オピニオン
二輪・四輪・OA機器業界、すべてで回復
- 投稿日時
- 2021/12/10 13:46
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
YAMAZEN VIET NAM(ホーチミン(本社)、ハノイ、ハイフォン) 社長 太田 左登司 氏
ロックダウン中一番ひどい時期はハノイ支社でおよそ1カ月間、ホーチミン本社で2カ月間、ベトナム人社員5人ほどが代表して事務所で寝泊りするか、近所の指定のホテルに泊まるかのどちらかして事業活動を継続した。あくまで実務を担当する会計や貿易、業務管理の社員がそうしてくれた。
他の社員は在宅勤務。在宅勤務中は外へ一歩も出られず、デリバリーの利用も一切できなかった。買いだめしていなかったら大変だ。私の家では妻が冷凍食品やレトルト食品をかなり多く入手してくれたので無事に過ごせた。世界的にも珍しいくらいの隔離状況。運動はできず、食事も限られたものだけで生活しなければならなかったのでいろんな意味で重いストレスにみんなが悩まされた。
ベトナムはホンダさん、ヤマハ発動機さんを中心とした二輪、デンソーさんをはじめとする四輪のティア1クラス、ブラザー工業・キヤノン・京セラさんなどのOA機器業界など、基本的にはこれらの業界すべてで景気は回復してきている。今回のコロナ禍で非常に景況が厳しかったホーチミン市ですら設備増強の計画も少しずつ出始めている。日系企業はコロナ対応に苦慮したが、ベトナム企業は難なく対応し、ホーチミン地域ですら生産をあまり落とさなかったところが多い。ロックダウンが解除されてからは「勝負の時期だ」と設備投資を計画している会社も出てきているほどだ。
ただ、生活のすべてが従来のように戻ったわけではない。ハノイは普通に戻っているがホーチミンは区によって規制がある。たとえば当社の本社事務所のある7区は感染が収まっているのでレストランもすべてではないにしてもオープンしている。お酒も提供してくれる。私は昨日(10月28日)、お客様と一緒に飲みに行ったし、今日もお客様と飲みに行く。その一方で欧米人が多い地域はまだお酒が飲めなかったり、店内飲食ができない地域もある。再開がやや遅かったホーチミン中心部の1区は少し活気に欠ける印象だ。
■力つけるローカル企業
半導体業界が活況なため、半導体製造設備に使われるような部品・部材が足りず、供給が遅れている。コロナの影響というよりは全世界でモノが足りなくなっている印象がある。工作機械メーカーに部材を収めている会社も今回のロックダウンでモノが製造できないことで、工作機械の納期が遅れている。今までに見られたような特定の部品が足りないから製造が止まっているということではなく、あれもこれもない状況のようだ。需要と供給のバランスが逆転してしまっている。
投資先として大丈夫なのかとベトナムに疑問符をつけ始める向きもある。でも私はそうは思わない。コロナ期間中に中国工場とベトナム工場をもつ会社は、ベトナムで生産できないとなると中国で生産するところがたくさんあった。とはいえ中国は電力事情が悪いこともあってまたベトナムに生産が戻ってきている。ベトナム離れはあくまで一時的なもの。投資が縮小されるという悲観的な考えは私には一切ない。そもそもハノイ地区はコロナ期間中でも受注が落ちていない。大手および中堅企業の投資案件は増えており、部品不足で半導体や工作機械分野で納期が長期化しているので、中小企業やベトナム企業では在庫品の引き合いが増えている。
当社が深く関わる加工機用部品、半導体部品、OA機器部品の業界に関して言うと、こうした部品加工の下請けは多くのベトナム企業でもできるようになった。5年ほど前は中古の機械を使って仕事していた会社も、最新の日本製機械を購入して新しい仕事を獲得するようになった。生産性を上げて好循環に事業展開する会社が増えているということ。会社立ち上げ時より社内留保(キャッシュ)が貯まってきたという理由もあるが、金融面でも融資を受けられる優良な会社が増えている。
ローカル企業の台頭は部品加工企業に限らない。最近はロボットシステムインテグレーター(SIer)が成長している。サムスン電子はシステムインテグレートしたロボットを何千台と韓国から持ってくる形でベトナムでの生産設備を整えてきたが、ベトナムSIerの技術力に目をつけ始めた。現地SIerが育ち、この10年ほどで大きな会社に成長しているからだ。5年前と比較するとレベルが大きく高まり、製造業の自動化が急速に進みそうな様相だ。
(聞き手・編集部)
(2021年11月10日号掲載)