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井上鉄工所、5台のライスハウァー製歯車研削盤を駆使
- 投稿日時
- 2026/09/30 09:43
- 更新日時
- 2026/09/30 13:42
航空・宇宙分野に挑戦
[歯車製造]
広島県福山市
瀬戸内海に面した広島県東部の福山市は鉄鋼、造船、工作機械などの製造業が集積する国内有数のモノづくりの街だ。そこにある創業149年の井上鉄工所(明治10〈1877〉年創業)を訪ねた。社員10人ながら1億円以上するというスイスのライスハウァーの歯車研削盤だけで5台(外径20~800㍉まで対応)を保有し、2019年にはJISQ9100(航空機や宇宙機器などの製品において高い安全性と信頼性を確保するために策定された日本工業規格の一つ)を認証取得した。

工場には外径2.5㍍(モジュール25)まで対応できる唐津鉄工所製の歯切盤「GH-20」も
「日本製に比べ値段は倍するが、20年使っても精度が出る」
井上亮社長はその高価な歯研についてそう話す。形状精度は3ミクロン以下(モジュール3以下で)に抑える。
同社は歯車製造をメインに歯車装置もつくる。歯車は平歯車、はすば歯車のほかラック(板状歯車)、内歯車、スプライン(嵌め合い)などを月に計2千~3千個(外径20㍉~2・5㍍)製造する。大口顧客は印刷機メーカーでかつては売上の6、7割を占めたが、現在は5割ほどに。このほか工作機械メーカーやホイストメーカーなども。一昨年あたりからは造船分野(ウィンチメーカーなど)の仕事が増えてきた。「高精度を追求するよりも、会社を安定させるにはいろんな業界の仕事をもっておいたほうがいい」と井上社長は考える。
同社は農機用具の鍛冶屋として開業。2代目で機械加工を手がけ、3代目は脱穀機など農機具のメーカーになった。井上社長の父である4代目(1994年)から歯車メーカーとなり、歯を削るだけでは仕事がなくなるとハイエンドな歯研を導入したが、リーマンショックで出端をくじかれたという。5代目(2004年)の井上社長は仕事の幅を広げ、経営を安定させようとJISQ9100を認証取得。だが直後のコロナ禍で仕事が止まり、「ウェブサイトや会社案内を充実させ、航空機関連の展示会にも出展しているが参入障壁は依然高い」と唇をかむ。
■毎朝のカイゼン
同社社屋の階段を上ると各段に番号がふられており、工場の床や社員の作業服が明るい色であることに気づく。「番号は対象区域を特定するため、床や服は汚れが目立つようあえて白に近い色にしている」と教えてくれた。これらはカイゼン活動の一環で、リーマンショックの頃に顧客から勧められて始めたという。毎朝8時から、月~木曜は20分間、金曜は50分間の週に計2時間10分を活動に充てている。
「当初、現場は猛反対したが、2つのグループに分けて3カ月で基準値を超えると2千円のランチをごちそうするなどして続けている」
若手をリーダーに任命するなどの工夫も。どうしても忙しい時はカイゼンよりも仕事を優先することができるが、リーダーの許可を得なければならないため皆カイゼンに取り組むことになる。カイゼンは半年間の計画に沿って進められ、JISQ9100の取得もこの成果だという。
「ISO9001も取得してなかったのに皆で動けば認証取得できるもの。社内の自発的な取組みを促しつつ、航空、宇宙、防衛関係の仕事も得て10年、20年続く事業を手がけていきたい」と井上社長は先を見据える。

井上亮社長が「息子が大学に行くまでは毎週のように一緒によく行った」と言う海釣りはめっきり減ったが、今でもストレス解消法になっている。
(日本物流新聞2026年9月25日号掲載)