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オピニオン

製造業DX実現のカギ~第12回

投稿日時
2022/05/23 17:18
更新日時
2024/08/19 13:19

リアルファクトリー構築のプロセス

プランニング、シミュレーションにより、当初の目的に合致する工場をデジタル上で構築し、検証ができた段階で、いよいよリアルファクトリーの構築に取り掛かる。

デジタル化が装置設計の工数を削減する

リアルファクトリーの構築についても、いくつかの項目に分解して説明ができる。ここでは、自動化・ロボット化の「設計」「製作」「設置」、デジタル化の「要件定義」「実装」、物流システムの「要件定義」「実装」、「プロジェクトマネジメント(実装PM)」の大きく4項目に注目して説明する。

まずは、「自動化・ロボット化」の設計から解説する。装置設計については、製品設計の流れと似た部分もあり、既に多くの方が研究、分析し、専門分野として確立されているため、ここでは簡単な解説にとどめさせていただく。

まずはプランニングとシミュレーションで「自動化・ロボット化構想」を行った内容を、詳細設計まで落とし込んでいく。装置を作るチームは多くの組織の場合2つのチームに分かれて進められる。「機械設計」と呼ばれる物理的な領域の設計と、「電気設計」と呼ばれる、制御機器の仕様や装置の動きを決めて、プログラミングしたりするソフトウェア領域の設計だ。

工場などで仕様書と呼ばれる統一基準がある場合は、それに準拠していずれの設計も進められる。例えば使用する機器のメーカーや、装置の色、機能別の配線の色など、仕様書に記載される内容は多岐にわたる。

ある程度大規模な装置になると、機能ごとにユニットに分割し、それらのユニットを、さらにつながりを意識しながら詳細設計していく。そしてユニットの機能を満たすように、一つ一つの構成部品を設計する。全てオリジナルで設計することはあまりなく、メーカーが販売している機器を組み合わせて設計し、それらで賄いきれない部品を個別に設計していく。たとえば、コンベア、アルミフレームなどは専門メーカーが存在しており、自社で設計、製造するよりもはるかに安く確実に入手ができる。各種センサや空圧機器もここで選定され、機械設計が進んでいく。

電気設計も同様で、仕様書がある場合は仕様書に準じて各機器が選定されていく。特にプログラミングが必要なPLCや産業用タッチパネルは慣れの問題や、編集ツールの有無などの問題から、リレーや電磁開閉器などは保守部品の問題から、仕様書にメーカー名やシリーズ名が明記されており、そこから選定する場合が多い。

■工数を削減する デジタル化

機械設計、電気設計ともに現在ではCADが利用されている場合がほとんどで、過去のデータもデジタルデータで保存されている。制御プログラムも同様だ。そのため、設計者は過去の経験から流用できそうな部分を思い出し、新しい設備に展開を進めていく。ただし、それらの設計データを徹底的に活用できる状態になっているとは言えないことが多く、過去同様の設計をしていたにも関わらず、流用できることに気が付かず、工数を無駄にしてしまうケースなども多い。これもデジタル化を徹底することで解決できる。

設計の段階では、次の工程の「製作」ができるように、組図、ばらし図、部品表など多くの図面を作成する必要がある。前述の「BOM」もこの工程で決められる。

設計が終わったら、各種図面に従い部品を購入し、加工部品を製作する。加工部品の製作は自社で行う場合もあれば、協力会社に依頼する場合もある。近年では加工部品についても、素材や図面など仕様をWEB上で入力すると、即座に見積や納期がわかるサービスなども普及しはじめている。

一般的に生産設備は構成部品が多く、数千~数万といった部品点数になることも多くある。これらの部品手配、納期管理だけでも相当の工数が発生するため、この領域もデジタル化による生産性向上が結果として現れやすい。必要な構成部品が集まれば、それらを設計に従い組立る。熟練の設計者が設計した装置は、装置としての機能やコストだけではなく、「組立やすさ」「メンテナンスのしやすさ」にも配慮されているケースが多い。

今後はこのようなノウハウもデジタル化し、資産として活用していくことが求められる。ロボットシステムも同様であるが、ロボットシステムの場合はロボットの動きの自由度が高いため、専用装置よりも制御設計の比重が高くなる傾向がある。このようにして機械部分はできあがっていく。

チームクロスFA プロデュース統括 天野 眞也

あまの しんや=1969年東京生まれ。法政大学卒。1992年キーエンス入社。2年目には全社内で営業トップの成績を残した「伝説のセールスマン」。2010年にキーエンス退社、起業。FA/PA/R&D領域におけるコンサルティング を行うほか、現在はFAプロダクツ、日本サポートシステム、ロボコム等の代表取締役、ロボットSIerによるコンソーシアム『チームクロスFA』のプロデュース統括を歴任。趣味は車、バイク、ゴルフなど。