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大同特殊鋼、金型補修ニーズに応える金属積層造形材料を展開

投稿日時
2026/03/09 14:04
更新日時
2026/03/09 14:10
溶接ワイヤDSDW329J4L(二相ステンレス溶接材料YS329J4L)を使用したスツール 協力:竹中工務店、XENCE、シモダフランジ

ニッケル基高合金など付加価値高い領域に注力

大同特殊鋼は、AM(積層造形)向け材料として粉末・ワイヤの双方を展開し、大型造形ニーズや金型補修への対応を進めている。

粉末材料では、ダイカスト金型向けに、高熱伝導率を持つHTC(SKD61比約1.5倍)や、大型造形に対応するLTX(150㍉角以上の造形が可能)などの拡販に注力。機能製品事業部・粉末製品部・粉末営業室の隅田隆明室長は「量産というより実用検証段階のユーザーが増えている状況だが、自動車向け金型分野で着実に引き合いが増えている」と話す。

SLM方式3Dプリンタ造形時に発生するひずみを低減し、大型ワークにも対応可能なLTX420にも注目だ。これらの材料は、コバルトフリー材として輸出対応を強化しており、中国を含むアジア市場からの問い合わせも増加している。

大同粉末ワーク写真.jpg

粉末LTXを用いたダイカストのインサート 造形協力:キャステック

一方、ワイヤ材料では、金型補修用途向けの450HVクラスCo非含有材「DHW」が足元で需要が出始めている。鋼材営業本部・ステンレス鋼営業部・溶接材料営業室の廣岡信行室長は「ギガキャストの普及を見据える自動車業界では、金型補修の需要が今後さらに高まる」と見る。

粉末補修に対し、ワイヤ補修では上向き施工ができるという利点を持つ。さらにロボットによる送給が可能であり、「AIとロボットの進化によって自動補修というブレークスルーが起こる可能性もある」と期待を寄せる。

同社は高付加価値領域として、ニッケル基高合金にも注力する。隅田氏は「すでにタービン製造企業からの引き合いがある。世界的には防衛需要が拡大しているが、日本ではまずエネルギー分野、特にガスタービン用途から立ち上がる可能性が高い」と明かす。

同社はサーキュラーエコノミーの観点からもAM活用を進める。大阪・弁天町駅に設置された「ルーレベンチ」の脚部は、二相ステンレス鋼「DSDW329J4L」のワイヤを用いた積層造形品。JR西日本などと連携し、廃レールを溶解・圧延して溶接ワイヤへ再生し、AMでアップサイクルしたものだ。

技術開発研究所・ステンレス・高合金材料技術研究室の高橋茉莉主任研究員は「二相ステンレス鋼は元々ワイヤ化が難しい材料だが、当社にはその技術がある。廃レール再生は成分管理が難しいが、溶解技術を活かし、今後さらに活用比率を高めたい」と語る。

■ニンジンだけでなく「カレーのレシピ」も

開発を担う高橋氏は、AM材料開発の本質をこう説明する。「粉末でもワイヤでも、AM特有の現象に合わせた材料設計が必要になる。鋳造に似ているようで、凝固過程はまったく違う。ユーザーがどんな条件で造形するかまで入り込まなければ、本当に使える材料にはならない」。実際、HTCでは大型造形時の割れが課題となり、それがLTX開発へとつながったという。

今後はNi基高合金等の難加工鋼種の適用拡大を見据え、「割れない材料設計」が重要テーマになる。既存鋼材の転用ではなく、AM専用の合金設計をゼロベースで進める考えだ。

さらに、同社は「材料を売る」だけではない提案を強化する。

「スーパーがニンジンだけを売るのではなく、ニンジンを使ったカレーのレシピも一緒に提案するイメージだ」と高橋氏。ユーザーと共に適切な造形条件を確立し、それをレシピとして素材とセットで提供する。

AMを人手不足対応技術と位置付ける視点も強い。溶接での金型補修は熟練技能者への依存度が高く、技術継承が課題となっている。現在のAMでは完全な置き換えは難しいものの、「AIなど新たな技術との融合で、職人技を再現性あるプロセスへ転換できる可能性がある」としている。

(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)