【Prodrone】次世代モビリティ、空飛ぶクルマで空と道をつなげる
- 投稿日時
- 2025/07/01 14:56
- 更新日時
- 2025/07/01 15:20

物流・災害対応・防衛で活用
自動車や航空宇宙など、モノづくり産業の集積地である愛知県。Prodrone(愛知県名古屋市・戸谷俊介社長)は産業用ドローンを開発するスタートアップとして、存在感を発揮している。2015年に設立した同社は、着水・離陸可能な防水型ドローンや長距離時間運用できるシングルローター機などの産業用ドローンを武器に、物流、インフラ対策や災害対応、国際貢献など国内外でのドローン活用を牽引している。
着水・離陸可能な防水型ドローン「PD4-AW-AQ」や最大ペイロード20㌔で量産を開始したマルチコプター「PD6B-Type3」、長距離長時間運用が可能なシングルローター機など過酷な条件でも飛行可能な産業用ドローンの開発を進めているProdrone。
戸谷俊介社長は「平時はデジタル田園都市国家構想、災害は国土強靱化基本計画、防衛は国家安全保障戦略に基づいて製造し、国の方針にそって事業を進めている」と話す。
ドローンを用いた医薬品の輸送、南海トラフ巨大地震を想定し三重県で要救助者の捜索などの実証実験、防衛省と共に「世界初」という水空合体ドローンによる機雷の掃海を行っている。今年5月にウクライナのグリーン産業復興支援の一環として地雷探知ドローン技術を提供するなど、国際協力も推進。2024年にはレベル3.5(特定の条件を満たせば立ち入り管理措置を行わずに目視外飛行が可能な)飛行で山間地から市街地へ配送する実証実験を実施した。
自社製の地上管制ステーション(GCS)は複数の機体からの映像や地図、機体状況を一つのPC上で管理できる。離陸場所と着陸場所を入れるとコースを自動で生成。「今後はさらにAI化し自然言語に対応できるものにしたい」(戸谷社長・以下同)とソフトウェアにも力を入れる。
同社が今取り組んでいるのが官民連携(後述)による「空飛ぶ軽トラSORA-MICHI」だ。地上では4輪のタイヤで道を走り、AGV、無人配送ロボットとして走行。「走れるところは陸を走った方がエネルギー効率はいいですから。山を登り、川を渡る時は空を飛ぶ。ゆくゆくは水空合体ドローンの技術を応用し着水・離陸にも対応したい。離島への血液製剤や臓器の輸送などにも可能性が広がる」
また、「Prodrone式PD6B-CAT3型」が第一種型式認証を申請中。認証基準が厳格な最大離陸重量が25キロを超える無人航空機としては日本初の申請と、注目が集まる。
■ドローン需要創出と供給力強化
愛知県を本拠点にした理由を問うと「安い・うまい・はやいからです」と戸谷社長は快活に表す。「東京に比べ家賃が安い。これは広い工場が必要なハードウェアメーカーにとって大事な点。また国内航空関係のエンジニアの7〜8割がこの地域に集まっており、技術力のある人材が豊富。産業が集積しているので即座にミートアップできるスピード感も魅力です」。昨年10月にオープンした国内最大級のインキュベーション施設「ステーションAi」にもオフィスを構える。「愛知県が力を入れているスタートアップの創出・育成を、ステーションAiが起爆剤になれば」と期待する。
また、愛知県が23年に立ち上げた「革新事業創造戦略」に基づく官民連携プロジェクト「あいちモビリティイノベーションプロジェクト『空と道がつながる愛知モデル2030』」は同社の提案によりスタートし、旗振り役も担う。「空飛ぶクルマが地上も走り、3次元の交通網を構築する。『空の道がつながる』ことが令和の殖産興業となる」と、先述の空飛ぶ軽トラで愛知県産の次世代モビリティを描く。「需要創出と、中部圏ならではの供給力強化も実現させていく。来年にはローンチモデルとしてまず物流から社会実装を目指す」とし、座組としてSkyDriveやテラ・ラボ、ジェイテクトや名古屋鉄道も連なる。ジェイテクトとは、ドローンの姿勢や速度などを制御するフライトコントローラーを共同開発した。自動車産業を支えてきた実績をエアモビリティへ展開する動きも生まれている。
「ドローンの技術成熟はまだこれから。中国をはじめとした海外の方が技術も品質も先んじており、スピード感も速い。日本がもっと失敗でき、挑戦できる環境になれば。災害時に安定してドローンを飛ばせるよう、通信面の強靭化も必要です」と課題はあるが、中部地方を中心に次世代モビリティの新しい風が起きている。
戸谷俊介代表取締役社長
(日本物流新聞2025年5月25日号掲載)