連載
けんかっ早いけど人が好き Vol.118 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2026/04/10 14:56
- 更新日時
- 2026/04/10 14:58
和洋の融合
桜前線が上昇中である。多くの人が花見に出かけているが、人混みが苦手な私は早朝にひとり散歩をして愛でる派だ。そして花見団子である。

三色の花見団子は安定のおいしさ。
串団子はおいしい。男性より女性のほうが串団子好きが多いという調査結果も出ている(私調べ)。もちっ&ねっとりとした食感の記憶は、衝動的に私を串団子屋に走らせる。その日もそうだった。
机に向かって一日を過ごし、ふと気が付くと夕方。突然、串団子が食べたくなった私は財布を握りしめて店に向かった。信号待ちの際中に、ふとその日が日曜日であることに気付く。近所の串団子屋は人気で、特に日曜日は完売すると早めに店を閉めてしまう。やばいやばいと早歩きになって突き進むと、見えてきた店のシャッターはまだ開いている。よかった、まだ買える。安堵しながらショーケースを真正面から見ると、私のお気に入りであるみたらしも粒餡も売り切れているではないか。
たしかにもちもち感は、ほかの餡でも楽しめる。これまでも黒ゴマ、ずんだ餡、きなこ、うぐいす餡などにトライしたこともある。でも、私の満足感を120%満たしてくれるのは、みたらしと粒餡なのだ。ただその日は最悪で、このツートップだけでなく、こし餡もそのほかの餡子もゴマ系も売り切れていた。ショーケースには草餅や大福などばかりなのである。いや、待て。ショーケースの一番下。ふだんは見もしない端っこのあたりに串団子が集められて残っている。三色の「花見団子」と「ちょこ」と平仮名で書かれたものだ。
ちょこ?
たしかに私はチョコレートも大好きだ。無人島にひとつ持っていけるならチョコを選びたいほどである。しかし、串団子にちょこというのはどうだろう。しばし悩んだのち、私は決断した。新しい世界に踏み込もうではないか。人生、なにごとも挑戦あるのみである。
自宅で包みを開けてちょこの表面を見ると、表面がぱっきぱきに固まっていて不安になる。口のなかに入れて噛む。すると、硬いチョコレートが一気に溶けだしてもちもち団子と合体した。なにこれ美味しい! この食感、チョコレートフォンデュではないか。やばい、おいしい。
新たな扉が開いてしまった。世の中にはまだ、未知の美味しいものがある。幸せだ。
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)
岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)