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小松鋼機、黎明期に始めた3Dレーザー加工が強みに

投稿日時
2024/12/17 09:00
更新日時
2024/12/17 09:00
ヤマザキマザックの3Dレーザー加工機は通算5台導入(1台は入れ替え済み)

鋼材と機械工具の流通事業を行う小松鋼機が、ヤマザキマザックの3Dレーザー加工機を導入したのは21年前のことだった。3Dレーザーの黎明期に思い切った投資を行い、顧客が手間だと感じる加工を小ロットから行うことで商圏は大きく拡大。今は組図→部品図への分解作業や協力会社のネットワークで対応範囲をさらに広げている。同社の加工事業の足跡を取材でたどった。


――事業概要は。

取締役経営企画室長 木村竜樹氏「鋼材と機械工具の流通事業を手がけています。『モノづくり応援商社』を掲げている通り、顧客の大半が製造業。鋼材事業は必要な鋼材を必要な時に必要な分だけ必要な形で届ける。つまり定尺販売以外に切断や加工も行います。製造業で扱う鋼種を非常に幅広く揃えており、特にパイプや形鋼の加工に強く加工の9割が内製です。鋼材事業の顧客は建機業界が45%と最大で、次いでプレス機や工作機械が十数%ずつ、残りはその他で非常に多岐に渡ります。様々な業界の多品種小ロット加工を請けるのが我々のスタイルです」

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左から取締役経営企画室長 木村竜樹氏、取締役鋼材事業部事業部長 高橋伸幸氏

――ヤマザキマザックの3Dレーザー加工機をかなり早期に導入したとか。

取締役鋼材事業部事業部長 高橋伸幸氏「初号機の導入は21年前。鋼材商では国内初だと思います。通算5台購入しましたが、今も1カ所に4台も設備するのは国内トップクラス。導入の狙いはお客様の仕事の前工程、すなわち職人がけがきをして削っている工程を3Dレーザーで補うという発想でした。当社は建機のユーザーが主力のため、お客様の仕事に迷惑がかかると思い建機以外の業種を増やすことを目的としました」

――導入の経緯を詳しく教えてください。

高橋「バブル崩壊後、建機が落ち込んだ時期があります。当時は我々も建機業界にどっぷりで、加工で新たな市場に参入できないかと考えました。まず鋼材の切り欠きのためにプラズマ加工機を導入しましたが、その後に我々の機械工具事業で滋賀の顧客に3Dレーザー加工機を納める話が持ち上がったんです。実機を見に行くと角・丸パイプが面白いように加工されており目から鱗でした。途中で板厚が変わる材料はレーザー加工は無理と思い込んでプラズマ加工機を導入しましたが『これなら板金のお客様が苦手なパイプが加工できる』と。丸パイプは芯出しが必要で、角パイプも外注するなどパイプは板金屋さんの最も嫌がる加工でした。我々は製造業のお陰で成り立っているのでとことんお手伝いしたい。お客さんを邪魔せず、むしろ面倒な加工を取り込もうと考えたんです」

――決して安い設備ではないですが、具体的な案件は見えていたんですか。

高橋「それがほとんどゼロ(笑)。当時約3億円を超える投資でしたが、そもそも加工の知見がなかったので、バスの足回りの仕事を頂きそれをこなす以外は丸1年、営業せずに社内で技術の習得に務めました。それを見て県内では『鋼材屋が我々の仕事を取りに来た』という言葉を聞きましたが、そんな気は毛頭なかった。ただ県内では当時まだ3Dレーザー加工機を用いた加工までは必要ないと感じ、噂にもなったのでそれならば新しいエリアから始めようと富山や長野に営業に行き、小ロット、地元の販売店ではできない加工を頼んでくれと言って回りました」

■何でも頼める鋼材屋

――今は4台の3Dレーザー加工機を保有しています。商売が軌道に乗った時期は。

高橋「リーマンショックでベテランが現場を去って人手不足が加速し、一気に加工事業に火が点いたんです。3Dレーザーの導入まで事業は石川と福井だけでしたが、今や関東や中国地方まで拡大しました。徐々に県外のお客様から様々な要望が舞い込み、今では材料の発注や段取り、切り欠き、組図のバラシなどお客さんの面倒な前工程をすべて社内に取り込んでいます。特に図面のバラシは徹底強化しました。現在は3人体制でバラしています」

木村「実はこれが我々の今の強みです。図面のバラシは経営者や工場長などに属人化しており、そこが時としてお客様のボトルネックになると考えました。昔は組図のバラシや穴あけ切り欠きも自社で行う製罐屋さんが多かったですが、今はどこもそんな所に人を割きたくないし割けない。それより1つでも多くフレームを溶接するなど時間単価が高い仕事をしたいのが実情です。その前工程を我々が担えばお客さんの生産性が上がります」

高橋「また県外では『溶接もしてくれ』という依頼が増えています。昔は近くに何でもやる鉄工所がありましたが廃業し、外注先を探している。そこで我々も協力企業と組み、調達代行の役割を担っています。前工程が足りないなら前工程を、溶接が足りなければ溶接を行いますし都度、頼む仕事の範囲を変えてもらっても良い。モノづくりに関して好きなことを言える鋼材屋、まさに便利屋です」

――協力企業はどうやって広げましたか。

木村「溶接業も『図面をバラしてくれれば仕事を受ける』という場合が多くこの機能が有利に働いています。また3Dレーザーの黎明期に導入したため見学希望が殺到し、我々が3Dレーザー加工機の立ち上げ支援を行ったことも。そうした背景から今は西日本や東日本にも協力会社があり、2024年問題に効いています。兵庫以西や北関東など片道の輸送距離が350㌔を超える地域で、各地の協力会社が加工して出荷できています。まさに今、その体制をより強固にしようとしています」

(2024年12月10日号掲載)