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扉の先111/テムザック、農業ロボットで乾田に種まき 稲作の自動化へ
- 投稿日時
- 2026/06/11 16:31
- 更新日時
- 2026/06/15 10:56
全国の耕作放棄地をよみがえらせる
京都の旧西陣織工場に中央研究所・本店を構えるロボット開発ベンチャー「テムザック」。同社が今、総力を挙げて取り組んでいるのが、小型ロボットを活用した省力化稲作「WORKROID農業」だ。その中で最大のブレークスルーと考えるのが、水を張らない乾いた田んぼに直接種をまく「乾田直播」の技術開発である。

創業者・髙本陽一代表取締役議長
同社は23年から、宮崎県延岡市でロボットを活用した省力化稲作の挑戦を開始。26年5月からは、新たに福岡県北九州市小倉南区の圃場でも中山間地の稲作維持に向けたロボット開発を本格化させている。ロボットによる播種、雑草抑制、害獣追い払い、さらには収穫までをトータルで実施し、ロボット耕作米の米粉「雷粉」の販売までこぎ着けた。すでに水面を航行しながら条播きを行う群れ型の播種ロボットの技術は確立しつつあるが、なぜ今、あえて「乾田」なのか。
「現在、日本全国で水不足が深刻化しており、日本の耕作放棄地に新たに水を引くにも大きな課題があります。だからこそ、水のない乾いた田んぼでも実施できる技術が必要なのです」と創業者・髙本陽一代表取締役議長は力を込める。
さらに、同社は「再生二期作」の農法にも取り組んでいる。従来の農業は巨大なコンバインで稲を根元から刈り取るが、テムザックのアプローチは異なる。稲の「穂先だけ」をカットすると、再び新しい穂(二番穂)が出てくる特性を利用するのだ。ロボットによる乾田直播と、この穂先カットの技術が確立すれば、仮に1回当たりの収穫量が下がったとしても、年に2回生み出すトータルでの生産性は劇的にアップするという算段だ。
「日本中の耕作放棄地を合計すると、京都府とほぼ同じ面積になります。もし我々のロボット農業が確立すれば、都会のサラリーマンが副業としてロボットをレンタルし、10枚の田んぼを管理するような未来が作れます。年間数回、数時間ロボットを動かすだけの作業で50万円の副収入を得られる、そんなライフスタイルモデルの実装が可能です。田んぼを集約して大規模化するだけが唯一の選択肢ではありません」と、髙本氏は壮大なビジョンを語る。
もちろん、一筋縄ではいかない。乾田直播や陸稲、二番穂に関する研究知見は世の中にまだ十分とは言えず、これまでの農業機械の知見も「巨大な機械で効率的に作る」ことに特化してきたため、小型ロボットの仕組みは一から開発を迫られている。小規模な農地にも対応するため、同社はロボットの小型化を進めつつ、複数台を同時に動かす「群れ化」の技術を加速させている。クラウドを介さず、ロボット個々に搭載されたGPU付きのエッジAIが自律判断を行うことで、通信環境の悪い山間部の不整地でも安定稼働できる。
一台のロボットのLiDARが障害物で死角になった部分を、別の位置にいるロボットが通信で情報を補完し、ミリ単位で協調動作する。この、大手ゼネコンと共同開発した『システム天井施工ロボ』の空間認識アルゴリズムを、田んぼでの自律走行にコンバートするのだ。
26年5月27日、宮崎の圃場で同社初となる「水なしの種まき」への挑戦が行われた。作業を終えた髙本氏は、「まずは無事に播種を終え、一定の手応え(成果)を感じています。始めたばかりなので、この先の生育についてはまだ分かりませんが、今後、雑草対策ロボット等も考えていかなければならないと思っています」と話した。

水なしでの種まき(乾田播種)の様子。(※企業秘密のため詳細は公開できずモザイク処理している)
(日本物流新聞2026年6月10日号掲載)