連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.130 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2026/10/09 13:42
- 更新日時
- 2026/10/09 13:47
気候変動
昨今の異常気象による水害で、損保会社の支払いがすごいことになっているという。八月の千葉の被害だけで二百億円を超えたとのこと。その報道を見て思った。みんな車両保険に入っているんだなあ。私は車両保険に入っていない。対人対物などはもちろん入っているのだが、車両保険は以前、バブルの頃にぶいぶい言わせながらポルシェを買ったときに、保険料が年間50万円を超えてびびってやめたのだ。だって2年ごとに百万円も修理代がかかるような事故なんて起こさないもの。しかし、昨今の水害を見ていると話は別だ。次に新車に乗り換えたときは入ろっかなと思わずにいられない。もう日本は、私の知っている日本じゃないのである。

8月に岐阜の田んぼで見かけた「防鳥案山子」。
大幅な気候変動。私は車両保険をどうするかくらいしか悩まないが、大変なのは農作物である。刈取り直前の稲が水害で水面下にある姿を見たときは泣けてきた。一年間、丹精こめて作ったのに。そんな米農家の苦労と心労も知らず、今、巷では「新米が安いぜ、ひゃっほー!」という声が飛び交っている。いや、いいよ、安いのは。ありがたいよ、私にとっても。しかし、米農家としては大変な状況なのだ。特に個人販売の値付けは、高くすれば売れなくなるし安くすれば年収に影響する。単純に安くはしにくいのである。
農作物の闘いは暑かったり雨続きだったりという天候だけじゃない。米が順調に育ち、あと少しで収穫というときには獣害も起きる。最大の敵、スズメが食い荒らすのである。私も大人になるまで知らなかったが、スズメは固くなる前の米ミルク状態のモミをつついて吸うらしい。どうりで都会のスズメに米をばらまいてつかまえようとしてもうまくいかなかったわけだ@幼少期。しかも、地域によってはイノシシによる獣害もあるという。あぜ道から首をのばして稲穂をくわえ、こしりとるようにして中身を食べるのだそうだ。収量が減る敵はあちこちにいるのである。私の米作りの師匠が「食べ放題だぜ、ひゃっほー!」とやってくるスズメに投網をかけて一網打尽にしたいと思う気持ちがよくわかる。
日本の主食、米。スーパーに並び始めた新米も、それぞれの農家の汗と涙の結晶だ。今年も感謝をしてからいただこうと思う。
(日本物流新聞2026年10月10日号掲載)
岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)