バイタル、自動水栓トップ専業メーカー
- 投稿日時
- 2024/11/28 09:00
- 更新日時
- 2024/11/28 09:00
後付け可能の自動水栓で衛生ニーズ掴む
新型肺炎流行下で需要が増加し、加速度的に普及した一つであるタッチレス水栓。航空機や新幹線、大手コンビニエンスストアに設置される自動水栓「デルマン」で圧倒的なシェアを持つバイタル(長野県佐久市)は、後付けで簡単に設置できる長寿命の乾電池式自動水栓で、学校や家庭でも市場を広げている。
大手住設メーカーではメイン商材の補助的な位置づけで製造されることが多い自動水栓に、バイタルは専業メーカーとして自社製品とOEMにより、自動水栓の品質向上や低コスト化に取り組んできた。
米・ボーイング787などの航空機では、国内唯一の航空機専用自動水栓メーカーとして全世界で25%以上、JR東日本の新幹線ではシェア率100%をもつ。35年前から自動水栓を開発、製造して培った設計力で、主要部品のセンサーや電磁弁から作り込む。「航空機や新幹線は、機体が揺れた際に乗客が自動水栓を掴んでも壊れない耐久性など要求される規格が多い。専業メーカーとして圧倒的な耐久性やコスト感覚など、水栓の設計に対する概念からして意気込みが全然違います。他の専業メーカーもありましたがほとんど淘汰されましたね」(土屋智宏代表取締役・以下同)。今年8月には航空宇宙分野の認証規格「JISQ9100」を取得し、さらなる深耕を狙う航空機分野の他、大手コンビニエンスストア三社でも標準品として累計9万8500台を納入しており、トップ専業メーカーとして業界を走る。
AC電源タイプだけでなく、後付けでき配線工事不要の乾電池式の自動水栓も開発。課題となる電池寿命について「単三アルカリ電池4本で一日百回使用しても10年保つ」という低消費電力の自動水栓を開発した。「稼働しない間にいかに電気を消耗しないか、電磁弁の性能改良やプログラムの試行錯誤で、業界トップクラスの電池寿命を達成しました。低消費電力にするとセンサーがノイズや湿気の影響を受けやすくなりますが、その制御ノウハウにも自信があります」。
他にも流量を調整したり、整流や泡沫、シャワータイプなど、洗面台の形状・大きさなど設置環境に合わせたラインナップも用意。医療現場や福祉施設でも多く導入されている。
■工事不要で簡単設置
感染症対策として非接触ニーズや手洗い意識が高まった近年。需要が顕著に増えたのは学校現場だと言う。「もともと学校の水飲み場や手洗い場向けに、水栓部の交換だけで自動水栓にできる製品を先に作っていました。水栓メーカーとして水栓がたくさん並ぶ風景に目が向いて(笑)。しかし学校では贅沢品的なイメージをもたれてなかなか売れなかった」が、感染症対策として、小中学校を中心に導入が進んだ。施工経験がない人でも数分で取り付けできるシンプルな施工性も受け入れられ、21年は前年比で6倍以上の増産となった。
住宅では玄関のそばに手洗い場を新たに設ける配置が流行し、OEM中心に売れ行きが増加。「出しっぱなしにしたり、水を溜めたりだとか自動水栓が向かない水回りシーンもある」としつつ、手洗い場の高需要化とタッチレス水栓がはまり、売上を伸ばした。
「当時の異常な高まりほどではありませんが、衛生ニーズの向上で自動水栓の販売は明らかにベースアップし、認知が広がりました。防災の観点から、停電しても稼働できる電池式の自動水栓を選ぶお客様も増えています」(板垣岳史営業部長)
また、培ってきたセンサーと電磁弁技術を応用し、大手住設メーカーが廃番にしたメンテナンス部品の製造、販売も行う。「男性用小便器の自動水栓のメンテナンスユニットを供給しています。経年変化でセンサーが故障しても陶器の部分はきれいでまだ使えたり、『数年後に全面改修する予定で、一つのトイレだけ入れ替えられない』というお客様に喜ばれます」と土屋代表取締役は笑顔で話す。
今後は「スーパーのバックヤードで、スタッフがきちんと手洗いできているかモニタリングする機能を自動水栓に付与するなど、衛生面をPRできるような製品を開発していきたい」と技術力を活かしたさらなる展開に意欲を示す。
土屋智宏代表取締役
(日本物流新聞11月25日号掲載)