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川添 達郎 共栄法律事務所弁護士
カスハラ対策の義務化と企業に求められる対応
- 投稿日時
- 2026/10/13 13:59
- 更新日時
- 2026/10/13 14:04
労働施策総合推進法の改正により新設されたカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)対策に関する規定が令和8年10月1日に施行されました。これに伴って、カスハラを防止するために必要な雇用管理上の措置を講じることが事業主の法律上の義務となり、厚生労働省から指針(以下「厚労省指針」といいます。)が示されています。

■カスハラとは
カスハラとは、職場において行われる(1)顧客、取引の相手方、施設の利用者など「顧客等」の言動で、(2)労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超え、(3)労働者の就業環境が害されるものをいいます。
カスハラと聞くと一般消費者からの悪質なクレームが想像されますが、「顧客等」には、取引先の担当者や契約交渉の相手方なども含まれるため、カスハラはBtoBの場面でも問題となります。社会通念上許容される範囲を超える言動であるかどうかは、言動の内容及び手段や態様に着目して総合的に判断されます。厚労省指針では、性的な要求、契約内容を著しく超えるサービスの提供の要求、契約金額の著しい減額の要求、不当な損害賠償の要求、殴るなどの身体的な攻撃、脅迫などの精神的な攻撃、威圧的な言動、継続的・執拗な言動、不退去などの拘束的な言動などが例示されています。「労働者」とは、事業主が雇用する労働者の全てをいい、非正規雇用労働者も対象となり、派遣労働者については、派遣先事業主も措置を講じる必要があります。
なお、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた正当な苦情や申入れはカスハラには該当しません。
■事業主に求められる対応
厚労省指針では、事業主が講ずべき措置が5つに整理されています。
第1は、事業主の方針等の明確化とその周知・啓発です。カスハラには毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること、カスハラの内容及びあらかじめ定めたカスハラへの対処の内容を労働者に周知することが求められています。
第2は、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備です。相談窓口をあらかじめ定め労働者に周知すること、相談窓口の担当者が相談に対し適切に対応できるようにすること、相談者の心身の状況などにも配慮しながら広く相談に対応することなどが求められています。
第3は、事後の迅速かつ適切な対応です。事実関係を迅速かつ正確に確認すること、カスハラが生じた事実が確認できた場合には速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、事実が確認できなかった場合も含め、改めてカスハラに関する方針を周知・啓発するなどの再発防止に向けた措置を講じることが求められています。
第4は、カスハラへの対応の実効性を確保するために必要な抑止のための措置です。労働者に対し過度な要求を繰り返すなど特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知するとともに、当該方針において定めた対処を行うことができる体制を整備することが求められています。
第5は、第1から第4までの措置と併せて講ずべき措置です。相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に対して周知すること、労働者がカスハラに関し相談したことなどを理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発をすることが求められています。
■おわりに
法改正及び厚労省指針の内容を踏まえますと、自社の現場の実情に即し、実際に機能するカスハラ対策を整備することが重要です。10月1日の施行を受けて、自社の組織体制や社内規程、相談窓口、具体的な対応ルール等が法改正及び厚労省指針に沿ったものとなっているかを確認し、不十分な点があれば、その整備・見直しや労働者への周知・研修等を進める必要があります。
川添 達郎 共栄法律事務所弁護士
1984年高知県出身、京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了、2011年司法試験合格、2012年検事任官、2025年6月検事退官、同年7月弁護士登録。現在は、企業法務に関する民事事件を幅広く取り扱うとともに、企業案件の刑事告訴対応及び刑事弁護などの刑事事件対応もしている。