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スタートアップが集い育つ街、なごやへ

昨年のまちなか実証の様子。円頓寺商店街を自動運転モビリティが動く

まちなかで実証できる懐の深い都市

 名古屋市がスタートアップ振興に力を入れている。スタートアップ支援課の設置から約4年、いまや近隣で生まれる若い企業は倍増した。「世界の実証実験都市・なごや」の掛け声のもと、街中のあちこちで実証を受け入れ新事業の創出と市民への浸透を後押しする。国内最大のインキュベーション施設「STATION Ai」の市内での開業も10月に控え、スタートアップ振興の機運は高まるばかりだ。


??名古屋には強い産業基盤がありますが、スタートアップ支援に力を注ぐ理由は。

正木 愛知・名古屋は自動車産業と共に育った地域。しかし百年に一度の大変革で従来の産業基盤が必ずしも頼れなくなりました。そこで次の産業を担う新たな技術、中でも一気に新たな市場を形成していくスタートアップの力に期待しています。名古屋市もスタートアップ支援課を2020年に設立。愛知・名古屋・浜松地域のスタートアップエコシステム形成に向けたコンソーシアムも愛知県や浜松市、名古屋大学、中部経済連合会と共同で結成しています。この地域でスタートアップを育てるという強い思いを経済界全体が抱いています。それだけ育成に本気の地域と言えるのではないでしょうか。

??具体的にはどんな支援をしますか。

正木 大きく育ったスタートアップは自治体の手を離れますが、その過程に私たちができることがある。例えばオープンイノベーションに向けたスタートアップと大企業のマッチングや伴走支援、大学生・社会人起業家の新規事業計画のサポート等です。名古屋は東京と比べVCの数が少なく、愛知県と連携して名古屋市もファンドに出資したり、VCを招待してピッチ交流会を行うなど投資環境の改善に尽力しています。グローバル化の支援も行っています。早くから海外に目を向け大きく育ってほしいからです。

??中部は市場が巨大だからこそ、海外志向の企業は限られそうですね。

佐橋 確かにこの地域は保守的な面もあり、ここで育ったスタートアップが一足飛びに海外へ目を向けにくいのも事実。しかし国内市場はシュリンクします。最初から海外を視野に事業を組まないと、後からの方向転換は難しさもあります。とはいえいきなり考えを切り替えるのは難しいので、まずは海外に目が向く土壌を作りたい。2月には愛知県等と共同で大規模なグローバルイベントを実施予定です。海外からもこの地が盛り上がっている印象を持ってほしいですね。

■街に溶け込む実証

??昨年はじめた「まちなか実証」はユニークな取り組みですね。名古屋の街のあちこちで実証実験が行われるとか。

正木 昨年度は3つの民間フィールドで6つの実証プロジェクトを行い、うち半数が京都や東京など他地域の応募でした。なかなか同じことができる都市は少ないのかな、と思います。今年度も名古屋に限らず広くスタートアップを募集します。今回はすでに12の民間フィールドが集まっており、実証したい内容に合うフィールドをうまくマッチングしつつ、選定する6つの実証にはフィールド側とスタートアップ側の双方に支援金を用意します。またIPO経験も持つシリアルアントレプレナーに市の客員起業家を務めて頂いており、その方によるアドバイスなど伴走支援も行います。実証はあくまで通過点で、社会実装に向けた道筋を描いて頂きたい。それが可能なプログラムを意識しています。

??2年目にして活発な動きです。

正木 キャッチコピーは「世界の実証実験都市・なごや」。以前も行政としては実証を受け入れていましたが、民間に受け入れられるプロダクトか否かは街中で実証してこそという思いがありました。大企業もオープンイノベーションに関心をお持ちです。街中で実証をどんどん引き受け、街全体で新技術を体験できれば大変魅力的な街と言えると思います。市民に受け入れられれば、そのプロダクトやサービスの導入を考える企業も現れるでしょう。

??支援を始めてから名古屋市のスタートアップの動向に変化はありましたか。

正木 取り組み前と比べれば、年間に生まれるスタートアップの数は倍増しました。東京を除く他の都市と比べてもかなり多いです。ポテンシャルを活かし取り組みを進めれば実績は付いてくるのだと感じています。有望なスタートアップを選定する「J-Startup CENTRAL」も厳しい審査基準を設けていますが、それをクリアする企業が毎年生まれています。今後はさらに弾みをつけられれば。市だけでなく県や大学とも役割分担しながら取り組みを進めます。

??そんななか、名古屋市にSTATION Aiがオープンします。

正木 STATION Aiは愛知・名古屋の施設に留まらないインパクトのある施設。事業主体は県ですが、名古屋市としても相乗効果に期待しています。この地域は大企業が多く海外のスタートアップにとっては魅力的ですが、これまで一部企業を除き海外のスタートアップとの協業まではできていませんでした。STATION Aiは海外からのスタートアップも受け入れる方針と聞きます。グローバル化の加速も期待しています。

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(写真=名古屋市 経済局 スタートアップ支援課 課長補佐 正木 彩恵子 氏)

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(写真=名古屋市 経済局 スタートアップ支援課 課長補佐 佐橋 学 氏)

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2024525日号掲載)