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オピニオン

東京都 環境局気候変動対策部 家庭エネルギー対策課長 東條 左絵子 氏

エネ消費量、家庭分野だけ増加

東京都が2050年のゼロエミッションの実現に向けた取り組みを加速させている。全国に先駆けて新築住宅への太陽光発電の設置義務化を決め、HTT(へらす・つくる・ためる)プロジェクトや省エネ家電への買い替え時にポイント付与する「東京ゼロエミポイント」など独自の取り組みも目立つ。そうした中、「家庭分野の取り組みが重要になる」と話すのが東京都環境局気候変動対策部の東條左絵子家庭エネルギー対策課長だ。

着実な省エネ化に向け支援策拡充

――すでに各所で夏日を記録するなど今年も暑くなりそうです。近年、東京都は家庭分野のエネルギー対策にも力を入れています。取り組みを進める理由を教えて下さい。

「東京都は2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比50%削減する「カーボンハーフ」、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、取組を進めてきました。その結果、都のエネルギー消費量は2000年度に比べて2021年度には27%削減されています。産業、運輸などの部門が押し並べて減少する一方で、家庭部門だけが186から206ペタジュールに増加しています」

――家庭部門だけ消費量が増えている。

「もともと家庭部門は選択の自由の側面も強く、即効性のある 対策を打ち出しにくいです。また、東京都の場合、人口が流入する傾向にあり、単身世帯数は約30年前と比べて2倍超となっています。世帯数が増加することで、 エネルギー消費量が増えてしまっています。単身世帯は賃貸物件に住んでいる人も多く、備え付けの製品を使っているケースも多いのが実情です。」

――目標達成には家庭部門が重要だが、対策が難しい。

「規制をかけるのはなかなか難しいので、『家庭の省エネハンドブック』などによる省エネ行動の紹介 や高効率な機器への買い替えを促す『東京ゼロエミポイント』のような施策で、生活や消費行動の変容を促しています」

■我慢せず賢く対策を

――省エネハンドブックには簡単に取り入れられる省エネ対策が記載されていますね。夏場におすすめの対策はありますか。

「まず、夏場は取り組み方を間違えると熱中症などで体調を崩すケースがありますので、適切にエアコンを使っていただくのが前提です。一方で、資源エネルギー庁の試算では夏場の1日の電力消費の約3分の1をエアコンが占める とも言われており、エアコンを効率的に運転することが省エネという意味では重要です。まず、室温は28℃を目安に温度設定しましょう。エアコンの設定温度ではなく室温を目安に することで、冷やし過ぎを防ぎます。加えて、エアコンのフィルターを月2回程度掃除すると運転効率の低下を防ぐことができます。それでも暑いときは扇風機やうちわ、サーキュレーターなど夏らしいアイテムを併用するのも手です。涼しい空気を循環させ、自分に涼しい空気を当てることで体感温度を下げられます」

――エアコン以外の対策は。

「室内への熱流入の7割以上が窓やドアからと言われています。すだれや日よけを設置することで熱の流入を低減できます。この際、住宅の外側で対策をとるのが重要です。また、シャワーヘッドを節水型のものに替えるとお湯の使用量を2~3割減らすことができます。こうした我慢せずに取り組めることは意外と沢山あります。11つの削減量は小さいですが、東京都全体で見たときに家庭分野の取り組みが重要になります」

■機器の買い替えも促進

――省エネ性能の高い機器への買い替えも同様ですね。

「そうですね。令和元年から始めた『東京ゼロエミポイント』は、一定の基準を満たす対象機器への買い替えに対して、商品券などに交換可能なポイントを付与する事業です。エアコンと冷蔵庫、給湯器、LED照明器具が対象で、好評なことから延長してきました。10月からは申請方法を、購入時の申請で販売価格からポイント相当分を直接値引く形に変更することで、後日申請する手間を省くことができるようにします。また、買い替えが進まない理由の一つに『製品が壊れないから』というものがあるため、製造から15年以上経つエアコンと冷蔵庫からの買替えについては追加のポイントを付与する『長期使用家電買替え支援』を用意し、買い替えの動きを加速していきたいです」

――その他にも支援策はあるのでしょうか。

「エネルギー使用量を削減していくには、やはり住宅自体を高断熱化・創エネ住宅化していく必要があります。こうした住宅は災害に強く、健康にもよい影響があるとされています。そうした優良な住宅ストックを作っていくための『災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業』は断熱改修が進んでいない集合住宅も対象としています。このように、大きいものから小さいものまで幅広く支援策を用意しています。 是非お気軽にご相談いただきたいです。」

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(2024年6月10日号掲載)