産業潮流
【AM】先行する新興国、遅れる日本
- 投稿日時
- 2025/03/11 16:07
- 更新日時
- 2025/03/11 16:09
日本の総力結集、原理原則解明で逆転できるか
金属AM(金属積層造形)はモノづくりを大きく変える可能性を秘めるが、課題も多くわが国では「様子見」が続く。一方、中国など新興国はゲームチェンジや次なる覇権を目指し、国家戦略的に成長投資を行う。諸外国の後塵を拝してきた日本だが主要団体では「AM製品化に必要な、材料や設計デザイン・シミュレーション技術や後加工技術の提案も多くなり、従来の試作AM活用から、製品活用に必要な環境が整いつつある」(日本AM協会澤越俊幸専務理事)とし「AMで新しいモノづくりのゴールドラッシュが来るが、これは早い者勝ちだ」と前のめりだ。

1グラムでも軽く1ミリでも小さくすることに莫大なコストをかけられる航空・宇宙などの産業が、AMを先導してきた。諸外国に比べこうした産業でリーダーシップを持てないでいることも国内のAM普及の足かせになってきた。しかし用途分野では日本が得意とする自動車産業が中心になりつつある。「いよいよ民生品に軸足が移ってきた」(澤越氏)と見る。ただ日本の主要産業である自動車産業への展開は依然としてハードルが高く、製品としての採用事例はわずかという一面も。
デンソーの寺亮之介氏は製品適用の難しさを「車の部品は車が寿命を迎えるまで、壊れないように寿命設計し保証しないとならないからだ」と話す。そのためには造形プロセスのスタビリティー(安定性)や造形物の品質保証に関わる『原理原則』の確立が重要だ。
寺氏は「AMに莫大な資金を投下する中国などが先行しているように一見みえるが、原理原則はまだ解明はできていない」とし、設備・材料ほかあらゆる技術がまんべんなく進んだ日本だからこそ『原理原則』の解明が出来る、とみる。
具体的な方法として企業の垣根を越えてのデータベース化を提案するのがマツダの西昇一氏だ。西氏は設計者の選択肢にAMが入っていないと指摘し「データベースを使って設計者が自信をもって設計できるようにしていくのが近道。エンジンは、切削などこれまでの加工をベースに確立された型があり、それを起点にアレンジなり進化なりをしているが、AMは前提を根底から覆す。自動車は部品が壊れることを許さず、原理原則が分かってないと、設計者は安心して取り組めない」とする。
■金型保管など古い商習慣を打破
大量生産では金型には勝てないが、まずは補給品などをAMで代替製造したいというのが自動車産業の共通した想いだ。補給品とは新モデルの登場などで量産を終了した後に補修などを目的にした小ロット生産品。既存の金型を持ち出して生産するため、下請けを苦しめる「金型保管問題」ともつながる。寺氏は以前のインタビューで「AM技術で金型保管などの古い商習慣を変えたい」と語っていた。ただ既存工法同等品を作るのはAMが苦手とするところで一筋縄にはいかない。
現実面では直接製品に適用しない治工具・金型で活用が進む。「AM設備を2018年に導入して1100個以上のAM金型をダイガストの量産に活用。アルミで累計3000万ショットに達する。日本のダイカスト業界ではおそらく一番AMを使っているのではないか」と話すのは豊田自動織機の佐藤良輔氏。日本AM協会もまずは治工具や金型から導入を目指し、事例やノウハウを増やしていく戦略を推奨する。
(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)