野村製作所、100余年磨いた剛の機械
- 投稿日時
- 2024/11/06 18:00
- 更新日時
- 2024/11/06 18:00
プレーナ形横中ぐりフライス盤「HBA−135P−R5」
「最近、機械の具合はどうですか」。野村製作所の松本博文取締役営業部長が中ぐり盤のユーザーにたずねると、よく返ってくる言葉があるという。「全然変わりない」。「まったく問題ない」。あるいは「思ってたよりよく削れる」「やっぱり、おたくの主軸は強いわ」
1913年創業の老舗メーカー。当初から工作機械製造を目的に設立され、数少ない(一社)日本工作機械工業会の永年会員(創立以来の会員)でもある。主力の横中ぐり盤は米騒動の起きた1918年に製造開始、「横中ぐり盤のメーカーとしてはおそらく(国内)最古ではないか」と松本氏は推測する。それから百余年を経た今もモノづくりの姿勢は変わらない。「永年にわたり愛用頂ける高剛性の工作機械を作る」。これに尽きる。
主軸をくり出し下穴を押し広げる中ぐり盤は主軸が命。同社も百余年の知見をここに注ぐ。主軸だけに約40工程を費やし、超仕上げで表面が鏡面になるまで磨く。剛性は機械を長く使うほど摩耗の少なさという差を生み、冒頭の「全然変わりない」につながる。
「近年は高速高送り加工が主流ですよね」と松本氏は切り出した。「でも大型機は違う。バリバリ削ってこそという考えで作り込んでいます」。使うと良さがわかる玄人好みの機械。同社の機械をそう評する向きもある。
■工作機械の技を食品機械製造へ
現在の主力機はプレーナ形横中ぐりフライス盤「HBA-135P-R5」だ。強みは剛性。主要部材は箱型フレーム構造の鋳造品で、理にかなったリブ配置で断面形状を大きくした。摺動面の幅も大きく、従来機と比べコラム断面積は1・5倍、曲げ剛性・ねじり剛性は2倍に。高剛性の主軸がここに搭載され、本来はビビりやすい主軸が高い位置にある状態の加工も安定的にこなす。主に造船や建機など重厚長大産業で活躍しリピート率も高い。
複数の中ぐり盤を所有する顧客から「いちばん削れる」と言われることもある。「嬉しい評価ですよね」松本氏も顔をほころばせた。「百年分のノウハウを1品1品、製造工程に落とし込んでいます。価格は少し高く感じるかもしれませんが、お客様には納得頂けている商品です」
頑丈で壊れない機械を作る。この設計思想を継ぐ自動開袋機がいま、食品業界を中心に注目されている。粉体入りの袋を切断し自動で中身を取り出す機械。同社の自動開袋機は「刺身をそぎ切るような独自の切り方」により切れ味に優れ、袋がささくれず異物が混じらない。綺麗に袋が切れるので中身も99.9%ロスなく取り出せる。そして何より頑丈で壊れない。「ちょっと頑丈すぎるんじゃないかと言われるほどです
取材中、キサゲの話にもなった。工作機械の摺動面に職人がキサゲを施すが、この技術を入社した際、皆が徹底して身に着けるのだという。「若いころは私も『腰が入っていない!』と怒られました」と営業畑一筋の松本氏は述懐する。「ウチの若手でキサゲができない人はほとんどいないはず」。同社のモノづくりはこうして受け継がれている。
松本博文取締役営業部長
1913年創業 大阪府岸和田市
主力は横中ぐり盤。面板着脱不要で中ぐりと面削加工を1台で行えるフェーシングセンタも手掛け、バルブやポンプの製造に重宝される。他に旋盤向けパワーチャックや粉体の入った袋を自動で切断し中身を取り出す自動開袋機も。自動開袋機は食品業界の人手不足を受け需要が好調で、多くの大手企業に採用されている。
(日本物流新聞2024年10月25日号掲載)