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扉の先108/ニチエツ、AMRをフィジカルAIで誘導 金型無人交換へ

投稿日時
2026/04/28 10:53
更新日時
2026/04/28 10:57

2トン可搬を±1mm以内で位置制御

製造現場の自動化が進む中、依然として残されているのが重量物搬送だ。特に数百㌔から数十㌧に及ぶ金型の交換作業は、多くの現場では人手とクレーンに依存しており、常に重大な労災事故の危険と隣り合わせの工程となっている。この製造業の難所に、ロボティクスと独自制御、そしてフィジカルAIの実装で挑むのがニチエツ(中村高志代表取締役)だ。同社は2017年、大手精密機器メーカー出身のエンジニアを中心に金型交換装置の専業メーカーとして設立された。日本で2拠点とベトナムの子会社で事業を営んでいる。目指すのはAMRを用いた金型交換装置による、金型の取り出しから成形機への搬送、金型交換から金型の引き取りまでの一連の工程の自動化だ。

新タイプの2㌧可搬AMR金型交換装置の開発風景。「AMRの上に乗せる金型交換装置には十分な実績があるため、今は新しい制御方式の立ち上げを行っている段階」(中村高志代表)

生産現場を熟知した設計力を武器に「コンパクト・安全性・高機能」を兼ね備えつつ価格競争力を維持した装置を展開。国内外の大手メーカーの成形工場に多数導入されている。主力製品である無軌道タイプの金型交換装置は電動走行による柔軟な移動が可能で、1台で複数台の成形機をカバーできる。このほか、完全無人対応の交換装置もラインナップし、ニーズに応じた装置を展開する。

■独自制御によるティーチングレスと安全性

23年から着手したAMRを用いた金型交換装置の開発において、最も注力しているのは「新タイプのAMR金型交換装置」。従来のAMRは、周囲のモノの配置の変化などの環境変化に弱く、金型交換に必要な位置決め精度実現には、導入時に膨大なティーチング工数を要するという大きな障壁があった。この課題に対し、フィジカルAIを活用した独自の誘導システムを構築。ティーチングを簡単にするのではなく、ティーチングそのものを不要にした。「開発中につき技術の詳細は開示できないが、社内の模擬工場では±1.0㍉以内での接続成功率100%を達成しており、導入工数は従来比で90%以上削減できる見込み」(中村代表・以下同)と大きな手応えを示す。

実運用面での耐性も極めて高い。床面の凹凸に左右されず、全方向への自在な移動を可能にする「全輪駆動・全輪操舵」の足回りを実装。強靭な駆動ユニットと、±1.0㍉の精度をさらに追い込む特許出願済みの位置合わせ機構との組み合わせにより、2㌧可搬もの重量物搬送の常識を覆す高度な制御を実現する。

「金型に留まらず、組み立て中の大型機械や車両、重量級ワークの供給など、あらゆる重量物ハンドリングへの応用を視野に入れている。今年中の販売開始を目指す」と話す。

今後の課題はソフトウェアの拡張性。周辺機器や上位システムと柔軟に連携することで、導入コストを抑えつつ、工場全体の最適化を図る。AMRを導入することで固定式の装置に比べて成形機周辺のスペースも改善できるのもメリットだ。

メーカー規模の大小問わず、深刻化する労働力不足に強い危機感を抱いている成形工場の現場。「ハードと制御を不可分に統合することで、重量物の精密制御をあらゆる現場に開放する」技術集団のニチエツに注目が集まる。

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中村高志代表取締役

(日本物流新聞2026425日号掲載)