アルプス物流、ラピュタロボの自動倉庫を千葉・成田に
- 投稿日時
- 2025/06/26 14:20
- 更新日時
- 2025/06/26 14:24

「処理能力と保管効率のバランス一番良い」
2023年8月に登場したラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」。同社・代表取締役CEOのモーハナラージャー・ガジャン氏が「売上100億円を目指す」と述べる肝入り製品であるが、わずか2年目で急速に受注数を伸ばしその言を現実のものとしつつある。勢いに乗る同システムを導入したアルプス物流・保管BU部長の野殿征範氏と経営企画部経営企画課課長の渡邊真広氏に導入の背景や決め手を聞いた。
電子部品の保管から運送、輸出入貨物取扱まで一貫して手掛けるアルプス物流が、ラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」を千葉県成田市の大栄倉庫に導入した。同倉庫は成田国際空港から車で約10分の距離に位置し、空港に隣接する同社・成田営業所を補完するため2024年6月に設置された。
「コロナ禍に一部の電子部品の供給不安が問題となった影響もあり、改めてサプライチェーンの安定化・強靭化が荷主様から求められている。成田営業所は輸出入貨物のストック&デリバリーを行う重要拠点。大栄倉庫はその外部倉庫として途切れのない安定した供給体制を求めている」(アルプス物流・保管BU部長の野殿征範氏)
そうした体制を構築するのに重要なのが「人」。精密部品を扱う性質上、製品の適切な取り扱いに関する教育には時間がかかる。そのため、人材を確保するだけでなく定着させる必要があるが、「いい人材に来てもらうことが難しいと感じる現場が増えてきた」(野殿氏)という。
そこで20年3月に西宮倉庫にスタッカークレーン式自動倉庫を導入。「働きやすい環境を整えることは喫緊の課題であったため、従業員の歩行距離の削減や複雑な作業の標準化に向く自動倉庫を入れた」(同社・経営企画部経営企画課課長の渡邊真広氏)。昨年3月に横浜営業所に中国HAI ROBOTICSの「HaiPickシステム」を、同6月には名古屋営業所に仏Exotecの「Skypodシステム」を入れるなど、拠点内の自動化を推し進めて来た。
「大栄倉庫にラピュタASRSを入れたのも同様で、自動倉庫にできることは自動倉庫に任せることで働く環境を整え、限りある人材を活かしていく狙いがある」(渡邊氏)
■一番バランスの良い製品
なぜラピュタASRSだったのか。
「大栄倉庫はある程度の物量を確実にデリバリーする必要があるため、処理能力と保管効率のバランスを重視していた。23年の国際物流総合展に初出展されたラピュタASRSを見て、それらのバランスが一番良さそうだと関心を持ったのがきっかけ」(野殿氏)
比較検討を進めていく中で、バランスの良さに加え「これまで悩んでいたことが全部クリアできそうだ」と思ったことが決め手となった。導入してきた自動倉庫は、棚設置にアンカーを打つ必要があったり、高い床精度が求められる製品も多かった。
「これまでのように自社所有の建物であれば対応できるが、拠点の中には賃借のものも多くある。そうした拠点でも自動化を進めていくには、アンカーレスかつ特殊な床施工が必要ないラピュタASRSのような製品の方が適していた」(野殿氏)
また、独自開発のWMS「ACCS(Alps Cargo Center System)」をそのまま使用できた点も評価する。
「当社はグローバルを含め全拠点共通で同一基盤(ACCS)を使う企業。何年もかけて効率よく運用できるシステムに改善してきた。このノウハウが当社の強みであるため、自動倉庫の機能や能力に合わせるのではなく、ACCSで実現したいことに合わせて自動倉庫を使えるようにしたかった。ラピュタロボティクスさんにはACCSに合わせて柔軟に対応いただけた」(野殿氏)
5月、大栄倉庫でラピュタASRSの稼働が始まった。まだ、中量棚に入っている製品の移載や運用上の問題点の洗い出しなどを行っている最中だが、「既に作業者の方からは良好な反応を得ている」(野殿氏)という。7月のフル稼働に向け取り組みが進む。
アルプス物流・保管BU部長の野殿征範氏(左)と経営企画部経営企画課課長の渡邊真広氏
■施設概要
アルプス物流・成田営業所 大栄倉庫
千葉県成田市吉岡1076-1
同社・成田営業所を補完する役割として2024年6月に設置。倉庫面積約1万6000㎡の平屋建てで、シーアールイーが開発した建物全体を借り受けている。成田国際空港から車で約10分の距離に位置し、関東一円への航空貨物の配送拠点に適する。導入したラピュタASRSは設置面積362㎡、5.5mの天井高に合わせ9階層からなる。4200ビンを2種類の荷姿に合わせ隙間が無いように間仕切ることで3万8000箱の保管に対応。それらを16台のAGVと入出庫口2つと出庫口2つで処理し、一日あたり約4000行の処理を目指す。
(日本物流新聞2025年6月25日号掲載)