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オピニオン

日本AM協会 専務理事 澤越 俊幸 氏

製品使用に高い壁、まずは治具・工具から

3D関連技術を活用したものづくりの普及促進を目指し、AM(アディティブマニュファクチャリング)の活用促進を後押する専門展「AM EXPO 名古屋」が6月26日~28日に初開催された。主催する(一社)日本AM協会の専務理事・澤越俊幸氏に話を聞いた。 

――AMの現状は。

「日本ではAMは他の加工と異なり、実際の製品作りにはまだまだ使われていません。しかし海外は保守部品も含めた多くの先行事例があります。海外の事例を見て『使えるんだろうな』と期待感があるからAM関連の展示やセミナーに来場者は多いですよね。でも『じゃああなたやりますか?』といえば『コスト高いよねー』『強度や精度がちょっと』と、やらない理由を並べて様子見です。それが10年続いています」

――愛知県で初開催ということはコスト度外視の航空・宇宙・軍事産業から自動車産業へAMが実装されつつある表れですか。

「そういった兆しが出てきています。豊田自動織機、デンソー、いすゞ自動車などが今展で事例を紹介していますが、自動車産業も『そろそろ本気を出さないとまずいぞ』という表れではないでしょうか」

――自動車産業ではどの程度AMが使われていますか。

「まだ初歩的です。生産中止後のヘリテージパーツを金型ナシで製造するという動きや、ごく一部ですがオプションパーツなどで使い始めたという事例が去年あたりから出てきています。ただ、製品で使うのは品質保証の問題でハードルが高いですが、治具・工具・型ではすでに多くの使用実績があります」

■日本様子見、海外まず挑戦

――治具・工具からだと入りやすいですね。

「トヨタ自動車では治具・工具・ツールのために約40台のプリンターが導入されていますね。特にマテハン領域では、ワークや経路に合わせて、より軽量に3Dプリンターなら設計・加工できるので従来加工より優位性があります。治具・工具・ツールから実績を重ねて、製品へ広がりが出てくることを期待しています」

「各社製品部門では従来工法の延長線上で『いかに儲けるか』という命題を背負いながら開発や製造を行っています。AMはまだ『儲かる』という道筋がはっきりしていないので、日本では設計変更まで踏み切れない。でも海外は『儲かる』かわからないが、とにかくチャレンジして先行しています。中国、インドなどは国家戦略として取り組んでいます。ただ、量産の製品での使用段階では日本の組織力や総合的な技術力の高さと上手く結び付くなら、まだ世界と戦えます」

2024710日号掲載)