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脱炭素・CEビジコン、関西の中小企業が未来拓く
- 投稿日時
- 2026/04/27 09:00
- 更新日時
- 2026/04/28 11:16
「脱・石油」の新化学繊維が最優秀賞
大阪商工信用金庫
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、社会の取り組みが本格化し加速するなか、中小企業がいかに脱炭素と経済成長を両立させるかが、製造業にとっての難題となっている。大阪商工信用金庫(多賀隆一理事長)はそこにフォーカスを絞り、「企業の持続的成長」と「循環型経済(サーキュラーエコノミー:CE)」の完全一致を目指す試みとして、「大阪脱炭素・サーキュラーエコノミービジネスコンテスト2026」を開催。

大阪商工信用金庫の多賀隆一理事長(前列左)、最優秀賞に輝いた「石油に頼らない新しい化学繊維」の圓井繊維機械の圓井仁志氏(同・左から3人目)とほか入賞者と審査員
3月下旬、大阪市内で開催された公開プレゼンテーション審査では、予選を勝ち抜いた7社のファイナリストが登壇、関西に根ざした独自の技術やモノづくり力を武器に、環境負荷低減と利益創出を両立させる次世代のビジネスモデルを競い合った。
最優秀賞に選ばれたのは圓井繊維機械の「石油に頼らない新しい化学繊維」。現在の繊維市場の約7割はポリエステルやナイロンなどの合成繊維が占めるが、これらは石油由来の樹脂を原料とし、製造工程では年間2・5億㌧ものCO2が大量発生する。圓井繊維機械が着目したのは、「POM(ポリアセタール)樹脂」だ。鉄の原料となる石炭をコークスにする過程で発生するCO2を固定化、回収して作られるこの樹脂を、独自のノウハウで繊維化することに成功した。ポリエステルと同等の物性を備えるだけでなく、滑り特性や、耐摩耗性、耐水性をもつ。また「繊維から繊維へ」のマテリアルリサイクルが可能だという、まさにサステナブルな新素材だ。
多賀理事長は、日本の産業構造が抱える脆弱性を「石油がない国であること」と話す。経済安全保障の観点からも、エネルギーの節約や石油に頼らない新しいエネルギー源の創出は、大阪発の中小企業が取り組むべき重要テーマだという。
奇しくも昨今のイラン情勢を予見したかのような「新繊維」の誕生と受賞だが、多賀理事長は「脱炭素・脱石油・サーキュラーエコノミーは、今日明日の時勢の変化で始まったことではない」と語る。ホットな話題として上がりつつあるが、まだまだ未開拓なマーケットを自ら獲得しにいく中小企業の背中を押すこと、それこそが信用金庫としての使命であると強調した。
また、同コンテストの審査の観点には「社内資源、社外ネットワーク等新事業を実現できるリソースを持っているなど事業遂行能力があるか」という項目があり、「スケールできる実現力」も問われる。圓井繊維機械の「石油に頼らない新しい化学繊維」は「量産はかなえており、大手メーカーとの実証実験をしている段階にある」(同社・圓井仁志さん)という。「コスト面もそのほかのベンチャー素材に比べればダントツに価格を抑制できた。将来的に生産量が増やしていければ価格をさらに抑えられる余地はある」と社会実装の高い可能性を語った。「新エネルギー分野やロボティクス、あるいは産業資材などの用途展開に可能性を感じる」とし、大阪から産声を上げた革新技術がどのように広がっていくのか期待がかかる。

大阪商工信用金庫 理事長 多賀 隆一 氏
(日本物流新聞2026年4月25日号掲載)