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インタビュー

碌々スマートテクノロジー 岩田 孝之 部長 
半導体市場2035年まで伸長

投稿日時
2026/05/19 17:07
更新日時
2026/05/22 13:49

増産体制で需要に応える

微細加工機のニッチトップメーカー、碌々スマートテクノロジーは、半導体向け需要の拡大を背景に海外売上比率が8割を超えるなど、旺盛な海外需要をしっかりキャッチしている。同社の岩田孝之営業部長に、外需の現況から輸出、出荷へのこだわり、今後の市況について聞いた。

――出荷現場を見て、梱包の丁寧さに驚いた。他社ではあまりやらないそうだが。

コストがかかるのはわかっています。簡易な方法で送るメーカーも多い。ただ、うちはそれが怖くてできない。シュリンクパックをして、乾燥材も入れて、台座もきちんと持っていく。23℃で管理された工場から出た機械が、輸送中の温度変化で結露したり、振動でダメージを受けたりすることを防ぐためです。コストより品質、という判断は一貫して変わっていません。

――以前は木箱の中に振動計を入れて輸送していたとか。

リニア機を本格的に海外輸出し始めた頃、やはり振動が心配でした。ボールねじ機なら多少振動が加わっても位置を保持できますが、リニア機は固定しているだけなのでシビアなのです。それで輸送中に過大な振動がかかっていないことを証明するために、振動計を機械と一緒に梱包して出荷していた時期も何年かありました。

しかし、現地でトラブルになったことがほぼ皆無で、輸送面での信頼性が十分確認できたため、現在は実施していません。それぐらい、うちの機械は輸送に強く安定した構造をしています。

── 輸送トラブルで精度に影響が出たケースはあるか。

私が居る間は経験がない、と言い切れます。国内での運送中に、トラックが鉄橋に接触して梱包箱が破損した案件が1件あったくらいです。こちらはすぐ工場に戻して再検査してから再出荷しました。

海外ではフォークリフトの扱いが雑でカバーに傷がついたことはありますが、機械性能への影響はありませんでした。機械のバランス設計がそもそも2点吊りに耐えられる構造になっていますから、輸送中に姿勢が崩れることがほとんど無いのです。

―― 現在、海外売上が8割を超えているが、地域別の状況は。

件数ベースでは中国が最も多いです。台数ベースでは韓国が多くなっていますが、それは特定の数社がまとめて発注してくれているからで、韓国市場全体が好調というわけではありません。全体的に満遍なく好調なのは中国です。重点市場は台湾・韓国・中国の東アジア3極。半導体向けが主軸ですから、一般工作機械とは市況の動き方がまったく違います。

―― 輸出管理の対応は。

全品目が該当機なので、1件ごとに経済産業省へ個別申請しています。エンドユーザーのチェックはもちろん、取引先の親会社、出資者、連携している大学教授の研究内容まで確認を求められることがある。申請に必要な書類も年々厚くなっていて、昔は薄いフォルダ1冊だったものが今は23センチの束になります。

輸出禁止になれば、売上の8割が消えます。だからこそ、販売先選びも慎重にやっています。アフターサービスができない地域や、素性のわからない販売店には出ない。その軸で海外戦略を組み立てています。

従来比2割増の生産体制へ

――半導体市場のこの先の見通しは。

個人的な見解ですが、2030年までは絶対に落ちない。2035年まで続けば良いと思っている。現在、半導体製造装置メーカーの下請けさんたちが、2030年に向けて設備投資をしており、消耗品の需要ピークはまだこれからです。それが来れば、検査工程をはじめとする我々の得意領域は間違いなく伸びる。半導体はもう「スーパーサイクル」と言っていい局面に入っています。

――不安要素は。

技術革新のスピードが、想定より早すぎることです。自動車の自動運転が普及してデータセンター需要を牽引する、というストーリーで市場を読んでいたのに、ヒューマノイドロボットが先に来てしまった。中国では3カ月で5000台のヒューマノイドが出荷されていたという話も聞いています。10年先を見据えて準備していたものが、一気に前倒しになっている。それがいい方向に転べばいいが、需要の急拡大に我々の生産能力が追いつかなくなるリスクが怖いですね。

── 生産能力の増強はどう進めているか。

今年3月に第1フェーズの増産体制を整えて約2割の台数増を実現し、9月にもう1段階の増強を予定しています。ただボトルネックは設備ではなく人材です。下回りと上回りを別々に組み上げて最後にドッキングさせる「総組」という工程が最も技能を要する。この工程ができる人数が、そのまま生産台数の上限になってしまう。今は下回り担当の若手を必死に総組に育てているところで、この半年が勝負です。

――中長期的な解決策は。

工程の細分化と生産管理システムの刷新です。出荷準備やカバーの組み付けといった工程を外部に切り出して、総組に人を集中させる。それと並行して、デジタルの生産管理システムを本格導入していく。1年以内で改善ポイントを見つけて対応出来れば、台数は変わってくるはずです。昔ながらの機械作りのやり方から、デジタルを活用した生産管理への転換が、今一番やらなければいけないことだと思っています。

── 最後に、5年、10年後のビジョンを。

半導体一本足のリスクは自分でも感じています。社長の矢野からも「半導体が落ちたらどうする」と言われています。だから東アジア以外の地域、欧州やインドネシア、インドを12年かけて模索していく。米国については、現在の在庫販売体制を維持しながら、エンドユーザーの声をより直接的に把握できる体制を強化していきたい。生産システムの整備、人材育成、新市場開拓と、やることは山積みですが、需要はある。あとは我々がどれだけ追いつけるかです。

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セールス好調な微細加工機「AndroidⅢ




執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。



(日本物流新聞2026年5月15日号掲載)