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ファナックが国際ロボット展を前に会見

投稿日時
2025/12/02 10:44
更新日時
2025/12/02 10:46
発表会に出席した山口賢治代表取締役社長兼CEO(右)と安部健一郎常務執行役員ロボット研究開発統括本部長

3つの新製品と「フィジカルAI」技術

ファナックは12月1日、国際ロボット展(12月3−6日、東京ビッグサイト)に出品する3つの新製品と1つの新技術を報道関係者やアナリストに都内で発表した。新製品の1つは産業用ロボット「R-2000/Eシリーズ」(全8機種)。従来のR-2000シリーズは累計35万台以上出荷と同社製ロボット(2024年に累計出荷100万台突破)の3分の1を占める。その「世界で最も売れていると言ってよい産業用ロボット」(山口賢治社長CEO)をフルモデルチェンジしたかたちだ。動作速度(従来比最大20%アップ)、リーチ(同10%アップ)、手首可搬質量(同85%アップ)などの性能を高めたほか、バッテリー、グリース、ケーブルの交換を不要にした。位置を検出するエンコーダーは通常、アーム位置を保持するためバッテリーが使われ、1〜2年に一度、バッテリーを交換する必要がある。

ファナック・国際ロボット展を前に会見(Mono Que専用記事)P2.jpg

R-2000/Eシリーズ(全8機種)

協働ロボットCRXシリーズに加えたのは、溶接作業などを想定した最軽量の「CRX-3iA」(可搬質量3kg、リーチ692mm)。作業者が片手で持ち運べる11kgに構造部質量を抑え、ボルト固定を不要にした(マグネットベースとの組合せで)。「どこでも持ち運んですぐに設置でき、適当に置かれても自らセンシングするので設置角度の入力などは一切不要。センサーを使って自動で溶接個所を認識し、溶接経路を生成できるためティーチングも不要」(安部健一郎常務執行役員ロボット研究開発統括本部長)と言う。このほかミドルサイズの塗装ロボット「P−55」(可搬質量15kg、リーチ2m以上)も用意する。これもバッテリー不要にした。

■オープン化しても信頼性は維持

新技術として紹介したのは「フィジカルAI」。オープンソースのロボット開発プラットフォームROS2(Robot Operating System 2)上でファナックロボットを駆動する専用ドライバーを、オープンソースソフトとしてGitHub(ソースコードの保持・共有・管理ができる世界最大級の開発プラットフォーム)に公開した。同社のロボットはAI開発で広く使われるプログラミング言語Pythonも標準搭載しており、オープンプラットフォーム上のフィジカルAI実装に最適という。


同時にファナックはNVIDIAと協業し、同社製ロボットはNVIDIA Omniverseライブラリを基盤とするオープンソースのロボットシミュレーション用レファレンスフレームワークであるNVIDIA Isaac Simにより、フォトリアルな仮想工場におけるデジタルツインを実現する。

ROSやPythonへの対応は基本、既存の産業用ロボットと今後発売する製品のすべてに対応する考え(10年以上前に発売した一部の機種を除き)。ただ、ここまでオープン化を進めると、これまで同社ロボットで担保してきた動作の安全性などの品質は維持されるのだろうか。安部常務はこう説明する。

「オープン化に時間がかかったのはまさにその信頼性を担保するため。オープン化したことでいろんな人が様々な使い方をする。信頼性の高かったロボットが暴走する、モノを壊すといったことがあっては何のためのオープン化かわからない。そのようなことが起こらない仕組みでオープン化プラットフォームが構成されているので安心して使っていただける。むちゃな動きを指示すればむちゃだと指摘する。動きを止めるか、問題のない動きに変更するようにしている」



(2025年12月2日更新)