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ファザーマシン2/Chapter47

投稿日時
2025/05/15 09:00
更新日時
2025/05/15 09:00

ついにサラリーマンを辞める日が!

みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。今回は、「脱サラ編」をお送りします。

時は2020年、コロナ禍の真っ只中。当時勤めていた会社では仕事が落ち着き、妙に時間だけが余っていた私は、頭の中が常にYouTubeのことでいっぱいでした。展示会MECTでの"武者修行"を経て、自分の中に少しずつ自信が芽生えはじめ、工房内にとどまらず、外での撮影や企画にも積極的に挑戦するようになっていました。

脱サラしてすぐにキャンプ道具を爆買いしました

この頃からありがたいことに、企業や施設の方から「うちも撮ってください」とお声がけいただくことが増えてきました。もちろんうれしいのですが、正直、反応に困るケースもあります。

それは「費用が発生しなそうな案件」です。

YouTubeもテレビや新聞と同じように広告メディアとしての側面がありますが、私たちはあくまで個人。撮影・編集・出演に加え、企画書作成や打合せまですべてを一人、あるいは二人でこなしています。

この頃は、趣味からビジネスへと転換する過渡期でもあったため、どうしても無償での対応は難しいのが実情でした。

特に取材系の動画では、撮影地が遠方になることも多く、宿泊が必要なケースもあります。現地では「撮り忘れ」がないよう神経を尖らせての撮影となり、万が一データを消してしまえば撮り直しはまず不可能。家に帰ってバックアップを取るまでは、気が抜けません。

■各自で動画を制作することに

そんな怒涛の活動の中--20206月某日、私は会社を辞めました。

「いつか脱サラしたい」とぼんやり考えてはいたものの、実際に踏み出せたのは「なんとかなる!」という、不思議な確信めいた気持ちがあったからです。

もちろん、会社を辞めたことでマシニングセンタや汎用旋盤といった機材が使えなくなり、できることは一気に限られてしまいました。でも、だからこそ「工夫する力」が育ったとも感じています。

生活面で言えば、正直、YouTubeの広告収入だけで食べていけるほどには見られていません。養っていく家族もいる中で、会社員時代の貯金や副収入に頼りながら、なんとか生活をつないでいました。

そんな中、少しでも動画本数を増やすため、またお互いに『やりたい動画』を自由に出せるよう、この頃から「ケロさん、とんこつ各自で動画を制作する」スタイルを取り入れ始めました。もちろん、二人で撮るべき動画には二人で出演しますが、依存し合うのではなく、それぞれが責任を持ち、独立したクリエイターとして活動することを目指した形です。

さまざまな工場を見学する中で、機械加工にとどまらず、板金加工、工具メーカー、工作機械メーカーなど、同じ金属加工でも本当に多様な世界が広がっていることを知りました。

それはとても楽しく、そして学びの多い経験でもありました。

慣れるまでは本当に大変で、精神的にも肉体的にも限界を感じる瞬間が何度もありました。それでも、「なんとか重工」としての活動が少しずつ形になっていく実感が、前に進む力となっていたのです。

(日本物流新聞2025515日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ

工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は12.9万人(2025年5月13日現在)