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オピニオン

日本金型工業会 会長 山中 雅仁 氏

業界ワンボイスで取引適正化を

(一社)日本金型工業会は6月5日に理事会を開き、新会長に山中雅仁氏(ヤマナカゴーキン社長)が就任した。金型保管、代金支払いサイトなど金型取引特有の商習慣が複雑に絡み合う中、取引の適正化を業界ワンボイスで進め「儲かる業界にしていく」と語る。新会長に方針を問うた。

――金型業界の現状認識と課題感は。

「事業承継問題も絡み小規模事業者が多い金型事業者数は大きく減ってきております。金型業界の構造上7割が自動車産業に依存しており、EVシフトを見据えてモデルチェンジが減り、新規の金型の案件が減っています。EVシフトの方向性がある程度決まれば状況は改善するでしょうが、外部要因によらず『どう、儲かる業界にしていくか』これが最重要ですね。小出悟前会長が尽力してきた取引条件の改善、という部分をしっかり引き継ぎながら、それに加えて何をしていくか、です」

――取引の適正化に非常に力を入れていますね。

「前会長が精力的に動き『下請け』という言い方を『パートナー』と改め、国会でも取り上げられるなど動きが生まれてきました。自動車会社が下請法違反などの指摘を受けるなどあり、意識は変わってきていますが、ティア2、ティア3と階層が下がってくると、ボトルネックがあり、全体に広がっていません。値上げ、取引条件、金型の保管問題など多岐にわたる懸案の解決にはまだまだ時間がかかります。8月にも私の名前で『手形支払いから現金支払いへの変更のお願い』の文書をだしました」

「発注側にご理解を求める部分もありますが、我々が、足並みを乱さず『業界ワンボイス』で取組んでいかないといけない。またお客様から『これ作って』と言われるのを待っている受け身ではなくパートナーであるなら提案もしていき、協力しながらより良いものを作っていく必要もあるでしょう」

■協調と競争で業界発展

――新会長としてどのような方針で臨まれますか。

「協調と競争ですね。個社ごとに競争していかなければいけませんが、協調できる部分もあります。協調領域で大きな可能性を持つのはビッグデータです。冷間鍛造なら冷間鍛造のカテゴリーで企業の垣根を超え多くのお客様からデータを集められれば、個社で取組むより高度なモノづくりが出来ます。知的所有権の取り扱いや契約の状況など諸問題がありハードルは高いですが、ビッグデータにAIが加わればお客様にとっても人材不足や技術継承に大きな力となります。まずは、数社単位でのスモールステップでやっていければと思います」

「人材育成は大きな課題で、金型学校などを通じて技術者の育成にも引き続き注力していきますが、各企業で困られているのはマネージメント層の育成です。マネージメント層の強化のサポートに力を入れます。また良いものを作っていれば売れた時代が終わり、各企業の営業力の強化も必要です。ハード・ソフト含めて営業の生産性向上を支援していきたい」

――金型業界はプレイヤーが多すぎるという指摘もありますね。

「金型業界に限らず経産省などがM&Aを後押ししています。金型業界を取り巻く部分で言えばEV化で部品点数が減ると言われています。エンジン車は残り続けるでしょうしEV化で新たなチャンスも生まれるので私はあまり極端に心配していないのですが、プレイヤーの数が適切かという議論があるのも承知しています。金型業界でもM&Aを通じて企業価値を上げる動きが一般化しました。当工業会としては、会員企業の自由な経営戦略を応援することを前提にM&Aを一つの選択肢として示しています」

――企業と大学の接点の強化も。

「学生金型グランプリを開催して企業と学生を繋ぐ試みをしていますが、さらに大学と企業の連携を強化できないかと考えています。新技術開発や課題解決には、企業と大学との共同研究の促進が重要で、当工業会としても大学との連携強化を進めつつ会員企業とのマッチングなど具体的に何かできないかを検討していきたいですし、国ももっと予算を出してほしいと願っています」

――インターモールドの更なる発展について。

「メーカーさんの出展が減少傾向で、外から見ればやや勢いがなくなっているという指摘も耳にします。半面、金型製造業者の出展は当初は20社ぐらいですが今は100社を超えており我々、金型製造業者としては発信の場、金型発注者とのビジネスの場として順調に成長しています。もちろんメーカーさんの出展を促進し、金型展ならではの展示や提案を行っていただけるように力を注ぎます」

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インターモールドでは活発な商談が行われている

■ひとこと

INTERMOLD/金型展/金属プレス加工技術展」は「技術連携で変革をリードする」をテーマに来年416~18日(東京ビッグサイト)に開催される。新企画の「ロボット・AI活用フェア」では、生産稼働率の向上や品質維持・管理など生産性アップに大きく寄与する「ロボット・AI」を中軸に据え、モノづくり中小企業への導入の提案を行う。

(2024年9月10日号掲載)