工具とツーリングの重要性説く
MSTコーポレーション本社工場(奈良県生駒市)で6月6日、精密微細5軸加工セミナーが開催され、10社21人が参加した。同セミナーはMSTコーポレーションのほか、C&Gシステムズ、日進工具の共催で行われた。
基調講演は松岡技術研究所の代表取締役で、工学博士・機械技術士の松岡甫篁氏による「精密微細切削における5軸制御MCの有用性、最先端切削技術」。同氏は「JIMTOF2022が一つの起点となり5軸MCの時代へ入った」との認識を示した。「5軸MCは軸数が多い分、累積誤差が出やすく精密微細加工になかなか踏み込めなかった。しかしJIMTOF2022で2ミクロンのサンプルが登場してきたことで5軸の時代に本格的に突入した」という。
続けて「5軸MCでは工具の姿勢が傾けられるので外周刃による高い切削速度での削りができる。切削速度を高めると切りくずの幅が広く、薄くなる。切削による熱を切りくずが効率的に持ち去るので工具への熱影響を少なくできる」などその優位性を語った。
主催企業の一つ、MSTコーポレーションの開発営業グループ川原拓之マネージャーは開催目的について「EV、コネクタ、半導体等の市場で需要の変化が起こっている。特に、微細金型・部品の製造においてより高度な加工技術が求められる。参加者さまに精密微細加工になぜ5軸加工機が必要なのか、その最大のメリットを伝え、最新の加工技術やノウハウを提供することで、ユーザーさまの製品開発や製造プロセスの向上を支援したい」とした。
同社の高精度な「焼ばめホルダ スリムライン」は、熱膨膨張率が大きい「焼ばめ専用特殊鋼」を使用し強い把握力を実現。また工具突き出しを最短にしてビビリのない高剛性な加工が可能なことから精密微細加工用ツーリングでのシェアが高い。
また精密微細加工用「スリムライン BLACK UNO」もラインアップする。「世界で初めてサブミクロンの振れ精度(0・5ミクロン)を保証した微細加工用ホルダ」という。
例えばリフレクター金型の鏡面加工では、荒加工を超硬エンドミル、中仕上げをCBNエンドミル、仕上げ加工には切り込み量が数ミクロンと微小なPCDエンドミルが使用される。刃先の振れ精度は1刃あたりの切り込み量の1/3以下に抑える必要があり、1刃あたりの切り込み量が5ミクロンの場合、刃先の振れ精度は1・5ミクロン以下が要求される。
川原マネージャーは「BLACK UNOは、1刃の切込み量が数ミクロンの微細・精密加工を行うユーザーから、加工精度の向上に加え、直径0・5?_以下の微細加工用のドリルやPCDエンドミルの工具寿命の延長が実現できたと評価していただいている」とした。
(2023年6月25日号掲載)