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オピニオン

ミツトヨ 顧問 山本 隆邦 氏

設計から製造・品管の「縦の」デジタル化を

モノづくりの司令塔となる設計を強化し、デジタルエンジニアリング(以下DE)を進化普及させようと(一社)日本自動車工業会(JAMA)のDE分科会が3DAモデルによるプロセス改革とその普及を目指し活動している。

JAMA講演会より

様々なCADデータ(等)をつなぐ共通言語「中間ファイル」の問題から、PMI(製品製造情報)のDEへの組み込み、BOM(部品表)やシミュレーション利活用など幅広い研究テーマに、設計関係者らが過去から取り組んできた。そうしたなか、今年3月のJAMA主催DEセミナーでは、測定機器大手ミツトヨの山本隆邦顧問が、製造・測定側の視点を交え3DAモデルへの期待と課題を述べた。

午後の約4時間にわたって開かれたDEセミナーに、途中、招待講演として登壇した山本氏は、設計と製造のデジタル連携の必要性をなんどか強調した。設計領域で各種データシステムの機能強化や互換性の問題に取り組んできたDE分科会に敬意を示しつつ、今後は設計から製造・品管の「縦のデジタル化も求められる」と力を込めて話した。

同氏は「工程設計分野までデジタルで一定程度カバーできれば、製造・測定の効率は大幅に上がります」、「幾何公差などの技術情報の扱いをみてもまだルールがはっきりしておらず、3DCAD上で幾何公差などをマシンリーダブルにすれば、工程設計につなげられます」などと、熱く早口に述べた。

「私どもの会社(ミツトヨ)では測定データを見える化し、データから改善点を読み取ろうとしています。精度のバラつきの要因や、加工工程で起きる不具合の原因を、かなり把握できるようになると考えます。ただ真円度や平面度などの形状に関する幾何公差は、数値データだけでは不十分です」

「部品加工による偏差は、3DCAD上に表現することにより、加工改善の方法が見つかります。そして形状間の関係性である位置度、平行度に関する幾何公差も改善の方法が見えてきます。つまり3D上での《見える化》も重要なデータ活用方法と思います」。こうしたことも含め、製造測定サイドでDEを活かせるようになればと言う。

「人のノウハウに頼らずに高品位なモノづくりができるよう、DEデータ活用の出口まで(川下工程の最終出口まで)考えて作り込んでいくことが大きなメリットにつながると思います」と締めた。

DEに関する議論は過去から設計者中心に間で行われてきた。製造・測定サイドを重視した氏の発言は「新鮮な切り口」(他の講演者)とされ、講演後は質問が続いた。

2024525日号掲載)