職場の熱中症対策、2025年6月1日から強化へ
- 投稿日時
- 2025/06/03 18:13
- 更新日時
- 2025/06/03 18:17

厚生労働省 担当者に聞く
職場の熱中症対策に関する労働安全衛生規則の一部を改正する省令が、4月15日に公布された。施行は6月1日。以降は職場の熱中症対策の強化が事業者に義務付けられ、適正な対策を行わなかった場合は6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性がある。熱中症患者の早期発見で重症化を防ぎ、高止まりする熱中症の死者数を抑える狙いがある。
事業者に課される義務は体制整備と手順作成、関係者への周知。(1)熱中症の自覚やおそれがある人を報告する体制を整備する(2)事業場ごとに緊急連絡網や緊急連絡先とその所在地を取りまとめる(3)作業からの離脱や体の冷却、医療機関への搬送など重篤化を防ぐ措置の手順を定める−−の3点を行ったうえで内容を関係者へ周知する必要がある。
対象は暑さ指数28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上か1日4時間を超える作業。厚労省によれば業種は問わないという。昨今の夏の暑さを考えれば多くの作業が該当することになるだろう。この夏から事業者は職場の対策を一段と進める必要がある。
Q:省令改正で熱中症が起きた際の体制整備が義務化されるが、熱中症を起こさないための対策が義務付けられるわけではない?
A:今回の改正は熱中症が生じてしまった際の重篤化を防ぐことを目的としたものです。予防に関しては従前から、労働安全衛生規則で屋内の暑熱な現場に冷房や空調設備の設置を求める規定があります。多量の発汗を伴う場所での作業は飲料水や塩飴の設置を求める条文も労働安全衛生規則に含まれています。
Q:体制整備が義務化されるに至った背景は。
A:職場における熱中症の死傷災害は、2017年は年500件程度でしたが、18年に1100件程度に急増しました。その後一度は減りましたが再び増加しています(24年は速報で1195件)。職場における熱中症の死亡災害の発生状況を分析すると、初動の遅れが主な要因でした。しかし労働安全衛生規則には熱中症が生じた際の対策の規定がないため省令改正に至りました。
Q:暑さ指数(WBGT)や気温が要件に含まれますが、事実上、これらの測定が現場で必須に?
A:具体的には定めていませんが測定するのが望ましいです。また気温は気象庁のHPでも確認できます。
Q:熱中症が起きた際のフローと周知方法は、事業者が適切な内容を判断する?
A:そうです。パンフレットで例は示していますが、事業所や規模で合理的な体制が違うため法令上具体的な内容までは定めていないところです。
Q:今後も熱中症対策は強化する?
A:今回の省令改正は予防でなく重篤化(の防止)に焦点を当てたもの。今後は予防に焦点を当てた検討会を立ち上げるなど取り組みを続けます。
(日本物流新聞2025年5月15日号掲載)