インタビュー
シチズンマシナリー 社長 伊奈 秀雄 氏
半導体・DC好調でグローバルシェア急伸
- 投稿日時
- 2026/09/10 09:00
- 更新日時
- 2026/09/10 15:41
高精度と自動化需要に応える自動旋盤
半導体やAI、データセンター関連の設備投資を背景に工作機械需要が高まる中。確かな技術と信頼性で市場シェアを急拡大させているシチズンマシナリー。同社の伊奈秀雄社長に、現在の業況と生産体制、需要業種の先行きや今後の製品開発の方向性を聞いた。

――足元の受注環境をどう見ている。
「想定を超える受注をいただいています。シチズン時計の第1四半期決算でも見通しを上方修正しましたが、工作機械事業についても、当初の販売計画を上回る見通しを出しています。特に海外が好調ですが6~7月ごろからは国内にも若干プラスの動きが出てきました。日工会の受注統計とほぼ同じか、若干上回るペースで推移しています」
――需要の「質」に変化は。
「大きく変わったのは、従来の自動車や一般機械に加えて、半導体が明確に出てきたことです。特に中国では、以前のスマートフォン関連の設備投資でも見られたように、実需を上回るのではないかと心配するほど、大量の設備投資が行われるケースがあります。発注単位も国内とは大きく異なり、数百台というケースがあります。業種の構成は以前とは変わってきています」
――好調を支える貴社の強みは。
「ひとつは、主軸台移動形の自動旋盤が、自動化しやすいという点で見直されていることです。材料も自動供給されるので、人手をかけず、1台の機械の中で部品を完成品まで仕上げられる。もう一つは、小さくて高精度な部品への需要です。単に形ができればいいという部品なら、地場の工作機械メーカーでも対応できるでしょう。しかし、高精度や信頼性が求められる領域では、まだ我々の機械が選ばれる余地があります」
――自動化への需要は中国でも高まっている。
「中国でも人手不足で、人がなかなか入ってこない、入っても他へ移ってしまうという話を聞きます。日本や欧米ほどではないにしても、自動化需要は確実にあります。特に自動化したラインは、途中で機械が止まると困ります。切りくず処理などによる突発停止をいかに防ぐかが重要で、当社のLFV(低周波振動切削)技術は、切りくずを機械内で絡みにくくすることで、長時間運転に有利な技術で、中国でも好評です」
――データセンター関連ではどのような需要が。
「冷却用ポンプの継手などでは、一般的な真鍮ではなく、特殊なステンレス系など、加工しにくい材料が使われるケースがあります。水による腐食を避けるだけでなく、厳しい環境条件が要求されるためです。そうした材料は切りくずがつながって出てきやすく、通常の加工では難しい場合があります。LFV技術によって切りくずが絡みにくくなることが、こうした分野でも評価されています」
■持続するDC向け需要
――需要増に対して生産能力は。
「2025年までの間に工場面積の拡張など、さまざまな投資を進めてきました。その結果、現在は中期経営計画で掲げている売上1000億円という目標金額を達成できる程度の生産能力は維持できています。ただ、旺盛な需要にすべて応えられるところまで余裕があるというわけではありません。お客様のためにもこれまでの設備投資を活かしつつ、特に需要が高い半導体関連向け機械の増産など、重要な対応が必要だと考えています」
――半導体関連の需要は、いつまで続くと見ているか。
「半導体関連の設備投資に限定すれば、あと2年程度ではないかと見ています。半導体の生産そのものは伸びていくでしょうが、我々は生産設備を供給する立場です。同じ業種に設備がどんどん入っていけば、どこかで頭打ちになるのが一般的です。ただ、その一方で、半導体に代わる新しい精密部品はまだまだ出てくるでしょう。事業全体としては、2年と言わず5年くらいは続いていくという見立てを持っています」
――データセンターについては。
「データセンターは一定期間ごとにメンテナンスが必要になると聞いています。そのため、関連部品の生産は継続していくのではないかと思います。ハードディスクも、以前は生産が減っていましたが、ここにきて増産へと舵を切る動きがあります。寿命が5年程度だとすれば、5年後にはまた交換需要が出てくる。そう考えると、データセンター関連はかなり長く続く可能性があります」
――自動車関連の回復についてはどう見るか。
「自動車は、これから急激に増えるというより、現在の需要が継続すると見ています。エアコンやバルブ関係には一定量がありますし、EV化によって新しい部品が増える可能性もあります。センサーやカメラなど、エンジン以外の部品については、新たな設備投資の話も出ています」
――「機械を売る」だけではなく、生産革新ソリューションにも注力している。
「お客様は図面を受け取り、製品コストを算出して見積もりを出し、受注した後に加工、洗浄、検査、出荷まで行います。当社は、その一連のプロセスに関わり、図面管理や見積もりを支援するソフトウエア、加工後の工程自動化なども含めて、お客様の生産活動を支援していきたいと考えています。設備を1台入れれば、それがお客様の競争力になります。だからこそ、お客様の運用方法に合った設備を提案することが重要と考えています」
――今後の製品開発の方向性は。
丸い部品だけでなく、四角い部品も含めて、旋盤の加工領域をさらに広げていきたい。部品を一度機械の外に出してしまうと、精度を維持するのは難しくなります。だからこそ、機械の中でできるだけ多くの工程を完結させることが重要です。生産性だけでなく、精度、精度の安定性、そして自動化を含めて、従来の自動旋盤という領域を超えていきたい。これまでマシニングセンタを使っていたお客様にも、『ここまでできるのか』と思っていただける加工を提案していきたいですね」

MCに代わる複合加工機の提案を強化
「止まらない現場」で採用されるLFV(低周波振動切削)技術
LFV搭載機の売り上げ比率について、伊奈社長は「全体としてはおおむね3割程度。これまで欧米や日本を中心に搭載され、アジアではASEANでは比較的低かったが、最近はこちらでも比率が上がってきている」と説明する。その導入目的については「精度より、切りくず処理による突発的な停止を避けることに主眼が置かれている。データセンター向けの冷却装置の部品(接手)や医療部品など、特殊な材質を加工する場面でも活用されている」と話す。