CEATEC AWARD 2025、シャープが総理大臣賞
- 投稿日時
- 2025/11/07 09:00
- 更新日時
- 2025/11/07 11:59
デジタルイノベーション技術のアジア最大級の展示会「CEATEC 2025」が10月17日まで幕張メッセで開催された。中でもイノベーション性が高く、優れていると評価された製品や技術に授与される「CEATEC AWARD」には、痛みを共有化するプラットフォームなど様々な製品が選ばれた。ここでは総理大臣賞を受賞したシャープとイノベーション部門賞を受賞したヤマハロボティクスを取り上げる。
総理大臣賞・シャープ、低軌道衛生向けアンテナ
シャープが出展した「5GNTN通信対応LEO衛生通信ユーザーターミナル」は、LEO衛星(高度約2000㌔以下の低軌道衛星)を用いた通信方式に対応したアンテナ。これまで衛星通信は各事業者の独自規格の通信端末を使う必要があったのに対し、4Gや5Gといった国際的な標準規格「3GPP」に準拠した5GNTN(非地上系ネットワーク)通信に対応し、今年2月に実証実験に成功した点に特徴がある。
「様々な通信回線にシームレスに接続できるようになるだけでなく、スマートフォンなどに搭載される一般的なチップセットを使えるようになるので、小型化・軽量化・コスト低減が可能になる」(シャープ 通信事業本部 次世代通信事業統轄部 ビジネス推進部の城田真吾係長、以下同)
LEO衛星通信は海上や山地など有線設備の敷設が難しい場面での高品質な通信を可能にする手段として注目されている。米・SpaceX社のStarlinkをはじめとして、欧米ではLEO衛星の打ち上げや関連技術の開発が活発化している。
日本国内でも能登半島地震でStarlinkが即応的に通信インフラの復旧に寄与するなど活用が進む。一方、衛星を含め関連技術やサービスのほぼ全てを海外に依存していることが課題となっていた。
「現状、海外製のものしか選択肢にない。安全保障の観点からも自国で用意できる体制は重要になる。今回、様々な方からお声かけいただいた。我々が手掛けているのはアンテナだが、これを機にオールジャパンで衛星通信関連の取り組みを進めていきたい」
会場ではブース上部に吊るした模擬衛星とアンテナ、ラジコン重機を通信で結び、重機を遠隔操作するデモを行った。建機や農機、船舶などの移動体に搭載して活用できることをアピールした。今回発表した試作機は来年度を目途に市場投入していく予定。
イノベーション部門賞・ヤマハロボティクス、異物ゼロに挑むハイブリッドボンディング
新開発の超音波非接触ハンドリング技術
【出所:NEDOブース・ヤマハロボティクスの展示パネルより】
ヤマハロボティクスは産業技術総合研究所(産総研)、東京理科大学と共同で取り組んだ「AIの進化に貢献する、環境配慮型チップオンウエハダイレクト接合技術の開発」を発表した。本研究はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「ポスト5G情報通信システム基盤技術強化研究開発事業」の一環である。
近年のAIやポスト5Gなどの技術進展は、HPCやデータ処理を担う先端半導体のさらなる高性能化を求めている。そうした中で、大量のデータを迅速かつ効率的に処理・転送する技術が必要であり、その技術の1つが今回3者が開発した「チップオンウエハダイレクト接合技術」、つまり「ハイブリッドボンディング」だ。
ハイブリッドボンディングは2つ以上の半導体デバイスを積み重ねて3D積層する際の配線接合技術の一つ。従来技術とは異なり、接続材料を介することなくデバイス同士を直接接続する。そのため、データの伝送経路短縮と電気抵抗・静電容量を小さくでき、データ処理速度の向上と消費電力低減に寄与する。
一方、デバイス同士を直接繋げるためには、極めて高い清浄度と位置合わせ精度が求められる。特に、ダイシング後の先端半導体チップ表面には異物が付着し、除去しきれなかった異物はボイド(空隙)の発生原因となり歩留まりを低下させる。
本研究では、洗浄・ハンドリング・検査の各工程に新技術を投入することで、異物の付着を極小化。水素水を用いた環境負荷の低い洗浄を行った後、新開発の超音波スクイーズチャックによってチップを浮上させた非接触状態でボンディングヘッドまで搬送する。接触ツールを使用した場合に比べ大幅なボイド数の削減を実現する(平均41・4→7・33個)。
同社担当者は「競合も多いボンディング工程だが、前後工程を固めることで接合品質の向上と差別化を図っている」とコメント。同社は今年、ヤマハロボティクスホールディングスとその完全子会社(新川、アピックヤマダ、PFA)を統合し誕生。連携強化による競争力向上を狙う。本研究もその成果の一つ。
(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)