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中部部品加工協会 代表理事 村井 正輝 氏 
知識でつながる共同体めざす

投稿日時
2026/04/27 15:54
更新日時
2026/04/27 16:00

生産性を正しく向上させれば中国やタイにも競争力で勝てる

EV市場再編とHV回帰への見極めや、人件費高騰という構造転換に揺れる「モノづくりの集積地」の中部地方。そのような中、商流を含む従来のピラミッド型構造に依存せず、横の連携で突破口を開こうとする「中部部品加工協会」の存在感が増している。同協会は、異業種交流・サプライヤーの受注共同体の枠を超え、高度な技術連携や生産性向上を具体化する「共創」のハブとして機能する。時には大手企業をも巻き込み「生々しく本気で動く」という同協会の村井正輝代表理事に、次世代製造業の生存戦略を聞いた。

中部部品加工協会 代表理事 村井 正輝 氏

■「受注」ではなく「知識」でつながる

——協会には多種多様な企業が参画されていますね。

「現在、会員が約150社で、そのうち加工会社が約半数、残りが工作機械や工具、周辺機器メーカー、新聞社などが占めています。加工会社の顧客層も、自動車分野から航空宇宙、半導体や建築など偏りなくさまざま。JTBのような『モノづくりを支援したい』という異業種や経産省とも深く連携しています。特徴的なのは中小企業だけでなく、重工メーカーや大手部品メーカーのような大手企業とも技術開発や教育で『本気で』連携している点です」

「もう一つ特徴を挙げれば、我々の協会は『受注共同体』ではなく『知識共有体』であること。必要なサポートを会員や他業種の会員から得ることで、生産効率と対応力を磨くことが目的です。仕事ありきでアライアンスを組むと、どうしても利益構造や上下関係が生じ、結局は『縦のライン』に戻ってしまう。私たちはそれを避けるために、基本的に仕事の関係は作らず、成功事例を共有して自社の成長に繋げる形をとっています。150社全員で運営するイメージです」

——なぜ「横のつながり」にこだわるのですか。

「日本の製造業は縦割り構造が強く、隣の工場が優れた技術や工具を持っていても、伝統的な慣習や既存の枠組みが異なるだけで情報が遮断される。この閉鎖性が、日本の生産性を抑制する一因となっていることは否めません。我々が目指すのは、価値を生み出す者同士が直接つながるフラットな構造です。無駄を省き、生産性を正しく向上させれば、日本は中国やタイに対しても十分にコスト競争力で勝てる。実際に、海外から国内へ生産を戻している企業はいくつもあります」

——現在の中部の景況感をどう見ていますか。

「まだら模様です。中部には量産案件があるため、他の地域に比べ価格が崩れず稼げている面もありますが、『同じことを繰り返す』ことだけに特化してきた会社は厳しい状況にあります。一方で、自社の強みを再定義し、新しい価値提供にトライしている会社は、どんな状況でも伸びています」

——業界の課題である「後継者不足」については?

「私は、本質的な後継者不足など存在しないと考えています。なぜ継ぎ手がいないのか。それは単純に、今ある構造により、加工会社に収益がきちんと残らないからです。儲かる仕組みさえあれば、やりたい人は現れる。現に当協会のメンバーは30代、40代の若手経営者が多く、活気に溢れています」

■「考える人材」の育成

——特に力を入れている活動は。

「『考える人材』の育成と効率化です。単純作業者はいても、段取りや工具選定、プログラム作成を論理的に判断できる人材が枯渇している。これを補うために、工作機械メーカーと共に、AIやデジタル化を活用したシステム構築や、マネジメント教育を強化しています。また、コロナ禍に設立した『切削加工研究・研修センター』では、旋盤やマシニングセンタ、三次元測定機を設備し、メーカーや大手企業を交えた試験研究や教育を実施しています」

——有事の際のサプライチェーンの乱れも懸念されます。

「有事に一喜一憂しても状況は変わりません。だからこそ『自社が選ばれる理由』を磨き続けるしかない。もしラインが止まるなら、その間に技術を磨けばいいというタフな経営者が、この協会には集まっています。『考える人材』が足りなくて困っているという現場が多いのでそこの見直しや、機械のメンテナンスに充てるという風に捉えています」

——最後に、今後の展望をお聞かせください。

「協会のメンバー数を大きくすることには興味がありません。一社ずつでも、自力で収益を出し存続できる『自活する企業』を増やしたい。それが1000社残れば、日本のモノづくり産業の未来は明るいと信じています」

中部部品加工協会_image2.jpg

昨年、FUJI本社で開催した溝入れ加工オリンピックの様子。協会ではメーカーを横断した加工試験を実施し、結果を公開している。このほか約40社で「製造技術向上会」としてテーマを設けた改善活動を継続して行っている

(日本物流新聞2026年4月25日号掲載)