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大日金属工業、新・塗装工場が稼働スタート

投稿日時
2025/02/27 09:00
更新日時
2025/03/11 17:36

大日金属工業(株)

心間10mの旋盤が組立中だった

DAINICHIモノづくりのDNA、次世代へ

記者の背丈を超えてしまうほど大きな主軸台が、静かに組立を待っている。傍らでは心間10㍍、全長にして13㍍の大型旋盤がまさに組立作業の真っ最中で、2人の若手が長い摺動面、スライドするサドルに丹念なキサゲを施していた。壁を隔てた加工エリアでは全長15㍍のワークまで載せられる住友重機械工業の平面研削盤が、これまた巨大なベッドを慎重に削っている。隣の栗田実社長から声がかかった。「加工時間はざっと160時間。昼夜加工しても10日ほどかかりますね」

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新たな塗装工場。上に大型換気装置の配管が伸びている

どこへ目を向けてもスケールの大きさに驚く。それでいて、キサゲのような細やかな技術が自然に共存している。恒温室では円筒研削盤で削った長い主軸を前に、作業者がダイヤルゲージと真剣な顔でにらみ合っていた。同社のモノづくりはたぶん昔からずっとこうだったのだろう。在りし日の姿が目の前の光景に重なるように想像できた。

大日金属工業・岐阜事業所で行われるモノづくりはこのように、大と小(細部)とが混然一体だ。同社のつくる旋盤はボリュームゾーンの中・小型機を除けば基本的に受注生産で、顧客のオーダーで11台、個別の仕様に作り込んでいく。「本当に手作りのようなもので、大手さんのように数は作れませんね」と栗田社長は話す。だが大手も同社のようなモノづくりは難しいはずだ。

ほぼ横形旋盤に特化。大型機からNC機としても汎用機としても使える「DLシリーズ」など、機械自体も独自の色が強い。そもそも創業当初に開発したのが旋盤・ボール盤・フライス盤・型削り盤の機能を1台に集約した万能工作機だというから、もとより他にない機械を志向していたのだろう。だからこそ大手メーカーとは違う市場を開拓し、独自のポジションを築いた。

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主軸台が人の背丈より大きい。この機械のベッドが、ちょうど住友重機械工業の巨大な平面研削盤で加工されていた

自動車メーカーの投資控えを受け、工作機械マーケットは全体的に調子が上がらない。そこにあって同社の売上は底堅く、様々な産業から入れ替わり立ち替わり注文が来るため「バブルもないが、その代わり底もない」。そもそも船舶の舵棒(かじぼう)やプロペラシャフト、10㍍を超えるような特殊ねじは同社の大型旋盤でなければなかなか作れない。NC操作もマニュアル操作もできることから、多くの量産機メーカーが熾烈に競争する生産ライン『以外』の、メンテナンスや試作・検査部門で重宝される。

「量産物をやらないと決めた判断が、今となっては良かったと思います。増産? それも、考えていませんね」。受注生産方式ゆえ一度に作れる台数に限りがあり、大型機なら納期は1年近い。だからこそ顧客もどっしり構えて投資し、景気がどうあれ注文が途切れないようだ。

■本気の換気で働きやすく

同社は昨年、周辺機器も含め約4億円を投じて塗装工場を刷新した。21年の本社移転や19年の門形平面研削盤の導入など、過去15年ほど断続的に大型の投資を行っているが、いずれも増産が目的ではなく、品質や働きやすさの向上が狙い。塗装工場もしかりで、確かに敷地は1.5倍になりレイアウトの自由度は高まったが、それより重視したのは作業者の働きやすさだという。

およそ150坪の真新しい塗装工場の上部から、空に向かって巨大な換気装置の配管が伸びていた。同社ではベッドなどの鋳物を塗装する際に、錆止め塗料を吹き付けたあとパテで仕上げ材を塗り込み、サンドペーパーで研ぐ工程を踏む。ゴツゴツした鋳肌をつるりとした平面に整え商品価値を上げる重要な作業だが、研いだ粉が散らばることで労働環境が悪くなる課題があった。一般的なエアコンではすぐに目詰まりするため、乾燥もストーブや扇風機を持ち込んで行う必要があった。新工場では粉塵を換気装置で吸引し、外置きのエアコンで乾燥する。働きやすさはグンと高まる。

4億円は決して少なくない額だが、それを投じても労働環境を整えることには意義がある。「ウチの機械は一見してすぐに作れる機械ではないですから。23年と、やはり長くここで一緒にやらなければ難しい。そこに至るまでがなかなか大変ですよ。もちろん塗装もそうです」

製造畑出身の栗田社長は入社50余年迎える。自身も受け継いだ大日金属工業のモノづくりのバトンを、次の世代にもしっかり渡す。そんな意思が垣間見えた。

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栗田実社長



(日本物流新聞2025225日号掲載)