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ジダイノベーター Vol.33/アキュイティー、製造業の暗黙知をデータに変える
- 投稿日時
- 2026/04/10 14:29
- 更新日時
- 2026/04/10 14:33
0.1mm視るモーションキャプチャ
「カンナは腰で引け」。熟練の職人が若手にそう指導していた現場があった。言葉通りに受け取った若手は一生懸命尻を後ろに引きカンナをかけるが、削り面はいっこうに綺麗にならない。こうした「言葉にしづらい技能」を可視化するのが、モーションキャプチャ技術の精緻化に強みを持つアキュイティーだ。

若手の育成に課題のあったこの現場に同社が入り熟練技能者の動きをデータ化したところ、熟練者が実際にやっていたのは尻をグッと沈み込めた状態でカンナを引く動作だった。アキュイティーを率いる佐藤眞平代表取締役CEO兼CTOは、「人の動作には言語化しにくい部分が多分にある。データで見える化するだけで一発で言いたいことが伝わる場合もある」と述べ、人の動きを正確に伝えられる形にすることの重要性を指摘する。
もっとも、モーションキャプチャ自体は、映画やゲームなどのエンターテインメント分野を筆頭に、今や決して珍しくない技術だ。アキュイティーが提供するソリューションは、それらとは“精度”で一線を画す。一般的な技術では1~数㌢程度の誤差が生じることもあるが、同社が実現しているのは肉眼で捉えきれない0.1㍉未満の微細な動きだ。

モーションキャプチャのデータ分析画面のイメージ
「キャプチャ用のマーカーが真球でなかったり、カメラに微細な振動が発生したり、三脚も固定後すぐは沈み込みが発生したりなど、精度を狂わす要因は意外に多くある。当社はレンズのゆがみから設置環境まで、現象をデジタルに変換するときの全てのプロセスを分解し、そうした誤差を徹底的に排除することで、他にはない精度での可視化を実現している」
■プロセス保証のツールに
近年、特にニーズが高まっているのが製造現場における人の動きの可視化だ。工場ではIoTの活用で設備のデータ化が進む一方、「人の動き」だけが未だデータの空白地帯となっている。佐藤氏が「ラストワンマイル」と呼ぶその領域が、最後の改善余地として浮かび上がってきている。
ただ、製造現場では動きを可視化するだけでは十分ではない、と佐藤氏は言う。その動きが「何の動作か」を正確に把握することが現場では求められるからだ。
「自動車メーカーの現場では1秒ラインが停止するだけで数百万円もの損失が発生する。各作業の所要時間を秒単位で正確に把握し、改善につなげたいという動機が極めて強い」
この際にも高精度にデータを取得できることには価値がある。動作判定にはAIが使用されるが、その際データにノイズが多いと誤判定につながるからだ。実際、ある現場で認識精度の比較検証が行われた際、他社のサービスの認識精度が70~80%程度にとどまった一方で、同社のソリューションは99%以上の精度を確保した。
既に自動車メーカーからは引き合いがあり導入に向けた取り組みを進めているが、佐藤氏はさらに先を見る。
「作業が正確に認識できるようになった先には、『作業保証』や『プロセス保証』といったことも考えられる」
つまり、作業手順をデータとしてタグ付け管理することで、万が一の不良発生時にも膨大な映像を遡ることなく、どの工程のどの動きに原因があったか瞬時に特定でき、生産プロセス全体のトレーサビリティを確保できるようになるとみる。
今後は、20分ほどかかる設置・校正時間を1分程度に縮め、物流業界のピック&プレイス領域などより多様な領域での活用を進めたい考えだ。
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)