産業潮流
立ちはだかる住宅弱者問題
- 投稿日時
- 2025/03/31 10:44
- 更新日時
- 2025/03/31 10:46
7割超が収入減、4割「納得いかず」
ライフルホームズ調査
ライフルが運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」は、4月の「65歳までの雇用確保の義務化」を前に、59歳まで会社員であった60~65歳の1592人を対象にインターネットで「高齢者の就労と住まい探しの実態調査」(期間2月27日~3月4日)を実施。60歳を過ぎると一定の割合で収入が減少し、収入減少への納得度合いは低く、賃貸物件探しで高齢者ゆえの不当な扱いが多く見られることがわかった。

今年の4月には高齢者雇用に関する2つの法制度が改正される予定だ。一つは「65歳までの雇用確保の義務化」。企業に対し、定年制の廃止や65歳までの定年の引き上げ、希望者全員の65歳までの継続雇用制度のいずれかの導入が義務付けられる。もう一つは「雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小」。高年齢雇用継続給付は、定年後の賃金がそれまでの75%未満となっている場合、高齢者の雇用継続の援助を目的として対象者に賃金の補助として支給するもの。これまでは賃金の15%が支給されていたが、今年4月以降は最大10%に縮小される。
ライフルホームズによれば、「雇用」と切っても切れない関係の「住まい」。高齢者は住宅の賃貸契約を断られやすい「住宅弱者」だという。「雇用機会の拡大と住まいの選択肢の拡大は両輪で進められるべき課題」(ライフルホームズ)とし就労や住まい探しの実態を調査した。
60歳になった時の就労状況について聞いたところ、78.6%が「以前と同じ会社で勤務」と回答。「別会社に転職」(12.9%)、「リタイア・専業主婦(主夫)」(5.5%)が続いた。
60歳になった時の就労状況で「以前と同じ会社で勤務」または「別の会社に転職」と回答した人に対し、その際の雇用形態について聞いたところ、「正社員」が53.4%、続いて「嘱託・契約社員」(42.5%)に。60歳の時の収入が59歳の時と比べてどの程度であったかを問うと、最も多かったのが「50%以上75%未満」(27.0%)、続いて「75%以上100%未満」(26.7%)、「100%以上125%未満」(24.5%)となった。
■高齢ゆえの不利益、保証人の追加など
収入を伸ばした人もいる一方で、過半数の73.9%は収入が下がったと回答。また、高年齢雇用継続給付の対象となり得る75%未満の人は約半数の47.2%だった。
60歳時の収入について「納得がいった」(「大いに納得がいった」「やや納得がいった」計)と回答したのは25.9%。反対に「納得がいかなかった」(「大いに納得がいかなかった」「やや納得がいかなかった」計)は43.3%となり、収入の下落について想定以上であった人が多い。
賃貸物件に住んでいる場合、収入が減ると引越しを検討しなければならない場合も。そこで、60歳以降に賃貸物件を探した経験のある人に契約までの期間を聞いたところ、56.4%が「1か月未満」と回答した一方で、「1年以上」と回答した人は15.8%に。以前ライフルホームズが実施した調査と比較すると、一般層のうち物件契約までに「1年以上」かかった割合は2.8%となっており、高齢者の住まい探しは一般層と比較すると難しいことがうかがえる。
60歳以降に賃貸物件を探した経験のある人に対し、高齢であることを理由に不平等を感じた経験があったか質問すると、37.1%が「あった」と回答。具体的な内容としては「候補となる物件が少なかった」(64.0%)がダントツで多く、「保証人の追加や過剰にお金の請求を受けた」(16.0%)、「プライバシーに関わる内容など過剰に質問や調査をされた」(14.7%)と続いた。