保守責任を果たしたことになりません。アカデミーで新入社員を機動的・体系的にトレーニングし、どこに出しても誇れる人材を育てます」

■骨太な会社に

――社内の変革が続きますね。

「前社長の説いた『変革し続ける』精神と、前々社長の唱えた『一業専心』(1つの事業に心を尽くす)という理念。一見、真逆に思えるこの二つが融合し、『大事なものは守り、変えるべきは大胆に変える』のが大東精機の文化です。企業ビジョンの根底にもこの考えがあります」

――変えるといえば、Obi500は丸みを帯びたデザイン。ネーミングも「オビィ」と人名のようです。今後、他の機種にもこうした遊び心を加える考えは。

「今後新たな製品を世に出す時には、ネーミングやデザインを大胆に変えたい。部品のピッキングと組立溶接を自動で行うシステムも開発中ですが、名前は『Eva(エヴァ)1300』です。宇宙船の船外活動(EVA)と見た目が似ていることから名付けました。デザインもコーポレートカラーの青を前面に出しつつ、アソートカラーにオレンジを入れたり遊び心を加えています。これから既存機もデザインを一新します。製造現場の創造性を高めるためにも、まず我々自身がクリエイティブにならないと」

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丸みを帯びたデザインのコーピングマシン「Obi500」。企業ロゴも刷新されている。プラズマトーチ搭載の6 軸ロボットで小型の鋼材を3次元加工できる

――社長として、達成したい目標はありますか。

「実は、派手な数字の目標は掲げていないんです。ベンチマークにしている数字はありますが、圧倒的な売上を求めるとか、そうした方向性を目指してはいません。それより『製造業を、あそび場に。』『製造現場を、創造現場に変えていく。』というビジョンやミッションをうまく解釈し、会社を良い方向に進めたい。『総合力』という話を冒頭にしましたが、すでに色んな意味で良い会社になりつつある。変化を加速させ、骨太な会社にしていきたいと思います」

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取材を行ったのは2月に完成した「DAITO CAFE」。酒類も置いており、社員は定時以降に利用できる。社員同士が集まり、気兼ねない話を交わす場として機能する